第114回
2015年11月30日

Ai!求められる新たな役割へ

新潟大学大学院保健学科研究科教授
高橋 直也先生

皆様、新潟大学医学部保健学科高橋直也です。第14回オートプシー・イメージング学会学術総会の大会長を拝命しました。次回のAi学会学術総会は、2016年8月27日(土)28日(日)に、日本歯科大学新潟生命歯学部講堂(新潟市中央区浜浦町1丁目8)を会場として開催いたします。
これまでのAi学会は首都圏と札幌という大都市で開催されてきましたが、次回の大会は人口100万人以下の地方都市で開催される最初の総会となります。10月から開始された医療事故調査制度、地方都市におけるAiの重要性を中心とした企画を計画しています。皆様の多数のご参加を心待ちにしています。
今回の1000字提言では、次回の大会テーマについて述べます。

Aiが提唱されてから十数年がたちました。これまでもAiは医療関係者には広く認識されてきましたが、この数年で社会的にもその重要性が広く知られるようになり、それに伴いAiに求められる役割は拡大しています。

Ai以前の死後画像検査は、主に救急領域で“ひっそりと”行われていました。当初の死後画像検査は、診療用のCTを用いて、臨床検査の合間に脳出血の有無だけを確認するといったものでした。こうした検査は、死因究明に対して不十分な対応しか存在しなかった社会制度を背景に、一部の医療従事者の熱意によって全国各地で自然発生的に始められました。そうした状況に風穴を開けるように、海堂氏によってAiが提唱され、Ai学会が発足しました。こうして、かつての「死後画像検査」は「Ai」という新しい概念を身にまとい表舞台へ登場しました。

その後、死因究明に対する社会的要求が高まり、死因究明関連法の施行、小児死亡の原因究明、医療事故調査制度の開始、とAiは、医療安全、警察関係、法曹関係と広い範囲で要求されるようになってきました。法医学領域でもAiが解剖と相補的な手法として十分認知され、多数の施設に遺体専用のCT・MRIが設置され、死因究明や身元確認のためにAiが導入されています。
さらに、Aiが一般の方々にも広く知られるようになったことから、気持ちの整理をつけるために遺族からもAiを希望する声があがり、一昨年には遺体専用の民間施設も開設されました。

これまでのAi学会学術総会では、生前画像とは異なった死後特有の画像所見や、身元確認のための手法など、死亡時画像の重要な知見が明らかにされてきました。また、各地でのAiの実施状況や社会的意義も討論されてきました。しかし、議論はそうした形而下的な問題にとどまりません。Aiは“その死”に関係するすべての人たちの、心のよりどころとなる可能性を秘めています。ともすれば対立的に論じられかねない医療関係者と遺族の、双方にとってAiが中立的なかけ橋となりえます。Ai学会では、Aiを行うことで避けられた感情的な問題も、多数紹介されています。それは、領域の壁を越えて様々な分野の専門家が参加するAi学会だからこそ可能な、英知の結集によるものです。

このように、Aiは死因を明らかにするという医学的な役割だけでなく、社会的・精神的にも重要な役割を担うようになってきています。第14回オートプシー・イメージング学会学術総会のテーマを「Ai ! 求められる新たな役割へ」としました。さあ、みなさん、Aiをすべて分野の共通の手段として、ますます拡大する新たな役割に乗り出していきましょう!