第175回
2026年06月15日

Aiと恐竜の交差点―Aiが広げる生命科学の地平―

福井県立大学 看護福祉学部/恐竜学部
法木 左近

 昨年より、私は看護福祉学部に加え、恐竜学部を兼任することとなった。オートプシーイメージング(Ai)学会の会員の皆様の中には、「なぜ病理学やAiに携わる者が恐竜学部に所属するのか」と不思議に思われる方もおられるだろう。しかし、画像診断技術という共通基盤の上に立つと、両者は意外なほど近い関係にある。

 恐竜学部を兼任することとなった背景には、以前、恐竜研究者と共同で恐竜化石のCT撮影に携わった経験がある。恐竜化石は極めて貴重であり、破壊的な観察が困難である。そのため、内部構造を非侵襲的に可視化するCTは、現在の恐竜研究に欠かせない手法となっている1)。骨の内部構造や成長の痕跡、さらには岩石中に埋没した化石の状態まで、画像データから多くの情報を得ることができる。この「対象を傷つけることなく内部を観察する」という考え方は、まさにAiの理念と共通している。

 私が所属する恐竜学部でも、現生恐竜である鳥類を対象とした研究が行われており、鳥類の骨格や呼吸器系の解析にCTが活用されている。このような研究は、生物の進化や適応を理解するうえで重要であるだけでなく、画像診断技術そのものの新たな応用可能性を示しているとも言える。

 オートプシーイメージングは医学のためだけの技術ではなく、考古学、文化財科学、獣医学、そして恐竜学など、多様な学問分野と接点を持っていると言える。異なる分野の研究者が同じ画像を前に議論することで、新たな視点や技術革新が生まれる可能性がある。実際、画像解析や三次元再構築、人工知能(AI)を用いた画像認識などは、分野を超えて共有できる知見となっている。

 オートプシーイメージング学会の強みは、多職種・多分野の研究者が集い、一つの画像を共有しながら議論できる点にある。今後は、自然史科学や獣医学などとの交流も視野に入れ、分野の垣根を越えた新しい画像科学の可能性を探求していくことも本学会の重要な使命となるだろう。

 1)  河部壮一郎. デジタル時代の恐竜学. 集英社インターナショナル, 2024.