オートプシー・イメージング(Ai)検査ガイドライン改訂第3版について
私は、縁あって2022年度より、公益社団法人日本診療放射線技師会オートプシー・イメージング(Ai)分科会の委員として活動する機会をいただきました。オートプシー・イメージング(Ai)分科会は、2008年に前身である社団法人日本放射線技師会Ai(Autopsy imaging)活用検討委員会として発足し、Aiの普及と質の向上を目指して、実態調査や認定技師事業、教育研修、ガイドライン策定等、幅広い取り組みを継続してまいりました。
ガイドラインは2010年に初版、2017年に第2版が発行されましたが、技術革新や運用環境の変化により、現場の実情との乖離が生じていました。特にCTの撮像技術の進歩、MRIや超音波の活用、3D画像処理の普及、データ保存・管理の多様化など、Aiを取り巻く環境は大きく変化しています。こうした背景を踏まえ、現場の声を反映した実践的なガイドラインへの改訂が求められていました。
今回のガイドライン改訂にあたっては、第39回日本診療放射線技師学術大会でのシンポジウム(2023年9月)やガイドライン改訂に向けた意見交換会(2024年2月)等を通じて、会員の皆様と広く意見を交わしながら、改訂作業を進めてまいりました。改訂の主なポイントは、「CT・MRI撮像ガイドラインの更新」に加え、「小児Ai」・「超音波検査の導入」・「3D画像処理技術の活用」に関する新たな指針の追加です。これにより、多様な症例や施設環境に対応できる内容となりました。
島根大学医学部附属病院では2011年にご遺体専用CT装置を備えたAiセンターが稼働し、14年が経過しました。導入当初は前例のない試みに不安もありましたが、ガイドライン初版の存在が大きな支えとなり、Aiの意義と方向性を明確に示してくれました。現在では日常的にAiを実施し、死因究明や家族への説明、医療安全の向上に貢献しています。
かつては一部の先進的な施設に限られていたAiも、現在では全国的に普及が進み、死因究明の新たな基盤として社会的にも広く認識されるようになってきました。今回のAiガイドライン改訂第3版が、これからAiに取り組む方々や、Ai導入に不安を抱える現場の皆様にとって一助となり、Aiの標準化と質の向上、そして全国的な水準の共有に寄与することを心より願っています。
