第141回
2019年6月14日

再提言:コンパクトにまとまってはいけないAiの今後

三重大学医学部附属病院
医療安全管理部 Aiセンター チーム医療推進センター
兼児 敏浩 先生

2009年2月、三重大学と三重県で、海堂尊氏を講師として、「オートプシーイメージングは絶対必要だ」と題した市民公開講座を開催した。折しも映画「チームバチスタの栄光」が公開される直前で、県外からも聴講者が来るほどの盛会であった。そして、当時は、周りの多くの人にとって、「エーアイ」は「Ai」であり「AI(人工知能)」ではなかった。

2017年2月の第124回1000字提言の拙文で、以下のような懸念を表した。「Aiの有用性と必要性は幅広く認知され、医療事故調査制度においてもAiは死因究明に有用なツールとして明確に位置付けられています。Aiはこのように一部から全体、スタディからプラクティスへと発展してきましたが、それと同時にある種の物珍しさ感は薄れてきつつあります。これは、Aiに日常から関わっていない人にとっては、Aiに興味を持つ機会が少なくなり、Aiは放射線診断分門の一業務に過ぎないと認識されてしまう可能性があることを意味します。Aiはまだまだ、完成された領域ではないので、学際的に多くの人が関わって、発展していくべきところを小さくコンパクトにまとまってしまうのではという危惧があるのです。」

2018年9月北大兵頭先生は第136回1000字提言において、数年前までは日本医学放射線学会におけるAiのセッションは大盛況であったが、最近は演題が激減し、独立したセッションとして成立しなくなったと嘆いておられる。そういえば、2011年に予定されていた日本医学会総会は、東日本大震災のため実開催は中止となったが、小生にはシンポジストとして、確か「Aiと医療安全」という演題が与えられていた。

Aiを推進する立場の人間としては、嘆かわしい話ではあるが、この10年間の現状としては、Aiは一定の地位と役割を得ながらも小生が危惧した「コンパクトにまとまってきている」状況である可能性もある。Aiの有用性・必要性についての啓発活動、Ai講習会等の実務的活動、Aiをよりオフィシャルにするための立法府や行政への働きかけ、これら、われわれが行ってきた活動に何かを加えて、Aiを今の地位に満足することなく、学際的に発展させていく責務がわれわれ学会員にはあると考える。

Ai学会誌の創刊、医療安全の視点からはdiagnostic error との絡み、あるいは、グリーフケアに関連させて、わが国最大の職能団体である看護師への働きかけ、等々アイデアは多数ある。8月の熊本では火の国に負けない熱い思いをもってAiとAi学会の近未来について議論できれば望外である。