第12回
2004年8月02日

病理と放射線科の接点とは

重粒子医科学センター病院
神立 進

疾患の解明は、病理学がずっと担ってきました。放射線科の歴史は、病理よりかなり浅いです。当初は、文字通り、X線の通り抜ける影を見ているのにすぎなかった放射線画像診断ですが、CTが出現することにより、医療に革命をもたらしました。解像力の向上は未だに続いており、さらに三次元処理なども加わり、人体、疾患の構造が精細にわかるようになってきています。MRIも、電磁波を使うという意味で、一種の放射線機器であり、同様に未だに、進歩を続けています。

しかしながら、結局のところ、影を見ているにすぎない、というのが放射線診断の実態です。X線にしても、磁気共鳴にしても・・・。最終診断は、病理学が担当するしかないのです。しかし、病理診断も万全ではなく、人体のすべての部分を組織切片にするわけにはいかないという大きな制限があります。私は、放射線医学にしても、病理にしても、片方だけで診断をつけるわけにはいかないと考えています。最近そうなったわけではなく、たぶん、昔は、診断学が、おおざっぱだったのでしょう。診断精度の向上に必要なのは、相互のコミュニケーションだと考えています。

インターネットが普及し、メールで簡単に情報がやりとりされる時代になりましたが、コミュニケーションが容易になったとは思えません。情報はあふれかえり、何を捨てるかが重要な時代になってしまいました。あふれかえった情報の整理に、悪戦苦闘し、情報に振り回され、コミュニケーション環境はむしろ悪化しているのかもしれません。昔は聞こえなかった言葉が聞けるようになったかわりに、意味のない言葉も増えてしまったのです。

病理と放射線科の接点として生まれたオートプシーイメージングですが、実際に相互のコミュニケーションの改善に役立てるのは、始まったばかりの課題のように思えます。結局は、コミュニケーションを完成させるのは、真実を追究する、という個人の姿勢に負うところが大きいのではないかと思います。方法だけが新しく、新しい言葉がでてきても、真実が伝わるとは限りません。真実を追求するという姿勢がなければ、コミュニケーションも意味がありません。世の中に寄与するところは少ないのではないかと考えています。