第139回
2019年5月8日

Aiに対する病理医の思い

JCOH横浜中央病院 病理診断科 桂 義久 先生

先月Ai症例検討会が無事開催されました。70名近い参加者がいて、第一回の症例検討会(参加者10名ほど)を経験しているものとして大きな会になってきたなと感じていますが、これからが不安にも感じます

当初は一つの症例に対し放射線を専門にする先生を中心に法医学、病理学、救命救急の先生方が各々の専門分野での考えや専門外の素朴な疑問を言い合い、お互い足りない知識を補いながら検討していました

用意されたシャウカステン前に15人位が集まり自由に討論していたものです

最近はパソコンで提示し、画像の読影が中心になっていることは仕方ありませんが、一症例に30分くらい時間をかけて様々な分野の先生に意見を聞くスタンスは崩したくない気がします

それと同時に、病理医である私にとっては解剖所見、組織所見がかなり気になる症例の提示も多くなってきています

以前、自分の病院でAiおよび病理解剖を施行した症例を10例検討したことがありました

入院期間がある程度あり、生前画像や血液生化学的なデータも揃っている症例では臨床診断、Ai所見と病理解剖所見に大きな差はありませんでした

入院期間が短かったり予想外の転帰をたどった症例では十分な検査もできていないからか臨床診断とAi所見に差があり、また数例ではAi所見と病理組織診断にも大きな差があり死因がかなり変わる症例もありました

病理学を主としているものにとってAiはかなり有用なものと信じていますが解剖の肉眼所見、組織所見もしっかり検討しAiに活かしてほしいと感じています

現状ではAi症例をすべて解剖に回すのはいくつかの施設を除くと無理な話です。

しかし、Aiに関わる先生方の努力によりAiで十分解決できる症例が大半を占めていますので、解剖が必要な症例は限られると思います

病理解剖や行政解剖、司法解剖を行ったAi症例を検討し直すと新たな発見が見つかります

皆様の施設でAiをとれた症例でもし病理解剖が出来る体制でしたら是非、解剖の依頼もしていただきたいと感じています

Ai所見に解剖所見を加え、新たな発見をもって症例検討会やAi学会で呈示していただきたいです

Ai学会はまだまだ若い未熟な学会です

その代わり多岐にわたる分野の先生方の集まりでもあります

専門外の先生の意見を真摯に受けとめることの出来る学会がAi学会です

Aiをとおして日本の死因解明の向上に貢献することがAi学会の使命でもあると思います