第110回
2015年6月16日

日本診療放射線技師会Ai活用検討委員会が目指すべきもの

国際医療福祉大学
樋口 清孝先生

私が病理学教室にいた頃(Aiという言葉がまだ知られていなかった頃)のことです。早朝に病棟から病理解剖の依頼があり、スタッフは準備を済ませ、ご遺体を待っていました。しかし、予定時刻になっても来ず、確認の電話をすると「今、放射線科で頭部CTを撮影しているので、もう少し待ってください。」との回答でした。そこで初めて死後画像の価値を知ったと同時に、既に外来診療が始まっていたため、他の患者がいる検査室周囲の状況がとても気になったことを今でも覚えています。

その後、2008 年11 月、日本診療放射線技師会にAi 活用検討委員会が発足し、私は委員として診療放射線技師によるAi活用について、様々な取り組みに携わることになりました。なお、昨年6月より委員長の任に就いております。

ここで、当委員会で取り組んでいる活動の一部を紹介します。

医療事故調査制度の施行に向けて
今年10月から施行される医療事故調査制度については、「画像検査」「放射線治療」「医療機器」に関連する事故など診療放射線技師が関与する事案も多々あろうかと思い、日本診療放射線技師会では支援団体としての準備を進めています。また、各医療機関が行う医療事故調査については、「解剖又は死亡時画像診断(Ai)の実施」と明記され、客観的な情報が取得できるAiは必須アイテムになると思っています。すると、撮影者である診療放射線技師の役割はかなり重要となるため、当委員会も協力できる体制を整えています。

Ai認定診療放射線技師の現状と今後
2011 年10 月、死後画像の撮影に関する知識や技術の向上と品質の確保ならびに公正を担保し、死因究明に必要な画像を提供できる環境の醸成のための認定制度として「Ai 認定診療放射線技師規則」を制定しました。また、同時にAi 認定講習会を毎年3 回開催しており、2015年4 月現在、全国で482 名のAi 認定診療放射線技師が誕生しています。我々は各医療機関に1名以上のAi認定診療放射線技師の配置を目指しており、今後はAi 専門診療放射線技師への移行も視野に入れて検討したいと考えています。

その他にも当委員会で取り組むべき課題は山積みですが、関連団体や学会との協力体制をこれまで以上に密にして取り組んでいきたいと思います。

当委員会が目指すべきもの、それは「全国どこでも、質が高く、公正なAi画像を提供できる人材を世に輩出すること」なのだと考えます。