国際基準に基づく小奇形アトラス 形態異常の記載法 ―写真と用語の解説



オトガイ(頤)(CHIN)

幅広いオトガイ(Broad chin)
定義
下顎正中部および表面の軟部組織が目立つ(主観的)(図 63)。
コメント
小顎症は下顎の高さと幅の両方が減じているときに使用される用語である。
 オトガイの大きさが大きいときは高いオトガイ(Tall chin),幅広のオトガイ(Broad chin)と別々に記載される。
図 63 幅広いオトガイ
下顎の中心部と表面の軟部組織が幅広い。
・Chin,cleft:オトガイの垂直の皺(Chin,ver-tical crease)を参照

オトガイの陥凹(Chin Dimple)
定義
下顎正中部の軟部組織に陥凹がある場合(主観的)(図 64)。
コメント
陥凹の周囲は円形である。
図 64 オトガイの陥凹
下顎正中部の軟部組織の陥凹に着目のこと。

オトガイの水平の皺(Chin,Horizontal Crease)
定義
下口唇の直下に存在する水平の折り目もしくは皺(主観的)(図 65)。
図 65 オトガイ上の水平の皺
下口唇紅部の下方,オトガイの脂肪を含む軟部組織の隆起の情報に位置する水平な皺または襞。

H 型の皺(Chin,H-Shaped Crease)
定義
オトガイ上のH型の皺(主観的)。
(図 66)
コメント
H 型の皺は垂直な皺(Vertical crease of the chin)とは区別されなければならない。
同義語
Chin,H-shaped groove
図 66 オトガイ上のH型の皺・Chin,H-shaped groove:H型の皺(Chin,H-shaped crease)を参照
・Chin,long:高いオトガイ(Chin,tall)を参照

尖ったオトガイ(Chin,Pointed)
定義
下顎がオトガイに向かい尖っている(主観的)(図 67)。
コメント
下顎枝の角度が鋭角をなしている。
図 67 尖ったオトガイ
顔面下部が下方に向かって狭くなり,下顎の両側面が鋭角をなして交差している。

短いオトガイ(Chin,Short)
定義
下口唇の下縁からオトガイの下端までの距離が短い(主観的)(図 68)。
コメント
オトガイが短くかつ幅が狭いときに,小顎症(micrognathia)と称する。
図 68 短いオトガイ
下口唇の唇紅下縁からオトガイの先端までの垂直距離が短い。

高いオトガイ(Chin,Tall)
定義
下口唇の下縁からオトガイの先端までの距離が長い(主観的)(図 69)。
図 69 高いオトガイ
下口唇の唇紅下縁からオトガイの先端までの垂直距離が長い。
同義語
Chin,long

オトガイの垂直の皺(Chin,Vertical Crease)
定義
オトガイの軟部組織に垂直の皺がある(主観的)(図 70)。
コメント
垂直の皺は, H型の皺(H-shaped crease of the chin)とは区別されなければならない。 
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
Chin,cleft
図 70 オトガイの垂直の皺
頸部(首)(NECK)・Bull-neck:Neck,broadを参照

太い頸(Neck,Broad)
定義
正面ないし後方から見たときに頸の幅が広い(主観的)(図 71)。
コメント
頸の周囲径を実測すると頸の幅についての客観的な評価が得られる。頸の周囲径は甲状軟骨が最も目立つ部位において,頭部を直立され,前を向かせた状態で水平面に沿って測定する。鑑別診断として翼状頸(Neck webbing)を参照のこと。
図 71 太い頸
頸が幅広いことに注目。

長い頸(Neck,Long)
定義
頸と肩の接合部から後頭骨の下縁までの距離が長い状態(主観的)(図 72)。
コメント
客観的な指標は存在しない。
図 72 長い頸
頸と肩の接合部から後頭骨の下縁までの距離が長い。

短い頸(Neck,Short)
定義
頸と肩の接合部から後頭骨の下縁までの距離が短い(主観的)(図 73)。
コメント
客観的な指標は存在しない。
図 73 短い頸
頸と肩の接合部から後頭骨の下縁までの距離が短い。
・Neck,thick:Neck,broadを参照

翼状頸(Neck Webbing)
定義
頸の後方外側に斜めに存在する襞状の皮膚。通常,前方もしくは後方から見て頭蓋骨の乳様突起部から肩峰に広がる(主観的)(図 74)。
コメント
この所見は後方毛髪線の低位(Low posterior hairline)を伴うことが多いが,分けて規定されるべきである。
同義語
Pterygium colli
図 74 翼状頸
頸の後方外側に斜めに存在する襞状の皮膚に着目されたい。
・Neck,wide:Neck,broadを参照

後頸部皮膚のたるみ(Nuchal Skin,Redundant)
定義
主に水平方向に走る後頸部皮膚のたるみ
(主観的)(図 75)。
コメント
年齢があがり,頸部が垂直方向に伸びるに連れ,後頸部の皮膚のたるみは目立たなくなる。頸部は太く見えたり,翼状として見えるようになる。もし皮膚の皺が垂直方向だったり,斜めである場合には翼状頸(Neck webbing)という用語が用いられる。
・Pterygium colli:Neck webbingを参照
図 75 後頸部皮膚のたるみ