第57回
2008年1月4日

鈴鹿中央総合病院におけるAiの実態

鈴鹿中央総合病院診療部長(病理・臨床検査専門医)
村田哲也

鈴鹿中央総合病院は三重県鈴鹿市にあり,JA三重厚生連によって経営されている460 床の地域の中核病院である。市内に公立病院がないため,実質的に市民病院的な役割を担っている。年間の救急外来利用者はほぼ1万人で,来院時死亡状態(CPAOA)も例年50例程度ある。当院では平成3年頃からCPAOA症例の死後CT検査(PMCT)を施行しており,その実態を報告したい。なお,当院ではMRは1台しかなく,それも予約で満杯状態であるため死後のMRは行われていない。

当院におけるPMCTはCPAOA症例の剖検前の検索として行われ,頭蓋内出血の有無を確認することを主眼としている。PMCT導入当初は剖検数が多く,年間で100例を超える剖検数があったため,少しでも楽をさせて貰おうという病理医の希望があり,PMCTで頭蓋内の病変がなければ,開頭を行わない剖検をするようにしていた。導入にあたっては,放射線科,特に診療放射線技師諸氏の抵抗があった。曰く,死後症例では保険点数にならない,曰く,生きている患者さんと死体を混同して検査することに抵抗があるなどの理由である。しかしながら,頭部だけでもPMCTを行うことで,病理解剖の弱点である脳底部や副鼻腔病変の情報が得られることや,場合によっては頭蓋内出血がPMCTで判明し,病理解剖での開頭が回避できる症例もあることなどを説明し,協力して頂けることになった。

現在では毎年平均して25~30例のPMCTが行われている。当院ではCPAOA症例は全例警察に照会し,検視を受けてから必要に応じてPMCTが行われるようになっている。PMCT で頭蓋内出血が証明できる症例はあまり多くなく,最近では剖検前に頭部PMCTを行い,所見がなければ中枢神経性の死亡ではないと考え,やはり開頭抜きの剖検を行うようにしている。神経病理の専門医からするととんでもない話かも知れないが,業務多忙の市中病院における業務改善の一環としてご理解いただければ幸いである。当院でもPMCTはかなり普遍的に行われるようになってきたが,まだまだ問題点も残されている。それは,生きた患者さんの検査の間に死者のCT検査を行うことに対する嫌悪感であり,またハード面では日勤時間帯で検査日程が詰まっているときに臨時で死者のCT検査を行うことの不満感である。後者はともかく,前者は数を重ねていけば徐々に解決されるであろうと楽観している。一例でも多くの「死因不明」をなくすために,これからも努力していきたい。