第13回
2004年9月01日

小児科不審死症例におけるオートプシー・イメージングの有用性

小宅小児科医院(前筑波メディカルセンター病院小児科)
小宅 雄二

小児救急医療の現場では、小児の突然死に遭遇することは比較的まれである。このため、いざそうした場面に直面すると、とまどう臨床医も多いと思われる。さらにその上、日本においては剖検率が非常に低いため、剖検を必須とするSIDS(乳幼児突然死症候群)などの診断が正確性を欠いているということが、社会的問題として提起されている。剖検がとれない場合、死因の診断に苦慮することが多い。

先日新聞にも掲載されていたが、虐待によって脳死や重い障害になった子どもが医療機関を受診したとき、医師などの医療関係者に虐待の事実を話す親は2割弱という。つまり親の8割は医師にうそをついていることになる。

(2004年8月1日 読売新聞 ◆親の8割、病院で認めず?_小児科学会調査) 不自然な現病歴、外表の傷などがあれば虐待を疑い、司法解剖の手続きにもっていけるが、実際は外因死とわからない場合も多い。欧米の医療システムのように、死因の説明がつかない乳幼児死亡は親の承諾の有無を問わず剖検を行うことができるというシステムとは違い、日本では事件性がないと判断された場合、親の承諾が得られなければ剖検はできない。実際、剖検の説明をすると小児では拒絶されることがほとんどである。上記のような事実が明らかになり、虐待とわからず剖検できずにSIDS疑いや肺炎などという臨床診断名でそのままになってしまった症例も少なからずあると推測される。問題なのは、現在の医療体制では、こうした問題を根本的に解決することが非常に困難だという点にある。

今後社会構造の変化によりますます虐待の頻度が増えることも予想されている。また問題なのは後から虐待だったと判明した場合、死亡診断書を書いた医師の責任も問われる可能性がある(次子も虐待された場合など後から判明することもありうる)。剖検ができない場合、リスクマネージメントの面からも、乳幼児死亡例では最低でもAi(PMCT)で死因のスクリーニングをすることは必須なのである。

救急の現場で働いていたものとして、外表所見だけによる死因判定は非常に不安であり、死因の確定は、Aiを加えることでより正確になることは疑いのないところである。ただしAiが剖検にとってかわるということはあり得ず、筑波メディカルセンター病院で行った検討では、小児突然死ではAi(PMCT)のみで死因を確定するのは困難であった症例も存在した。  しかし上述したように、現在の医療システムでは剖検が拒否されてしまえば客観的な医学情報取得が全くできないという現状に対し、現在持ちうる中で工夫すれば、劇的に改善出来る可能性がある。それが、小児異常死においてオートプシーイメージング(Autopsy imaging Ai)を適用するという試みである。

Aiと剖検は共存してお互いを補うことで医療の質がより向上する。今後剖検率の向上のためにAiが発展してもらうことを切に望んでいる。