3:メイヨークリニックの概要

メイヨークリニックの歴史はイギリス出身の外科医であるDr. WW Mayoが1863年、南北戦争で傷ついた兵士たちを治療する施設をミネソタ州のロチェスター市につくったことから始まる。1880年代には彼の息子たちが外科医として加わり、また1892年にはアメリカで最初のGroup practiceとして他科の医師たちを加え、総合医療を扱う施設となった。その成り立ちから多くの科の医師、医療技術者の総合した意見を患者の管理に活用することを最大の目標にしていた。1915年にはアメリカで最初のGraduate Medeical School を創造し、Medical Specialist、レジデントを育成する機関となった。現在はTable 1に見られるような天文学的な数の患者を扱う巨大な施設になっているが、メイヨー創立当時の メThe needs of patient come firstモという基本理念は今でも守られており、 Parctice, Education および Researchを3本の柱(ロゴマークにある3つの盾)として実践している。 Parcticeは医療を多科のMuti-disciplinary integrated teamとして扱うことによって最高のレベル、最善の治療方針をうちだし、地域、国、そして全世界の患者に平等な医療を行うことを目標にしている。 Educationは医師、科学者、医療従事者のみならず、患者、市民が、医療・健康管理のための教育をうけられる機関になることをめざしている。 Mayo Health Book, Mayo Cardiac Bookなどのとても優れた詳しい家庭医学書を参照されるとその姿勢がうかがわれると思う。 ResearchもNIH, 自己Grantをもとに、直接臨床に役立つ、公共のためとなる研究を押し進めている。

Table 1: Mayo Clinic personnel and daily practice

Personnel Staff physician & medical scientist : 1,720
Clinical research associates, fellows : 292
Residents and students : 1,515
Administrative and allied health specialists : 21,906
Total : 25,433

Daily practice(average)

New patients : 1,300
Hospital new admission : 138
Surgery : 163
Lab tests : 16,000
Radiological tests(CT, MRI) : 300
Hotel room occupied by Mayo patients : 2,000

From Mayo Facts 1996

下にメイヨークリニックの優れている点を幾つか挙げたが もっとも顕著なものはその100年間変わらない合理的なシステムであると思う。1900年代から通し番号をつけた全科共通のカルテ、レントゲン写真の中央管理体制、病理標本の整理システム、患者のFollow-upシステム、等々非常に便利にできている。ひとつの疾患の症例について調べようと思えば1日のうちに100例以上のカルテと写真が用意できる。また先にも述べたが診断、手術、術後管理における他科との連携の良さは非常に優れており、他の領域のSpecialistの意見を簡単に聞くことができ、病気を一臓器の疾患としてでなく全身疾患として扱う治療ができる。これは患者のためのみならず 医療教育を授ける機関として必須のものなのであろう。分業という面でもメイヨーは他の追随を許してはいない。様々なSpecialistを育成し、その活躍の場を与えている。個人にかかる負担を軽減するためにそのBack-up体制もしっかりとしている。また少し逆説的になるがあのロチェスターという辺鄙な土地に巨大な医療施設をつくった先見の明には驚かされる。いまやコンピューターでレントゲン、カルテを小さなスペースで保管することが可能になりつつあるが、今までの膨大なカルテ、写真、病理標本を保管するには大きなスペースを確保する必要があり、それにはロチェスターは最適であった。また患者の駐車場に困るようでは良い医療施設とは言い難い。広い空間、穏やかな風景は患者の回復にはなくてはならないものであろう。飛行機、ヘリコプターで患者を輸送する時代であるから大都市から遠いというのは余り問題にならないように思われる。かえって犯罪の少ない安全な場所にあるというのは病人またその家族にとっては欠くことのできない利点であるように思う。

Excellence of the Mayo Clinic

Excellence of the Mayo Clinic

  1. Registration and storing system(Chart, X-ray, pathological slides, etc. )
  2. Integration of multi-disciplinary medical specialty
  3. Division of professional specialtyTraining, responsible role and back-up system of medical specialists
  4. Location

メイヨーも近年保険制度の変換の影響を強く受けている。患者がメイヨーに来たくても保険会社やMedicareや Medicaidを扱う福祉事務所が州の境を越えたり、契約している医療機関以外に受診することを禁止していたり、医療内容を指示してきたりする。それに対抗するためメイヨーはアリゾナ州や, フロリダ州に支部をだしたり、ロチェスター近郊の地域医療施設をメイヨーシステムに併合したりして大きな南ミネソタ、ウイスコンシン、アイオワの医療グループをつくろうとしている。また医療訴訟に対しては10人以上の弁護師団を抱えてそれに対応している。

このようなシステムの維持、将来に対応する能力もやはりアメリカの豊かさに支えられていると思われるが、メイヨーの名声を落とさないように努める一人一人の従事者の誇りと努力に依るところが大きいと思う。

st. mary St. Mary's Hospital

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