救急医療における医療紛争をAiが救う
救急医療の現場では医療紛争が生じることが多く、救急医療を忌避する医師が増加し救急医療崩壊の一因となっている。困難な状況で可能な限りの診療を行っても結果が伴わなければ、社会に理解が得られにくいというのはある程度仕方のないことである。しかしそれがすべて「過誤があった」とされては医療が成立しない。丁寧な説明に努め、結果的に過誤は無かったと認められても、その間の紛争は医師のモチベーションを大きく奪うものである。
2007年に判決が出た、いわゆる「亀田テオフィリン裁判」はその代表例である。
http://lohasmedical.jp/blog/2008/02/post_1088.php
詳細は他項に譲るが、この判決で特筆されるのが下記の事実である。
- 鑑定医が基本的なCT画像の読影が出来ていなかった、さらにそれが検証されずそのまま採用されてしまった。
- 自施設で行った病理解剖の結果が採用されなかった。
医療事故調査制度において定められた「医療事故」とは、管理者が予測しない医療行為に起因するあるいは疑われる死亡および死産、という定義であり、救急医療では致死的疾患の見逃しや侵襲的治療処置による不測の死亡がこれに当たる。後者の「侵襲的治療処置による不測の死亡」の大部分は、出血や穿孔など臓器損傷によるものであり、Aiの最も得意とする領分である。平成21年度の深山らによる厚労科研「診療行為に関連した死亡の調査分析における解剖を補助する死因究明手法(死後画像)の検証に関する研究」では、Aiによって(Aiではなく「死後画像(PMI)」となっているが)死因診断が完了するものではなくあくまで解剖の補助で用いる、とされているが、これは臨床の前線に居る立場からすると少々違和感がある。医療事故の場合、再発防止の観点から真の死因診断が重要であることは論を待たないが、医療紛争を防ぐ場合には真の死因診断は不明であっても、救命のために行った「侵襲的治療処置による不測の死亡」でないことが確認されることが重要なのである。さらには医療事故に関して、解剖と比較した自施設でAi行う利点は、
- 死亡後に時間経過をおかず行える
- 自施設で施行した場合も結果に客観性が担保される
新しい医療事故調査制度にAiが明記され、その概念が広く知られ現場で生かされることにより医療紛争が減少し、救急医療の衰退に歯止めがかけられることを望んでいる。