日本病理学会コンパニオンミーティングと剖検輯報に基づいたAiデータベース
本稿では、日本病理学会におけるAiに関するコンパニオンミーティングについて述べ、剖検輯報に基づいたAiデータベースについて提言する。
日本病理学会では、コンパニオンミーティングという同好の志の集まりの会がある。学会本部が学会期間中に会場などを準備し、オーガナイザーが演者や座長を選定して行われる。僭越ながら、私と丸山教授(島根大)とがオーガナイザーとなり、2014年の第103回日本病理学会から「病理解剖と死後画像」研究会としてコンパニオンミーティングを開催してきた。2014年は「病理解剖の新展開―Aiを用いた病理解剖―」をテーマに、2015年は「病理解剖と死後画像との対比と協働」をテーマに開催した。そして、今年2016年(第105回)は「病理解剖と死後画像診断(Ai)」研究会として「医療事故調査制度における病理解剖とAi」をテーマに開催予定である。
このような活動を通して、病理学会の会員にAiに興味をもってもらうことの目的は二つある。一つは、より精度のたかい病理解剖を実施したいのであれば、解剖前のAiは有用であることを知ってもらい、Aiを実施する施設を増やすことである。そして、もう一つは、日本病理学会が発行している「日本剖検輯報」にAiの項目をつくることである。
病理学会では、毎年「日本剖検輯報(しゅうほう)」を刊行し、国内で病理解剖されたほぼ全例をデータベース化している。印刷媒体では、年齢、性別、臨床診断、そして箇条書きの剖検診断が4行以内で記載される。癌の転移については「転:あり・なし」のみの記載で、転移先の詳細はデータベースに登録されている。これと同様に、「Ai:あり・なし」の項目を追加し、Ai実施の有無のみを記載し、画像診断の結果についてはデータベース内に登録するようにすれば、剖検結果付きのAiデータベースができる。
第102回1000字提言では「Ai輯報」の提案がなされたが、Aiデータだけをゼロから立ち上げるのはなかなか大変であるが、既存の「剖検輯報」にタグを付けるかたちでのAiデータベースならば、構築しやすいのではないかと考える。そして、このようなデータベースは世界に類のないものとなり、得られる知見・情報も計り知れないものとなるだろう。