第132回
2018年6月1日

-Ai撮影に携わっている技師の思い-

福井大学先端イメージング教育研究・Aiセンター
福井大学医学部附属病院 放射線部
江端 清和先生

私が当院に就職したのは3年ほど前だがAiに関わりだしてからはもう10年以上経つ。初めてご遺体を撮影したのは当時勤務していた市中の小病院内で亡くなられた入院患者さんのCT撮影であった。夜勤の看護婦が定時巡回時には入眠中であったが、朝の定時巡回時にはCPAであった例だ。そのとき初めてご遺体のCTを撮影した。その後は「死因究明等推進に関する法律」や「警察等が取り扱う死体の死因または身元の調査等に関する法律」の交付、施行もあり多くのAi撮影経験をしてきた。

福井大学Aiセンターには御遺体専用のCTとMRが設置されている。ここで撮影されるAiは実に様々である。院内ご遺体だけでなく腐敗、損壊、焼損の院外からのご遺体も運ばれてくる。最近は超音波検査がCTと補完的役割を果たせるのではないかと考え法医学教室との共同研究も重ねている。

院外からの搬入遺体・院内死ご遺体の他にも各診療科・医局や他大学、研究機関などとも当センターのCT、MRIは利用されており、Ai専用装置としての当センターでの稼働率はそれほど悪い方ではないと思う。ただ、やはり触れないわけにはいかないのが撮影にかかる費用の問題だ。現在は病院(大学)負担、患者負担、警察等司法機関の負担と様々なパターンに分けられるが私の考えは著名な先生のお言葉にもあるように「死後画像は本来最後に提供される医療であるべきである」という言葉に強く同意する。せめて院内死(CPAOAを含む)は保険診療で賄うべきではないのかと感じている。

「医療保険は生者への医療行為に対して行う」との考えからか看護師の行うエンゼルケア(死後処置)にも診療保険点数は認められていない(点数表に項目がない)。

CTにしてもMRIにしても装置は購入後の日常点検や保守・性能維持・更新に際しても費用はかかる。法律を作ってまでAiの有効活用を認めているなら、その撮影と診断に対する対価を正当なものとして本来は保険点数として支払うべきであろう。

院内死は死後処置が行われた後に全例Aiを撮影し霊安室、ご自宅へお帰りになるのが近い将来に当然のことになるべきであると私は考えている。撮影料・診断料を保険点数に倣って算定することは医療側としては理解できるが患者さんは通常保険点数の20〜30%の金額しか通常窓口で払っていないのだから請求するとなると医療費支払感覚的に高額と感じられてしまう可能性がある。院内死・CPA後のAiが保険診療上認められていない以上、死後処置同様に御遺族から支払いを受けるしか現状方法がない。そのためにもまず、入院時の同意書を死亡退院時のAi撮影に関する同意書を兼ねるものとしてはいかがだろうか。会計精算時も理解を得られやすいような5,000〜10,000円程度の料金設定とするのも一案ではないか。請求時には撮影料と診断料を分けての請求とし、診断を希望するのかどうかの選択を支払者に委ねるのもいいかもしれない。ただし会計支払いを受けた場合にAi読影診断レポートを開示すべきかどうかはまだ私も思慮が足りていない。

全くの私見であるので反論・ご意見等あると思うが日々撮影に携わっているものとして1)より多くの御遺体にAiを施行すべきである。2)収入は少なくても無いよりはマシ。この二点に尽きる気がする。

多くの方と私見についてご議論できれば幸いである。