下垂体腺腫・頭蓋咽頭腫

1:下垂体腺腫

下垂体腺腫は成人によく発生するホルモン器官である下垂体にできる良性腫瘍です。腫瘍がホルモンを産生する場合とそうでない場合があり、約半々の比率です。ホルモンを発生するものではプロラクチンというお乳をだすホルモンを産生するものと成長ホルモンという子供が成長する際に出されるホルモンを産生するものが主に認められます。まれですが副腎皮質刺激ホルモンという副腎皮質を刺激しステロイドを分泌させるホルモンを出すものや甲状腺刺激ホルモンを出すものも発生することがあります。このようなホルモンを出す腫瘍の場合、そのホルモン過剰によりお乳が出たり、女性では月経がなくなったり不順になったりします。一方男性では陰毛が薄くなったり性欲が低下したりします。成長ホルモンが過剰になると末端肥大症や巨人症となり高血圧、高脂血症や糖尿が発症します。このようなホルモン産生腫瘍の場合比較的腫瘍が小さいうちに見つかることが多く診られます。一方ホルモンを産生しない腫瘍の場合、腫瘍が大きくなり、視神経を圧迫してから見つかることが多く、両方の耳側の視野が欠けることが特徴となります。

下垂体腺腫の種類 症状 治療
ホルモン産
生性腫瘍
成長ホルモン産生腫瘍 末端肥大症・巨人症・糖尿病・高脂血症 手術・ガンマナイフ・サンドスタチン(注射薬)・経口薬治療
プロラクチン産生腫瘍 無月経・乳汁漏出(女性)
陰毛消失・インポテンツ(男性)
経口薬治療(パーロデル・カバサールなど)、手術、ガンマナイフ
ACTH産生腫瘍 中心性肥満・高血圧 手術・ガンマナイフ
TSH産生腫瘍 甲状腺機能亢進 手術・ガンマナイフ
ホルモン非産生性腫瘍 視野障害、頭痛、水頭症など、無症候のものも多い 手術・ガンマナイフ・無症候のものは経過観察も可

治療は、プロラクチンを産生する腫瘍はパーロデルやカバサールといった薬剤が極めて有効ですし、成長ホルモン産生腫瘍に対しては最近サンドスタチンという注射薬が発売されました。ただし薬剤はほぼ永久に服用・注射する必要があります。
私の施設ではホルモン産生腫瘍については内分泌専門医と協力して診療し、治療方針を決定してゆきます。また手術や薬剤で腫瘍を完全に制御できない場合などはガンマナイフや放射線治療が有効な治療法です。あまり腫瘍が巨大である場合を除き、ほとんどの症例では極めて低侵襲な経鼻的経蝶形骨洞手術の適応となります。私個人では下垂体腺腫の治療は福島貴教授のもとで30例、Mayo Clinicで50例、本邦で個人的に50例の治療を行なっています。また内視鏡を用いた下垂体手術を本邦でいち早く取り入れて治療を行っています。

症例は視野障害でこられた患者様のMRIで巨大な下垂体腫瘍を認めます。内視鏡下に腫瘍を大部分摘出し、視野は著明に改善しました。

下垂体腺腫 51歳女性


視野障害で発見された大きな下垂体腺腫鼻から
内視鏡下に摘出しほとんどの腫瘍を摘出
 
術後のMRI:視野はほぼ正常化

2:頭蓋咽頭腫

これは比較的まれな腫瘍で視床下部・下垂体というホルモンや情動・記憶などの中枢となる極めて重要な部分に発育する良性腫瘍です。良性ですが周囲脳組織に癒着が強く治療の困難な腫瘍での一つです。腫瘍は鼻粘膜残存であるラトケ嚢の一部から発生すると考えられており、大きく分けて小児時期、成人になって発症する2つのタイプがあります。腫瘍はのう胞(水溜りのようなもの)の部分と充実した塊の部分がありしばしば石灰化して中には石のように硬くなるものもあります。症状は水頭症による頭痛や意識障害、視野障害、性格の変化やホルモンの症状などが主体となります。
 治療は手術療法および放射線治療(分割治療やガンマナイフ等の定位放射線治療)は主体となります。
 手術治療の合併症例率は比較的高く、ホルモン欠乏症状(尿崩症や性・ステロイド・成長ホルモンの低下)はほぼ全例で出現します。また視野障害、記憶障害意識障害、麻痺などの重篤な合併症が5~10%の危険性で発症します。放射線治療はすぐにはそのような危険性はありませんが腫瘍を制御できる可能性は50~80%と低く、遅発性の合併症(視力低下、記憶障害、知能低下)等の可能性があります。また放射線治療後再発例の手術治療は困難な場合が多く認められます。
 そこで当院ではまず手術による摘出を行い、合併症出現リスクの高い部分の残存・再発腫瘍等について、放射線治療をお勧めしています。

症例は頭痛で発症した20歳の症例です。腫瘍は大型で後頭蓋窩まで進展しており2回に分けて手術治療を行ないました。術後視力低下、知能低下などなく、再発も認められません。

頭蓋咽頭腫 20歳男性

術前MRI 第3脳室から後頭蓋におよぶ充実性およびのう胞性の入り混じった腫瘍。
術後MRI 腫瘍はほぼ全摘出され、視野障害、記憶障害などなし。
術後ホルモン補充療法を行なっている。


間脳・下垂体腫瘍についても経験と治療の慎重な選択がきわめて重要です。
手術治療をほどほどにして放射線治療をすすめる施設が多くありますが、腫瘍を有効に減らして初めて放射線治療の効果が最大に生かされます。
優れた手術治療・放射線治療・内分泌治療チームにて診療を行なうのがベストであると考えています。

関連動画紹介(NTTコミュニケーションズ オフィシャルサイト)

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