第104回
2014年11月4日

診療放射線技師とAi ~再考~

筑波メディカルセンター病院 放射線技術科
小林 智哉先生

診療放射線技師は、CTやMRI、X線撮影などを撮像して通常の画像とアーチファクトの判別をし、再撮像の有無を検討しながら日常業務を行っている。特にMRIなどでは判別が難しいときがあり、読影力が必要である。厚生労働省が取りまとめた“チーム医療の推進に関する検討会報告書”には、読影補助業務を診療放射線技師が行うことが記載されている1)。Aiにおける読影補助とはどのようなことだろうか?私は、所見を拾い上げる他に、①異常と正常の判別ができる画像や、②所見がわかりやすい画像を提供することであると考えている。以下に例を挙げる。

①RobertsらのLancetに掲載された論文では、死後CTの方が死後MRIより正確に死因を同定できたと報告している2)。当院の画像と比べると質が悪く、低体温による信号やコントラストの変化が画像の解釈を難しくしたことが原因と考える。疾患に焦点を絞り、ときには条件を最適化した画像を提供することにより、死後MRIの診断能は改善すると考える。

②画像診断は、元画も確認しながら行う読影医以外に、3D処理などで装飾された画像を主体に診断(死因究明)をする画像に不慣れな医師や警察も行うことがある。従って、画像処理は、非常に重要となる。処理の仕方や見せ方などの違いにより、骨折などの診断能が異なり、所見によって適切な処理が必要である。

撮像のプロである我々診療放射線技師がAiとどのように関わるべきか、今後のAiの動向を踏まえて再考する。

小児死亡事例に対する死亡時画像診断モデル事業

15歳未満の年間死者数は平成23年で5099人3)、そのうち虐待死(心中以外)は58人である。虐待死のうち3歳未満が19人(虐待死全体の33%)で、3歳未満の虐待死のうち外傷死が9人(虐待死全体の16%)である4)。小児全例にAiを施行するにあたっては、この外傷死を見逃してはいけない。小児Aiは、対象が小さくて動かないため、撮像条件・画像表示条件が診断の質を変化させることが予想される。我々診療放射線技師の力の見せ所である。

日本診療放射線技師会のAi活用検討委員会では、本事業で収集された撮像条件および画質の検証を行い、ガイドラインを作成する予定である。多くの施設が本事業に参加され、撮像条件等の情報提供がされることが望まれる。

Aiを撮像する診療放射線技師の教育(学生教育と日本診療放射線技師会Ai活用検討委員会)

本邦は、約7万人の診療放射線技師免許取得者がおり、日本診療放射線技師会員は約2万9千人である。日本診療放射線技師会が主催するAi認定講習会は、平成23年11月から年3回のペースで開催し、これまで9回の開催に至っている。受講者総数は約750人で、そのうち限られた条件で日本診療放射線技師会が認定した“Ai 認定診療放射線技師”は約300人である。さらにAiの基礎的な知識を持った診療放射線技師を増やすためには、学生教育や講習会の地方展開を実施する必要がある。

現在の診療放射線技師養成学校では、Aiのみならず死生観や感染症対策を学習する機会が少ない。本邦の現状から、学生教育にAiを取り入れるべきである。

地方展開については、Ai認定診療放射線技師のなかでさらに専門的な知識を有した技師が地域の格となることが望ましいと考える。認定技師から専門技師への育成をしていくためには、Ai認定診療放射線技師を日本診療放射線技師会員に限定せず、他学会と連携した認定機構設立の必要性を切に感じている。

診療放射線技師がAiの土台

Aiの依頼者は、ご遺族や警察、診療科医師などさまざまである。臨床機を使用して検査を行う場合は、施設規定などの整備が必要である。この整備は誰が行うのか?画像を撮像し管理する診療放射線技師である。これを怠ることによる社会への不利益は計り知れない。前述のように画像の質を担保し、検査依頼の整備をすることで、診療放射線技師がAiの土台となっている。

「もともと地上に道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。」(魯迅:中国の小説家)

道はできた。その道を通りやすく整備するのも、また人である。

参考文献