第138回
2019年2月15日

死亡時画像診断(Ai)と私、
そしてその検査費用に関する個人的見解

筑波メディカルセンター病院 放射線技術科 田代 和也 先生

私がAiについて興味を持つようになったのは、大学4年の時の父の死がきっかけだった。彼は誰もいない自宅で血を吐いて死亡し、数日後に発見された。彼の死因は消化管出血疑いとなったが、死因の判断材料は検視による情報のみで、詳細は今も不明のままである。当時の父の最期の姿は今でも鮮明に覚えている。

月日が流れて、私は筑波メディカルセンター病院に就職し、環境や同僚に恵まれ、2016年には茨城Ai研究会の世話人兼事務局に就任させていただいた。

茨城Ai研究会では2018年夏に茨城県内のAi実施状況を把握すべく、CTを保有する218施設を対象にアンケート調査を行った 1)。 回答率は99.5%(217/218)。そのうち、Aiを実施している施設は33.6%(73/217)であった。

このアンケート結果のうち、私が特に気になったことは、Aiの検査費用についてであった。複数回答可としたとき、全73施設のうち52.1%で遺族負担、41.1%でAi実施施設負担、26.0%で生前画像として保険請求、43.8%で依頼元(警察)負担としていた。そして、その請求金額は9000円~65000円とかなりのばらつきがあった。

死は誰もが必ず迎え、Aiは人が受けられる最後の画像検査であり、公平に実施されるべきだと思う。少なくともAi実施施設によって負担者やその金額に差があってはならないと感じている。そして、それを実現するためには、死因究明制度を早急に立法化する必要があると思う。各シチュエーション(CPAOAか院内死亡か警察依頼かなど)でのAi実施時に誰がいくら負担するのか、明確な決まりを作るべきである。推奨はあるものの 2)、今回を含んだこれまでのアンケート結果などを踏まえて、議論を重ね、着実に前に進めていかなくてはならないと思う。

CTやMRIの保有数が世界一の我が国はインフラの整備が完了している。

また、死因のスクリーニング検査としてAiを用いているため、症例数も豊富にある。日本という国がもっと死因究明に投資をし、Aiを撮るのが当たり前の世の中になって欲しい。そして、Ai実施施設と法医学教室が連携を図りながら、共に死者の死の真実を追求することで、画像所見と解剖所見からさらなるエビデンスを構築し、遺族や行政統計に結果がしっかりと伝えられる未来を強く願っている。

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茨城Ai研究会として調査したアンケート内容は2016年の新潟県での調査 3)を参考に設問を設定しました。アンケートの使用および改変を快諾くださった新潟大学大学院保健学研究科の髙橋直也先生に感謝いたします。また、茨城県内の施設の多くの方にご協力いただいたことで、99.5%という非常に高い回答率を得ることができました。茨城県内の関係の方々に深謝いたします。


参考文献
  1. 田代和也・他:アンケート結果からみる茨城県におけるAiの現状と展望. INNERVISION, 33, 51~55, 2018.
  2. 日本診療放射線技師会:Ai(Autopsy imaging:死亡時画像診断)における診療放射線技師の役割-Ai検査ガイドライン-. 8, 2017
  3. 髙橋直也・他:新潟県内におけるオートプシー・イメージング(Ai)の施行状況, および文献的考察. INNERVISION, 32, 30~33, 2017.