第103回
2014年7月8日

愛媛県の現状と今後

田辺医院
田邉 亮介先生

愛媛県では法医学講座教授不在が長期に及び、剖検体制が不十分であった。平成18年暮れから私が司法・行政解剖を引き受けるようになり、診療終了後に大学で剖検を行っていた。剖検室には天井走行のX線撮影装置が備えられていたが使用不能の状態で、昔の画像データ(銀塩フィルム)は整理されておらず、読影記録も存在しなかった。

そこで、自院に剖検施設を整備し、平成21年から死体専用CT(GE16列)を用いたAiを行うようになり、300余例の検案・剖検にAiを行ってきた。 Aiの費用は警察負担で、昨年度まで16000円程度であった。今年度から値上げを要請し、22000円程度請求したところ、Aiの依頼が激減した。4月以降撮影分の支払いもされていない。会計課が安価な施設で行うよう指導していると仄聞した。県警に問い合わせたところ、警察庁からは21000円程度にするよう(25000円でなく)指導されているという。某大学は50000円で契約したということも県警は把握していたが、「高いところへは持って行きませんよ」とのこと。「開業医は大学より(法医学会法医認定医でも)下なのか。読影力の評価はどうなんだ。」と抗議してみたが埒があかないので放って置くことにした。
私自身、臨床医であるが法医認定医でもある。臨床経験のない(あっても僅かな)法医の先生よりは読影力はあるつもりでいる。(Ai専門の先生ごめんなさい。)

病気を診たことが無いのに死因が判る、というのも誤解を招きやすい。
死後画像は一般臨床医には馴染みが無く、警察医会でも頭部の血液就下をクモ膜下出血と誤認している症例発表も見かける。(指摘したが、脳神経外科の先生が読影したのだから間違いない、と取り合って貰えなかった。) 一般臨床医のみならず検案で死後変化に慣れているはずの警察医でもAiの知識が浸透しているとは言いがたく、「Aiを行いさえすれば良いのだろう。」という感覚で依頼と受任が行われることが、どれほど危険であるかは自明だろう。
一昨年から当地の法医学講座にも教授が着任され、剖検室もリニューアルした。お陰様で私は用済みとなった。今春からはCT(シーメンス2列)も救急部から移設されAiが始まっている。今般、四国内の他大学に先駆け、愛媛大学にAiセンターが設置され、法医学教授がセンター長を務められる。

今後、①Ai読影の質を担保すること。 ②費用負担を明確にすること。 ③施設間の連携・協力体制を構築すること。 くらいは必要では無かろうか。