第133回
2018年6月7日

Ai学会をより良い学会に --ハラスメント禁止を定款に--

京都法医歯科解析センター(FODOC)
藤本秀子先生

先月、第7回ISFRI(国際法医放射線学会)が、オーストラリアのメルボルンで開催されました。私は昨年のオーデンセ大会後のDepartment of Forensic Medicine、University of Copenhagen (コペンハーゲン大学法医部門)訪問に続き、今年もVIFM(ビクトリア州法医学研究所)を訪問しました。各施設の規模や仕組みに違いはありますが、いずれも法歯学者と法人類学者、あるいは法歯学者と法律家など、多職種間での交流があり、時には一堂に会して、仕事を行うシステムになっています。そのため、職種間のつながりが強く、自由に議論がなされている印象を受けました。また、女性のスタッフが多く、女性が働きやすい環境であると感じました。このような環境が、日本でも実現されれば、と思わずにはいられませんでした。

昨今日本では、公的機関、企業や組織におけるパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、そして大学では、アカデミックハラスメントが大きな問題になっています。残念ですが、後を絶ちません。日本では長い間、被害者に我慢を強いることで、仕事が行われてきた側面があります。にもかかわらず、加害者側には「我々も我慢をしてきた、だからあなたも我慢をするべきだ」という意識すら感じられます。今この時も、ハラスメントの問題を解決するために、体制を改善すべく、被害者は多くのエネルギーと時間を費やしているのが現状です。

Ai学会は多職種の集まりであり、コペンハーゲン大学やVIFMに似た、横のつながりのある貴重な学会です。発足当時から、自由闊達な議論のできる場を作ることも謳われてきました。職種間交流だけでなく、多様な学術研究もおこなわれる風通しの良い風土を持つ学会であると、私は感じています。

Ai学会定款第2章第4条には、「本会は、わが国におけるオートプシー・イメージングの普及および学術研究の発展を図り、もって国民の医療と福祉に寄与することを目的とする。」と明記されています。また、Ai学会は事件や事故の事案など、倫理観を問われる案件に関わる会員が多く存在しており、社会への影響力の大きい学会です。

このような学会では、学会員が研究者としての倫理観をもつこと、そして、組織がハラスメントを許さない姿勢を示すことが求められるでしょう。ところが、本学会定款には、ハラスメントの禁止を促す文言は明記されていません。

会員としての矜持を持ち、各医学系学会の模範を示していくためにも、学会定款に、会員として守るべき項目を定めては如何でしょうか。