診療放射線技師によるAi研究会設立から見えること
私たちがAiに興味を持ち、オートプシー・イメージング学会に初めて参加したのは、2013年に千葉大学で行われた第10回大会で、その時に大会長を務めていたのが純真学園大学の阿部一之先生だった。
同じ診療放射線技師として、大会長を務める先生の姿が、とても強く印象に残っている。
当院におけるAiの現状
当院は、茨城県南地域の救急医療を充実させるために1985年に開院された三次救急指定病院であり、日本で唯一、市中病院に剖検センターを所有する一般病院でもある。開院当初より、当時の救命救急センター長であった大橋教良先生が中心となって、来院時CPAに対する死後CTを開始し、年間で約150件施行している。2016年4月より異状死体専用CT装置が剖検センターに導入され、臨床装置では出来なかったような高度腐敗症例も扱うことになり、一年間で235件施行された。
数多くのAiを長年行っている施設にいる中で、多くの近隣施設から、Aiの運用に対する相談を受けるようにもなった。
診療放射線技師の臨床現場における現状
医療事故調査制度の施行に伴い、これまでAiを施行していなかった施設でも実施に向けての活動が活発化している。しかし、Aiを受け入れる感情は、当院のように日常業務の一環としてAiを行っている施設でもさまざまである1)。その要因は、現在の臨床現場の中心で務める多くの診療放射線技師が、育成学校時代にAiを学んでいないことが一つあげられる。今では、学生教育の一環とし、カリキュラムに取り入れる育成学校も増えてきたが、私たちにはそのような下積みがなく、臨床現場がAiを知る場である。
茨城Ai研究会設立とそこからの道
日本におけるAiの基盤はCTである。その撮影は診療放射線技師が行うべきだと考えるが、前述のように我々がAiを学ぶ機会は極端に少ない。新たな分野であるAiは、運用方法が分からない施設が多く、各地域や施設の特徴により抱える問題も様々であり、全国レベルの講習会では解決に至らない場合も多い。このような現状を補う場が研究会である。
当院のある茨城県では診療放射線技師が主体となった研究会を2016年に立ち上げた。本研究会の目的は、異状死を中心にAiを扱う組織全体の情報共有や意見交換の場、そして茨城県内におけるAiの現状把握や検査の統一化を目指している。地域密着型の研究会であるからこそ、臨床現場の生の声をまとめることができ、それをオートプシー・イメージング学会や日本診療放射線技師会等にフィードバックるすことで、問題解決の一助になればと考える。
最後に
私たちは、各分野の先生方がいるなかで診療放射線技師が大会長を務めている姿を見て感銘を受けた。それ以来、診療放射線技師がAiのコーディネータとして活動することを目標としている。その第一歩として、茨城Ai研究会は、全国のモデルになるため活動していく。
今後、このような研究会が全国各地で設立されることを切に願っている。
参考文献
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田代和也他:死亡時画像診断(Ai)に関する当院診療放射線技師の意識調査
-他の2施設調査との比較- 日本診療放射線技師会誌 2015.9 Vol62/No.755