ガイドラインのすすめ
前回、私が1000字提言を執筆したのは第66回(2008年11月1日付)でした。第4回Ai学会夏期症例検討会で提示した事例の概要を紹介しています。いま読み返すと、2026年現在では当たり前となった所見について、よくも1時間にわたり討論したものだと思います。また当時の宮崎県のAi事情にも触れていますが、現在では県内各地でAiが撮影され、読影に難渋する事例や法医解剖に至る事例が私のもとに集まっています。
前回の執筆から18年が経過し、撮影技術・読影技術は大きく進歩しました。しかし、一例一例に真摯に向き合うほど、新たな課題が浮かび上がってきます。そうした課題に直面した際に有用なのがガイドライン(以下、GL)です。画像所見の解釈に迷ったとき、GLは(刊行時点での)適切な方向へと導いてくれます。これが本来の使い方でしょうが、難解な症例に限らず、日常診療における知識の整理や再確認にも有用です。
これらに加えて、私が考えるGLの「第3の使い方」を紹介します。GLにはエビデンスレベルや推奨グレードが示されており、すなわち「分かっていること」が整理されています。裏を返せば、「分かっていないこと」、すなわち今後の研究課題の宝庫とも言えます。
例えば「死後画像読影ガイドライン2025年版」における、「死後CTで死因となるくも膜下出血を指摘可能か?」というクリニカルクエスチョン(以下、CQ)を考えてみます。感覚的には「致死的なくも膜下出血であれば死後CTで指摘可能であろう」と思われがちです。しかし本CQの死因判定に関する推奨グレードは「C2:他の状態との鑑別を要するため慎重な評価が必要」とされています。この背景には、偽性くも膜下出血の問題や、内因性・外因性の鑑別の困難さがあります。本CQの推奨グレードを高めるためには、これらを高精度に識別する方法を示す必要があります。エビデンスレベルの低い症例報告であっても積み重ねる意義は大きいでしょう。今後の研究によっては、推奨グレードの変動や、新たなCQの創出も期待されます。
最後に、私の所属する宮崎大学のスローガンは「世界を視野に地域から始めよう」です。地域における一例一例の死因究明に向き合いながら、GLを紐解き、世界を見据えた研究へとつなげていきたいと考えています。
