第142回
2019年7月10日

「日本オートプシー・イメージング(Ai)技術研究会」への期待

日本オートプシー・イメージング(Ai)技術研究会
発起人代表 阿部一之先生

診療放射線技師としてオートプシー・イメージング学会第10回大会長を経験して、第16回小林智哉大会長が開催時には診療放射線技師の演題数が大幅に増加してきた。しかしながらAi学会学術総会やAi症例報告会、日本診療放射線技師会Ai分科会企画など会場で疑問を持ちながら次の研究に取り組めない悩みを多く聞いてきた。継続的な研究の受け皿作りを求められ、このような悩みに対応できるサポート体制の重要性を痛感してきた1)。このような背景に鑑み、日本全国から熱意のある23人の発起人とともに2019年5月1日、「日本オートプシー・イメージング(Ai)技術研究会」を立ち上げた。

「本研究会は日本オートプシー・イメージング(Ai)技術研究会(The Japanese Society of Autopsy imaging and Technology (略称 JSAIT)と呼称し、診療放射線技師をはじめ、関連する医療職種やAi撮像技術開発に従事する研究者等により構成され、学生等の参加も可能とするものであり、年1回、学術集会を開催して最新の知見とAi撮像技術等の最適化と情報共有を図ることにより、会員相互の学術交流と研鑚を目指す。さらに国際的な学術団体と連携を図ることで「IAFR (International Association of Forensic radiographer ) in Japan」として国際的な活動を通じて社会貢献に努める」(設立趣意書一部抜粋)と明記している2)

<連携強化に向けて>

Ai学会との強固な連携は勿論のこと、それぞれの地域と密着して研究会活動を推進している茨城Ai研究会、群馬Ai研究会、栃木Ai研究会、北陸Ai研究会、九州Ai研究会、Ai認定診療放射線技師制度を構築している日本診療放射線技師会と緊密な関係を構築して、さまざまな共同研究テーマを系統的に推進できる研究会を目指している。

<共同研究の推進>

国内のみならず海外との交流を視野に入れ13の共同研究のテーマを設定した。1)「小児 X 線 CT 撮影条件の適正化」、2)「X 線 CT 撮影時のアーチファクト対策」、3)「Dual (Multi) Energy CT の活用」、4)「MRI 検査の活用と撮像条件の最適化」、5)「警察依頼における犯罪事例への CT,MRI 撮像技術と3D 画像処理技術の適正化」、6)「腐敗症例に対する CT,MRI 撮像法の適正化」、7)「個人認証における X 線撮影、X 線 CT 撮影法と3D 画像処理技術の活用」、8)「大規模災害時(DVI:Disaster Victim Identification,災害被害者身元確認作業)の活用」、9)「Ai における読影補助に対するガイドライン化」、10)「Ai 専門技師制度構築のあり方と運用について」、11)「死後の個人情報と画像データの取扱いについて」、12)「IAFR(The International Association of Forensic Radiographers)との海外交流プロジェクト」、13)「Ai 読影補助セミナーと e-ラーニング教材の開発について」。新進気鋭の優秀な共同研究班員とともに研究データを積み上げ然るべき研究成果を実らせることを目指している。

<海外の学術団体との連携>

2008年から韓国、台湾、タイ、AACRT(Asia-Australasia Conference of Radiological Technologists) での研究発表3)を皮切りに,2016ISRRT(International Society of Radiographers and Radiological Technologists)ではBest Poster Abstract Award を受賞4)、IAFR (International Association of Forensic Radiographers)でのネット講義5)で日本のAiの現状とAi認定診療放射線技師制度を紹介して諸外国と積極的に学術交流に取り組んでおり、本研究会を通じて今後の活躍が期待されるところである。

<年1回の研究会の開催>

2019年8月4日、国立がん研究センターで設立年度であり、教育講演、招待講演に続き共同研究テーマに関する討論会の内容で第1回研究会を開催する。開催案内が遅れたが関係学会、関係団体に広報活動をして多くの出席者の参加を呼びかけているところである。Ai学会員の皆様も年1回の研究会に出席して叱咤激励を頂ければ幸いである。

<今後の展開>

診療放射線技師がAiで貢献するにはAi学会、地域のAi研究会や学術団体等と連携を図り、共同研究を通じてAiの課題を克服し、Ai専門技師制度を関係学会・団体と協力して確立することが求められる。新たな視点で「日本オートプシー・イメージング(Ai)技術研究会」を設立したことで、日夜、Aiで頑張っている日本の診療放射線技師に光輝くことを期待するとともに、日本の優れた死因究明制度であるAiを世界に情報を発信して、IAFRなどの学術団体と連携を図りながら更なる国際交流を深めることが期待されている。


参考文献
  1. 阿部一之:Aiで新たな展開を目指す診療放射線技師 Rad Fan Vol.17 No.3,2019
  2. 日本オートプシー・イメージング(Ai)技術研究会設立趣意書:
    https://japan-ai-technology.amebaownd.com/pages/3040000/page_201907031233
  3. kazuyuki Abe: The current status of postmortem imaging in Japan. Autopsy imaging(Ai) and the radiological technologist certification system,The19th Asia Australasia conference of Radiological Technologists(AACRT2013),(Chiang Mai, Thailand)
  4. Satoka Someya, Tomoya Kobayashi, Seiji Shiotani et al: Effectiveness of Radiological Technologists’ Support in Prompt Interpretation of Postmortem Images. ISRRT2016(Seoul, Korea)
  5. Tomoya Kobayashi:The role of Radiological Technologists in postmortem imaging examinations in Japan. http://www.afr.org.uk/events/past-events/view/73