目次: BME、 CAMPUS HEALTH、 ICUとCCU、 Internal Medicine、 INNERVISION、 International Journal of Hematology、 Journal of Occupational Health、 Kobe Journal of Medical Sciences、 Medical Postgraduates、 Medical Technology、 NEW MOOK 整形外科、 Pharma Medica、 Psychiatry and Clinical Neurosciences、 秋田県農村医学会雑誌、 医学のあゆみ、 石川県立中央病院医学誌、 医療情報学、 エマージェンシー・ナーシング、 鐘紡記念病院誌、 看護、 看護管理、 看護実践の科学、 関東整形災害外科学会雑誌、 教育と医学、 熊本医学会雑誌、 救急医療ジャーナル、 クリニカルスタディ、 月刊消防 、原子力災害に対する国際的医療対応のあり方、 公衆衛生研究、 厚生省精神・神経疾患研究委託費による11年度研究報告集、 神戸市看護大学紀要、 神戸市立病院紀要、 神戸大学医学部紀要、 心と社会、 コミュニティケア、 産業医学ジャーナル、 獣医畜産新報、 小児科臨床、 小児外科、 心身医学、 神緑会学術誌、 世界災害報告 、集団災害医療マニュアル、 小児科、 心理臨床学研究、 腎と透析、 整形・災害外科、 精神科治療学、 精神神経学雑誌、 精神療法、 綜合看護、 綜合臨床、 中毒研究、 調剤と情報、 治療、 東京都医師会雑誌、 透析ケア、 登山医学、 長崎医学会雑誌、 難病と在宅ケア、 新潟大学医学部保健学科紀要、 日本医師会雑誌、日本看護学会論文集、日本看護研究学会雑誌、日本救急医学会関東地方会雑誌、日本救急医学会雑誌、日本外科学会雑誌、 日本歯科医療管理学会雑誌、 日本集団災害医会誌、 日本職業・災害医学会会誌、 日本赤十字武蔵野短期大学紀要、 日本透析医会雑誌、 日本内科学会雑誌、 日本病院会雑誌、 日本法医学雑誌、 日本臨床整形外科医会会誌、 日本臨床皮膚科医学会雑誌、 日本臨床麻酔学会誌、 函館中央病院医誌、 発達心理臨床研究、 病院、 病院管理、 病院設備、 兵庫県立看護大学紀要、 病体生理、 広島医学、 広島県立保健福祉短期大学紀要、 広島大学原爆放射能医学研究所年報、 福井県立大学看護短期大学部論集、 プレホスピタル・ケア、 防衛医科大学校雑誌、 防衛衛生、 北海道医報、 北海道公衆衛生学雑誌、 保健物理、 麻酔、 松本市の保健衛生、 臨床精神医学、 臨床と研究、 レジデントノート
■BME
■CAMPUS HEALTH
■INNERVISION
■ICUとCCU
■Internal Medicine
■International Journal of Hematology
■Journal of Occupational Health ■Kobe Journal of Medical Sciences
■Medical Postgraduates
■Medical Technology
■NEW MOOK 整形外科8号
■Pharma Medica
■Psychiatry and Clinical Neurosciences
■秋田県農村医学会雑誌
■医学のあゆみ
■石川県立中央病院医学誌
■医療情報学
■エマージェンシー・ナーシング
■鐘紡記念病院誌
■看護
■看護管理
■看護実践の科学
■関東整形災害外科学会雑誌
■教育と医学
■熊本医学会雑誌
■救急医療ジャーナル
■クリニカルスタディ
■原子力災害に対する国際的医療対応のあり方
■公衆衛生研究
■厚生省精神・神経疾患研究委託費による11年度研究報告集
■神戸市看護大学紀要 ■神戸市立病院紀要
■神戸大学医学部紀要
■心と社会
■コミュニティケア
■産業医学ジャーナル
■獣医畜産新報
■小児科臨床
■小児外科
■心身医学
■神緑会学術誌
■世界災害報告 2000年版
■集団災害医療マニュアル へるす出版、東京、2000年
■小児科
■心理臨床学研究
■腎と透析
■整形・災害外科
■精神科治療学
■精神神経学雑誌
■精神療法
■綜合看護
■綜合臨床
■中毒研究
■調剤と情報
■治療
■東京都医師会雑誌
■透析ケア
■登山医学
■長崎医学会雑誌
■日本内科学会雑誌
■難病と在宅ケア
■新潟大学医学部保健学科紀要
■日本医師会雑誌
■日本看護学会論文集
■日本看護研究学会雑誌
■日本救急医学会関東地方会雑誌
■日本救急医学会雑誌
■日本外科学会雑誌
■日本歯科医療管理学会雑誌
■日本職業・災害医学会会誌
■日本赤十字武蔵野短期大学紀要
■日本透析医会雑誌
■日本病院会雑誌
■日本法医学雑誌
■日本臨床整形外科医会会誌
■日本臨床皮膚科医学会雑誌
■日本臨床麻酔学会誌
■函館中央病院医誌
■発達心理臨床研究 ■病院
■病院管理
■病院設備
■兵庫県立看護大学紀要
■病体生理
■広島医学
■広島県立保健福祉短期大学紀要
■広島大学原爆放射能医学研究所年報
■福井県立大学看護短期大学部論集
■プレホスピタル・ケア
■防衛医科大学校雑誌
■防衛衛生
■北海道医報
■北海道公衆衛生学雑誌
■保健物理
■麻酔
■松本市の保健衛生
(松本市地域包括医療協議会ほか:松本市の健康危機管理体制、vol.22 別冊、2000)
■臨床精神医学
■臨床と研究 ■レジデントノート
Abstract:地上からの電波の届かない地下街においてPHSにより通常時において安定・連続した通信が得られるということがわかった.PHSは災害などの緊急時には接続回線数の不足が危惧されるが,一旦回線が接続されてしまえば,末端の移動をしない限り途中での回線切断は起こりにくく,緊急避難的な基地局としての可能性が示唆された.
Abstract:1)震災直後には睡眠関係や集中困難を中心とした急性ストレス反応が頻出した.2)災害ストレスからの回復は男子の方が早く,女子は長期化する傾向がみられた.3)震災後4年5ヵ月後の時点で精神的訴えが増加しており,災害ストレスの遷延化の可能性が指摘された.4)被災地居住や震災被害有りといった外的要因は災害ストレス症状の出現に影響を与えていると推察された.5)被災地居住や震災被害有りは,災害ストレスの長期化のリスクファクターである.
Abstract:症例1:43歳女.慢性骨髄性白血病のため阪神大震災の4日前に骨髄移植をうけた.クリーンルームの層状流は停止したが,予防的抗生物質投与とスタッフの出入りを最小限にすることで,一過性の発熱が認められた以外問題なく経過した.結果的に骨髄は拒絶されたが,大震災が原因ではないと考えられた.症例2:21歳女.骨髄異型性症候群のため全身放射線照射等の準備中,骨髄移植予定日の3日前に大震災に見舞われた.患者は震災後も冷静で感染徴候も認められなかったことから震災の6日後に骨髄移植を行った.14日目に生着が確認された.
Abstract:阪神-淡路大震災により被災した子ども達の震災の後の心理的及び身体的な反応がどのように変化したかを確かめるために経過観察をした.激しく損害を受けた地域(震度7)にいた子ども達と比較的穏やかな損害を受けた地域(震度5)にいた子ども達の様子を各々の子どもの親によって記入された質問表を使って解析した.震災の2年後にはPTSD(心的外傷後ストレス障害)の徴候(例えば遺残する追体験や持続する回避行動)は被害が大きかった地域にいた子ども達により高頻度に認められた.大規模な災害が起こった際は,災害の後に子ども達の精神的及び身体的な反応を評価することは,子ども達を支援するために非常に重要である.
Abstract:地震後4年が経過した1999年1月4日〜1999年2月29日受診した外来通院中の患者(n=227)に対して,アンケートによる身体状況の慢性期における影響について追跡調査を行ったが,特に心臓・胸部外科外来通院患者(n=126)と非胸部外科外来通院患者(n=101)とに分類し,比較検討した.現在も症状が継続している患者の割合は全体で11%にみられ,心臓・胸部外科領域疾患(15.1%)と非胸部外科疾患(5.9%)との間に有意差(p<0.05)が認められた.外科外来に通院中の患者では,高度のストレスによる身体的影響を受けており,長期にわたる肉体的・精神的ケアが必要と思われた.特に,心臓・胸部外科疾患を有する患者では,非胸部外科疾患患者と対比して,長期にわたる(4年以上の)follow-upが必要と思われた.更に,50〜70歳代の高齢者においては,特に注意深い観察が必要と思われた.
Abstract:挫滅症候群は,四肢骨格熟が長時間持続的に圧迫されるような場合に起こる.救出後再灌流によって急速に四肢骨格筋の損傷が引き起こされ,損傷部では急速に浮腫が進行する.一方,崩壊した骨格筋細胞からはカリウムやミオグロビンなどが放出され,その結果生じる代謝性アシドーシス,高カリウム血症,ミオグロビン血症,急性腎不全,凝固異常など,様々な全身症状を呈する疾患である.初期診断には受傷機転の聴取が重要で,多くの場合,意識は清明でバイタルサインも安定しており重症感がなく注意を要する.治療の原則は大量輸液療法である.高カリウム血症や完成した腎不全は透析療法の適応になる.局所に対する筋膜切開については意見が分かれている.阪神大震災の初期治療についても述べた.
Abstract:地震後のQOL,心理学的福祉の長期経過,及び地震への直面,地震後の救援等とQOLの関連について検討した.地震後3ヵ月(335名)と9ヵ月(253名)にQOLをWHO査定スケールにより検討した.直面したことにより身体的,心理的QOL欠損が3,9ヵ月と続き,犠牲者にはうつ状態,身体化症状,不安等の心理的苦悩を認めた.地震経験が少なく,災害後援助も少なかった群ではQOL,心理的福祉も貧弱で,犠牲者で救援も多かった群では災害後3ヵ月から9ヵ月での福祉改善が認められた.
Abstract:災害に遭遇した場合速やかにかつ適切に対応する為,課題を明確にし対策を強化する必要があると考え,職員一人一人の対応や病院に対する要望についてアンケート調査を実施した.その結果,遠距離通勤者や夜勤者の主体的な院内宿泊や早めの出勤から,職務に対する使命感や責任感が確認できた.人員確保の面では支障をきたさなかったが,情報の収集と伝達については不充分であり,院内,院外の連絡体制の確保と充実が必要であることが明確になった.
Abstract:災害時にリアルタイムで行動指針を表示する災害対策電子マニュアルの基本的な設計概念と実装について報告する.神戸大学附属病院の災害対策マニュアルから病院職員の職能と災害時の病院機能,そして時間経過という因子をもとに職員の行動指針ルールを抽出し,このルールをサーバ上でデータベース化し,コンピュータネットワークで結ばれた院内の各部署の端末に必要情報を表示するナビゲーションシステムを開発した.本システムのインタフェースは,各ユーザが自然に対策を進めていくことができるよう設計されており,災害時に有用であると考えられる.
Abstract:平成7年1月17日の阪神淡路大震災後に見られた活動性消化性潰瘍のその後の経過について,前年同期の活動性潰瘍を対照として検討した.震災後の潰瘍は瘢痕治癒迄に要する気管,再発の有無について対照の潰瘍と大きな差は認めなかったが,治癒迄にやや長い期間が必要で,再発も起こしやすい傾向であった.
Abstract:去る9月11日,東海地方は記録的な大雨に見舞われた.交通機関の麻痺・堤防の決壊など,大きな被害が住民を襲った.そうした状況下における保健婦の住民の救護活動について,愛知県師勝保健所からの詳細な報告を通して述べた.
Abstract:症例は24歳男性で,工事現場作業中に腰部以下が挟まれ脱出不可能となった.救出迄に12時間を要し,救出直後よりショックパンツが装着され搬送された.両大腿に腫脹,皮下出血斑を認め,下腿は軽度であった.血液所見ではCKの異常高値,K,GOT,GPTの高値,ミオグロビン尿を認めた.圧挫症候群を疑い,大量輸液を開始するとともに血液透析を行った.下腿部の循環障害,両下肢運動知覚障害を認めた.血管造影にて圧挫症候群によるコンパートメント症候群の進行と診断し筋膜切開を行った.術後より両下腿に外側筋群の壊死が始まり,demarcationと判断し,外側にデブリドーマンおよび縫縮,内側に植皮を行った.両大腿MRI所見では,出血,挫滅により広範にhigh intensityを認めた.
Abstract:看護学における新しい取り組みについて,近年注目を集めている「家族看護学」,阪神・淡路大震災で取り組みが急務となった「災害看護」,急速に進歩している遺伝学に対応した「遺伝看護」について説明した.
(原口義座ほか編・ワークショップ:原子力災害に対する国際的医療対応のあり方、東京、2000)
Abstract:保健所における健康危機管理体制の現状について調査を行った.回答のあった全国保健所のうち,危機発生時のマニュアルは81.4%で作成されていた.しかし,危機発生に備えてのシミュレーション実施率は18.1%であった.沖縄県では,感染症,食中毒,結核の分野では健康危機管理への備えはできていたが,自然災害,毒劇物等の他の分野では,担当がはっきりせずマニュアルの整備等も遅れていた.地方調査の結果,沖縄県内でも地域の置かれている状況によって想定される危機の種類が異なってくることが示された.
Abstract:雲仙岳の噴火災害後8年間にわたる被災住民の精神的健康状態の追跡調査結果を報告した.General Health Questionnaire得点8点以上のハイリスク群は66.9%から32.4%へと減少したが,対照群の12.3%に比べ高水準にあった.「不安・緊張感」関連症状や「社会的無能力感」関連症状は避難生活開始から12ヵ月以内に改善した.しかし,「抑うつ感」関連症状は3.5〜4年以上も遷延し,「対人関係困難感」関連症状は7年後にも改善がみられなかった.リスク要因は女性,中・高齢者,持病での長期受診者,初期の頻回避難経験者,自営業的就業者であった.
Abstract:阪神・淡路大震災被災者の外傷後ストレス障害(PTSD)を構造化面接法により評価し,PTSD診断のための有効なスクリーニング方法の確立を試みた.仮設住宅居住者86名に対してClinician's Administered PTSD Scale(CAPS)とImpact of Event Scale-Revised(IES-R)を試行した.CAPSにより8例がPTSDの現在症と診断され,19例でPTSDの障害診断が可能であった.CAPSによるPTSD診断によりIES-R得点を検討したところ,IES-Rは25点をcut off点として,PTSDのスクリーニングにおいて有用なツールであることが確認できた.
Abstract:北海道南西沖地震による災害から6年2ヵ月が経過した時点においても被災者の精神健康への長期的な悪影響が確認されており,仕事や経済再建に寄与する社会的支援対策および中高年層の問題や被災者の悩みの相談相手となる心理的支援対策の充実があらためて必要であることを示している.
Abstract:全国24施設の防災対策への取り組みを調査し,標記を検討した.ベッドに数人を乗せての誘導は避難経路の状態・重量により操作困難であり,患者の状態に応じた誘導方法がより安全で効率がよいことが判った.電動車椅子使用者で体位調整に時間を要する患者はベッドで,2時間以上人工呼吸器を離脱できる患者はベッド・ストレッチャー・バギー車での避難が効果的であった.電動車椅子・ベッド上生活者が多い割りに防災対策が確立している施設は少なかった.
Abstract:阪神大震災直後から3ヵ月以内に神戸市立中央市民病院神経内科外来を受診したパーキンソン病患者51名に聞き取り調査を行い,地震直後,1-2週後,そして3-4週後の状態を解析した.地震直後から2週間以内では16名が以前より動作が悪化したと感じ,不変は25名,以前より動きが良くなったと感じたものは10名であったのに対し,3-4週後では10名が悪化,35名が不変,6名が改善と述べた.地震直後から動きが良くなったと感じた患者も,動きが悪くなったと感じた患者も,次の2週間でも同様の傾向を示し,この傾向は統計的に有意であった.
Abstract:調査は阪神・淡路大震災から45〜47ヵ月経た時点で,仮設住宅と災害公営復興住宅の住民86名を対象として行われた.構造化面接としてClinician-Administered PTSD(外傷後ストレス障害)Scale(CAPS),自記式尺度としてImpact of Event Scale改訂版(IES-R)を用いた.CAPSによる面接調査では,面接時点で8名がPTSDと診断可能で,過去にPTSDと診断される時期のあった者が,19名認められた.この面接時点でPTSDと診断された者のうち,調査前の精神保健活動においてPTSDと認識されていたのは2名だけであった.又,IES-RはPTSD症状をスクリーニングする方法として有効で,適当なカットオフ値を設定することが可能であった.面接調査とスクリーニング調査を併用することによって,精神保健活動に有効な指針が得られる可能性を指摘した.
Abstract:就業中の化学物質曝露中毒事例の情報提供のあり方を検討した.産業現場では多種多様の化学物質が使用されており,ヒトでの毒性がよくわかっていない物質による中毒事例も少なくなかった.中毒事例は経気道曝露が多かった.就業中の化学物質曝露中毒事例の情報提供には,起因物質の毒性情報の提供と共に,曝露時の作業環境,臨床経過等を産業医学的かつ臨床医学的に解析したデータを提供することが必要と考えられた.
Abstract:平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災より1年5ヵ月後(第1回目)に母子の心身状態と育児環境への影響を調査し,被災地に住む8,150組,対照地(横浜)に住む2,072組の母子より回答を得た.更に,震災より2年6ヵ月後,3年6ヵ月後に同じ調査票を用いて被災地に住む7,639組,7,690組の母子を対象に継続調査を行った.調査結果から,時間の経過につれて母児共に震災の影響が徐々に減少してきていることが判明した.しかし,4〜6歳児では,震災後3年半が経過した時点でも住居被害がひどかった家庭ほど「ひとりで寝られない」等のPTSDと関連した症状を示す割合が高かった.一方,母親の心理状況と住居被害との関係はより明らかで,子どもの症状にも影響を与えている可能性が考えられた.子どもたちの心を安定させるためには,家族全体への支援が必要である.
Abstract:59歳独居の未婚女.震災で住宅が全壊,仮設住宅に入居した.糖尿病・肝障害で外来通院していたが,震災による生活環境の変化や心理的ストレスから糖尿病と肝機能の増悪を認め入院,コンサルテーション・リエゾンとして心療内科に紹介された.本症例は震災ストレスによるトラウマを抱えており,その回復にはまず「安全の確立」としての安定した治療関係と安定した生活環境が必要であり,そのうえでの患者教育を含めた心身医学的ケアが有効であった.本症例の身体疾患の経過は患者の精神状態と心身相関を示していた.
国際赤十字・赤新月社連盟
第10章 災害救援活動のあゆみ
Abstract:1995年に起きた阪神淡路大震災以来,日本でも子どもの外傷後ストレス障害(PTSD)が注目を集めるようになった.しかし,外傷後ストレス障害が精神障害と位置づけられたのは僅か20年前であり,小児に関する研究は,盛んになってきてはいるものの,まだまだ解明されていない点が多い.一方,虐待や災害だけではなく,事故,極端の痛み,入院などが外傷体験となって,PTSDとなる場合もあり,小児科医としても知識が必要な障害である.小児の外傷後ストレス障害の認識の歴史,診断,症状に影響する要因,初期介入,治療に関する知見を整理し解説した.
Abstract:対象は神戸市灘区,東灘区の6小学校延べ112グル-プで,地域や近隣の臨床心理士および大学院生が実践した.震災によるストレスの影響の一指標として,破壊的な表現をした絵に焦点を当てた.地震を描いた絵は少なかったが,絵は詳細な説明や物語を伴い,その展開とともに複数枚になることが多かった.ファシリテ-タ-の援助と攻撃性を含むグル-プの相互干渉中で,児童は心的内容の象徴表現を十分に行い新たな安定したイメ-ジを創造することができた.この描画グル-プワ-クはかなりの程度治療的に関わる機会ができ,査定的機能のあることが利点である.事例として個人事例5例とグループ事例1例を提示した.
Abstract:5年前の阪神・淡路大震災の貴重な経験より,大災害と整形外科の役割について考察した.大災害の中での整形外科医の役割は,災害発生直後から2〜3日にかけての被災者の救出と救急処置作業である.その後の損傷家屋での救出作業や交通渋滞による交通事故等による二次災害への対応が必要となる.とりわけ倒壊家屋での圧挫症候群は致命的となるので,その対応を習熟しておく必要がある.更に避難所生活での馴れぬ荷物の運搬や水汲み作業による脊椎圧迫骨折,運動不足による腰痛,肩こり,膝痛などへの対応が必要となる.できれば避難所等の巡回診療により,リハビリテーションへの対応やメンタルケアを行う必要も出てくる.
Abstract:集団災害においては,限られた医療資源を有効に活用して最大の医療効果をあげるために負傷者の選別(トリアージ)が行われる.トリアージは単純で最も重要な災害現場で行われる最初の医療行為である.トリアージにはいくつもの段階があり,トリアージの設定基準も負傷者の数,重傷度と救命専門家,施設の能力のバランスで刻々と変化する.1分以内にトリアージをすませ,その結果をトリアージタッグに書き込む.優先度の決定は簡便な呼吸,皮膚,意識レベルの評価で行う,「単純トリアージ迅速処置」(START)に従う.適切なトリアージを行うには知識だけでは不十分で大災害に備えた模擬訓練が不可欠である.
Abstract:大災害時の災害現場においては,傷病者に対する救命処置が開始される前に,トリアージが実施され,優先順位にしたがって緊急を要する患者に対しての救命処置(一次救命処置や止血処置,緊張性気胸に対する胸腔穿刺・ドレナージなど)を行う.その後,医療機関へ搬送され,根本的な治療(二次救命処置及び挫滅症候群に対する急性血液浄化など)が行われるという災害医療の原則が遵守されることにより,回避できた死を可及的に少なくすることができる.災害医療の基本的考え方,トリアージについて述べ,大災害時の救命治療を必要とする負傷病態と救命処置を災害現場と医療機関に分けて述べた.
Abstract:地震や,列車,航空機事故等の大規模災害時に高エネルギー外傷によって生じる多発骨折は,多臓器損傷を伴う多発外傷の形態をとることが多い.多発外傷は生命の危険性を伴うため,他診療科と共に治療にあたる必要がある.被災地では,医療の機能低下が生じることから,被災地外に転送することが望ましい.骨折に対する緊急救命処置としては骨盤骨折における止血があげられる.多発骨折の治療法としては,可能であれば早期に内固定による骨折部位の安定化を図ることが推奨される.しかし,場合により,創外固定,ギプス固定等で対処せざるを得ないことがあり,種々の治療法に習熟しておく必要がある.
Abstract:挫滅症候群は,外傷性又は外傷に伴う横紋筋融解症と定義され,循環血液量減少ショックと急性腎不全という二つの独立した病態を包括している.循環血漿量の減少の原因は患者の脱水状況と圧迫を除去された筋肉細胞内への水や電解質の移動貯留である.そのため,初期には脱水による腎前性急性腎不全であるが,救出後再還流を受けた筋肉からミオグロビン等の筋肉内物質が全身に拡がっていくことにより腎性腎不全へ移行する.予防及び治療は,大量輸液によってある脱水・循環血漿量低下を回復させ,ミオグロビンを早期に排泄させることが急務である.又,高K血症に注意を払う必要がある.
Abstract:大災害時の初動における医療救援では,迅速に現地入りすることが要求される.これには,現地でのコーディネーターとの連絡が必要である.そのためには平時から防災ボランティア団体等との連携をしておかねばならない.又,現地ではトリアージをせねばならず平時の訓練を受けておく必要がある.又,行政の救援が立ち上がる時期になるとボランティアの存在が現地の復興を阻害しないように,妥当な時期での撤退を考慮する必要がある.
Abstract:全回答の因子分析の結果,不安・怖れをあらわす因子1,抑鬱気分・身体化徴候を示す因子2,向社会性を示す因子3が抽出された.因子1は,高度被災地域で顕著で被災程度が軽くなるほど軽微になり,対照地域で少なかった.因子2は,他の地域に比べて高度被災地域で強く見られた.被災程度が軽くなるほど影響は小さくなる傾向にあり,軽度被災地域では対照地域よりも低い値であった.因子3は,高度被災地域が最も小さく被災程度が軽くなるにつれて増大したが,対照地域では高度被災地域と同程度であった.因子1,因子2の各々に属する徴候の性質や両因子の地域別分布の違いからは,外傷後ストレス障害の複相性が示唆された.男子より女子が,学年別では低学年ほど強い影響を受けた.被災の大きい地区では,「閉じこめられた体験」や「自分のけが」が,比較的被害の軽い地区では,「被災者の受け入れ体験」や,「家族のけが」が影響を残しやすい.
Abstract:回答結果について因子分析を行い因子1では不安や怖れを,因子2では抑鬱気分及び身体化徴候を,因子3では向社会性を各々あげることができる.これらは4ヵ月後・6ヵ月後・13ヵ月後・23ヵ月後でも同様に抽出され,先述の三つの情動が普遍的に被災地の子どもたちに共有されていた.因子1は4ヵ月後が最大,時間と共に減少し,被害地域,低学年児,女子で強く,回復にも時間がかかった.地域差・学年差・男女差とも時間と共に漸減した.因子2は6ヵ月後が最高,13ヵ月後には多少軽減されるが4ヵ月後より高かった.23ヵ月後には4ヵ月後と同レベルに戻った.抑鬱気分・身体化徴候は,不安・怖れよりもおくれて顕在化する可能性や,地震よりも二次的なストレスに大きく影響される可能性,被災後の軽躁的な気分の影響に隠された可能性がある.高学年児ほど,抑鬱気分・身体化徴候は生じにくいが,いったん生じた反応は遷延しやすい.男子よりも女子が大きな影響を受け,回復にも時間がかかった.因子3(向社会性)は被災程度・学年・性に関わらず,時間と共に低下した.
Abstract:68歳女.震災で家族の半数が死亡し,残された夫婦のうち妻側に不眠の症状が見られ,喪の作業の困難さが予想された事例である.相談員は夫婦各々の喪の作業と夫婦単位の喪の作業と間のずれを埋めることに協力した.PTSDの事例は必ずしも専門家の援助を求めようとはしない.しかし,喪の作業には特定の専門家を必要としないが,その作業を促す他者の存在は絶対に必要である.相談員もまた被災者として,自分自身の喪の作業を行っていた.かかわりの中で相談員自身の中に生ずる,葛藤を調整するのに不可欠であったのは,スタッフミーティングであった.又,定期的事例検討が大きな意味を持った.喪の作業はいつの場合でも,その人をとりまく多様な人々との共同作業となっているのである.「こころのケアセンター」の訪問や巡回というような不定型な活動が,この事例ではとくに有効に機能していったと思える.
Abstract:ヘリコプター搬送システムの充実により搬送時間が短縮された結果,高度救急医療圏の拡大が可能となり,救命のみならずQOLの改善が期待できるようになった.災害時の運用には平常時の運用システムが確立されていることが不可欠であり,日常的な救急搬送・訓練等を行い消防機関(防災航空隊)との交流・相互理解をはかることが重要である.
Abstract:JOCウラン加工施設の沈殿槽からサンプリングされたウラン溶液の分析結果と,事故当日の作業手順書に基づく投入ウラン量16.6kgから推定した総核分裂数は,2.5×10^18個であった.この事故を被曝線量からみると,沈殿槽から直接外部に放出された中性子とガンマ線による被曝が大部分であったことが特徴的であった.避難した350m以内の周辺住民200名の被曝線量は,事故時に工場敷地西側に滞在した7名以外は,事故当日の個人の行動調査とともに,家屋等による遮蔽効果を考慮して算出された.周辺住民の被曝線量の最大は21mSvであった.重篤な被曝を受けた3名を除く169名の従業員は,個人線量計,ホールボディ・カウンタ等による評価の他,個人の線量を特定する実測値がない場合には,敷地内の場の線量と行動調査を基に評価された.従業員の被曝線量の最大は4.8mSvであった.
Abstract:積雪災害の現状について,以下に従い概説した.1)豪雪をもたらす気象環境,2)雪害の歴史(江戸・戦前・戦後・平成),3)雪害の種類(雪崩・電線着雪・融雪地滑り・雪泥流・吹雪・融雪洪水・凍上・その他),4)雪害の特異性.
Abstract:平成9〜11年度新潟県における雪害事故による人的被害状況について,統計学的検討を行った.その結果,3年間の人的被害者総数は197名で,死傷者の82%が男性であり,年齢別では61〜80歳の高齢者が48%を占めていた.発生地別では,特別豪雪地帯に位置する六日町,十日町市,津南町,塩沢町に死傷者が多かった.被害程度では,死者33名,重傷者97名であり,年平均10名の死者,32名の重傷者が出ていた.死傷事故の発生原因は,屋根の雪下ろし作業中に転落したものが最も多く117件,除雪機に巻き込まれての負傷が41件となっていた.
Abstract:研究対象者は神戸市内で被災にあった幼稚園及び保育所に通っている子どもを持つ母親515名である.研究方法は自己記入式質問紙調査で,項目は被災の状況,避難状況,子どもの心身の状態,母親のPTSD,生活の困難度とである.分析はHALBOW4にて統計的検討を行った.結論は以下の通りであった.1)母親の認知した災害後の子どもの心身の状態が明らかになり,被災直後からの心のケアの必要性をあげていた.2)母親のPTSDと子どもの心身の状態との関連が明らかになった.3)母親が看護職者に望んでいることは,心のケア,災害直後からの看護,環境への対処法,病気の手当のアドバイス,適切な医療等の情報であった.
Abstract:サッカー国際大会における集団災害事例を調査し,その特徴を検討した.1902〜1996年のサッカー試合に関わる死傷者発生は35件で,内サッカーワールドカップ大会(W杯)本大会および予選6試合を含む国際試合が13件あった.最初の報告は1902年のイングランド対スコットランド戦での25人死亡,517人負傷で,1964年のオリンピック南米予選アルゼンチン対ペルー戦での318人死亡,500人以上の負傷の記録はスポーツ史上最悪といわれている.以後,1950〜1960年代は5年に一度,1970年代以降は1年に一度の割合でみられ,近年では1998年フランスW杯大会予選グアマテラ対コスタリカ戦での80人死亡,負傷者多数の報告がある.災害発生の直接の契機は,観客の暴動が11件と最も多い.災害機転は,狭い出入口への多人数の殺到や乱闘による外傷,スタジアム内外の施設の倒壊に起因する外傷などであった.前回1998年フランス大会中の集団災害医療体制の一部について報告した.
Abstract:救命救急センター看護婦76名に災害に対する意識調査とシミュレーション教育を行った.災害に対する看護婦の意識は,シミュレーション教育で60.3%から70.6%へ10.3%の向上がみられた.シュミレーション教育により,一番教育効果があったものは,防災設備の認識度であり63.0%から82.6%へ19.6%の向上がみられた.
Abstract:東海村臨界事故被曝患者に対する看護について,1事例を呈示した.患者は被災者かつ当事者であり,無菌室内に収容され隔離状態を強いられていた.このような状況は日常的な対応能力では処理できないと考え,身体的援助のみではなく精神的援助も重要と判断した.コミュニケーションやスキンシップを図りケアを行う,担当医から適宜病状説明を行う等,常に患者の精神症状を把握し,ニードを充足するような援助を心掛けたところ,不安や不満の軽減が図れた.又,環境面として音や採光を配慮したことで,睡眠・休息の援助につながった.その結果,平穏な表情が戻り,看護婦との会話が増加した.今回の事例を通して,臨界事故による極めて特殊な被災者の集中治療看護,精神的看護の難しさを学んだ.
Abstract:白鬚橋病院は,東京都より災害時後方医療施設として指定され,全日本病院協会を通じ防災対策を強化すべく活動してきた.しかし東海村JCO臨界事故においては,東京都衛生局からの被曝患者および疑い患者の収容の問い合わせに対し,十分な対応が出来なかった.この反省に基づき,災害時後方医療施設としての知識の向上と受け入れ対応を検証する為に,防災訓練を行った.防災訓練では原子力災害事故を想定し,患者受け入れ準備,汚染測定,除染作業,搬送方法などを行った.その結果,防護服,サーバーメーター,搬送体制搬送装備等の確保が不十分であり,今後十分な確保を行って行く必要がある.
Abstract:1)海洋スポーツ競技会において事前の準備から実際の救護業務までを担当し,その内容について検討した. 2)実際の救護室の運営は,事前に策定した準備手順や運営方針にしたがって行われていた.運営全体において特に問題は認められなかった. 3)救護室で扱う疾患や存重症度は様々であり,その運営には競技種目により影響を受ける. 4)スポーツ競技会における救護体制を円滑に運営するためには,救急医学ひいては災害医学にも通じる総合的な準備と運営が必要不可欠である.救急医はスポーツの現場におけるプレホスピタルケアにも大きな役割を担うことができ,積極的に活躍の場を増やしていくべきである.
Abstract:震災後4年経っても,挫滅部位は筋の萎縮を認め,筋力低下も残していた.足関節の機能については背屈だけでなく底屈も障害されていた.足関節の拘縮,足趾の変形を認める例もあった.日常的には全例歩行は可能であったが,「しゃがむ」「坂道,階段を降りる」ことの不自由さを認めた.知覚障害は急性期よりは改善しているものの全例で残存していた.挫滅部位のCT所見では筋の萎縮,脂肪変性を認め,1例では筋肉内の石灰化を認めた.機能障害の強い例と,比較的機能が保たれた例との比較では,血清CPKの差は認めず,リハビリテーションの期間は機能障害が強い例で長かった.機能障害の強い例ではCTで筋の萎縮が著しかった.
Abstract:イギリスの救急医療の現状を救急本部での電話の応対から救急搬送患者の入院まで,順を追って記述した.イギリスでは大災害に対し,BASICS doctorを中心とする医師の院外救急医療活動,通常の医療活動の中でトリアージの概念,MIMMSという教育,訓練システムが平常時から存在している.日本でもトリアージへのさらなる理解と院外救急活動の開始が必要である一方,全国的な警察,消防,救急と地域行政との連携の構築が急務で,イギリスの経験から学べる点は多い.
Abstract:薬・毒物に関する治療情報については,既に(財)日本中毒情報センターが十分に機能している.現在同センターでは,毒物混入事件等の集団災害発生時にその原因物質を推定するための診断補助データベースの開発や中毒関連分野の専門家の登録と紹介システムの構築,インターネットを利用した情報提供体制の確立などを準備中である.更に「日本中毒分析センター」設立に向けて「分析のあり方検討委員会」を中心に具体的方策が練られている.日本中毒学会は,これらの活動をバックアップすると共に,臨床中毒専門医やそれを支える分析等の基礎系スペシャリストを育成する体制の構築等の役割を担っている.
Abstract:災害はおおまかには自然災害,人為災害,複合災害に分類される.大災害では自然災害であっても二次的に人為災害の様相が含まれ,多くの災害が複合災害と見なされる中で集団化学災害は人為的災害の性格が最も強い.最近,戦争やテロ行為に化学物質が利用される事例が増えつつあるが,化学工業の進歩により毎年5,000件の新化学物質が合成されている現状では,日常の化学災害にも十分な危機管理体制が必要である.我が国における事例をもとに,集団化学災害問題について述べた.
Abstract:兵庫県の災害時の医療体制のあり方」報告書は,以下のように要約できる.1)災害医療情報システムは未だ十分に整備されたとはいえない,2)災害拠点病院も未だ十分に整備されたとはいえない,3)地域レベルでの災害対策の強化の萠芽は認められる,4)病院レベルでの災害対策も十分に強化されたとはいえない,5)医薬品等の供給システムの整備は進んだ,6)災害時搬送システム及び広域搬送システムの整備は進んだ,7)災害に関する総合的研究の推進は未着手である,8)医療関係者に対する災害医療に関する研修,訓練は推進されつつある,9)国民に対する災害時初期医療ケアー対応の普及,啓発も未着手である,10)災害対応の基本概念が形成されていない.
Abstract:阪神淡路大震災は,兵庫県に大きな損害を与えたが,同時に,より高度な救急災害医療基盤を築く絶好の機会を与えたとも言える.復興と救急災害医療対応強化のプロセスは着々と進行しているようであるが,兵庫県当局は現在押し進めている諸策を強力に継続すべきである.又,救急隊員,救急救命士,医師,看護婦,その他の医療関係職員の増員や研修,医療資機材,及び災害管理計画についてもより充実した災害対応体制を構築すべきである.
Abstract:阪神・淡路大震災での避難所医療に関わる3用語,「被災者,避難所,救護所」について,用語集と新聞紙上で日本語・英語両面から調査した.その結果,「被災者」とその類語は,学術用語として定義付けされつつあった.「避難所」とその類語も,一部が学術用語として定義付けされつつあったが,我が国の実情を反映しながら,日本語として成熟した用語はまだなかった.「救護所」を意味する学術用語は見出せなかった.これらの3語は,行政の現場や日本語の報道では,ほぼ統一されて使用されていた.英字紙上での英語訳では,「被災者」が12種,「避難所」が30種の類語が用いられており,多様で不統一であった.「救護所」は記事が少なく,1紙で2種のみが用いられていた.これらの3語は,避難所医療を論じるためには基礎となる単語であり,報道との整合性を保ちながら,災害医療専門用語として概念・用語・英語訳の統一を図ることが早急に必要である.
Abstract:著者等の参加した1998年11月のホンジュラスでの国際緊急医療援助活動,ゴラン高原における国連平和維持活動(PKO)及び海上自衛隊の遠洋航海におけるTelemedicineの例を紹介する.ホンジュラスでのTelemedicineの試行は,我が国における実践的な国際的災害救助活動における最初の成功例である.災害医療におけるTelemedicineは,通信にMobile環境のパソコンを使用するという点において,固定した施設・機材・通信路を用いる古典的なTelemedicineのシステムと異なる側面を持つ.そこでは通信手段の確保が重要であり,その点で,災害対処に大きな変革をもたらすことが予想される衛星通信についても考察した.
Abstract:神奈川県が平成9年度から医療従事者に対して実施した,災害医療研修会の内容と,受講者に対して行ったアンケート調査結果について検討し報告した.基礎研修は,災害医療の概要とトリアージの基礎知識の取得を目的に実施し,3年間で延べ12回開催し,1500名を超える受講者があった.災害医療そのものの情報不足及び研修会の少ないこともあり,大きな期待が寄せられたと思われた.ここで得たアンケート結果を基に,トリアージの実技訓練や病院防災マニュアル作成の手引きに関する研修など,新たな研修を実施してきた.その結果,大規模な地震を想定した病院内の防災訓練の実施,災害医療拠点病院間での勉強会の発足等の成果が得られている.
Abstract:ニカラグア災害における医療チームに参加したので,現地での活動全般及び看護活動の概要を報告した.派遣されたのが,災害発生の2週間後という時期であったこともあり,災害に直接関連する医療ニーズは低かった.保健衛生活動では,行政指導や保健衛生指導が比較的行き届いており,看護活動として介在する場面は少なかった.コレラ等の感染症の新たな発生増加といった危惧もなかったが,被災者には若い母親が多く,そのストレスに対する精神的ケアニーズは高いと思われた.災害看護は救急看護にのみ視点をおく傾向にあるが,国際救援の場にあっても心的障害に対するニーズは高く,派遣される看護婦が学習を深めておく必要性を強く感じた.更に緊急援助活動に伴う携行医療資機材や医療廃棄物の問題について,若干の考察を加えた.
Abstract:1998年,日本赤十字武蔵野短期大学2年生87名は,授業の一環として日本赤十字社主催の大地震災害救護訓練に参加し,応急救護ボランティアと傷病者の役割双方を体験した.参加の目的は訓練を通し,授業で学んだ知識の具体化として災害救護活動の理解を深めることにあった.看護基礎教育における訓練参加の効果を明らかにする為,訓練終了後,学生を対象に参加の満足度,学び,意見についてアンケート調査を実施した.その結果,学生の満足度は高く,体験を通して救護活動におけるチームワーク,命令指示,救護ボランティアの重要性,救護訓練のあり方等の学びが確認できた.救護訓練の有効性の要因としては,応急救護ボランティアと傷病者双方を体験したこと,医療救護班と応急救護ボランティアとの連携をみたこと,傷病者のメーキャップと迫真の演技による臨場感あふれる救護場面が展開されたことなどが考えられた.
Abstract:1998年のパプア・ニューギニア国津波災害に対して派遣された国際緊急援助隊医療チームは,発災後6日目に現地入りした.活動拠点となったウエワク病院は被災地から150km離れており,後方病院としての役割を担っていた.院内で9日間,傷病者の診療を行ったが,89症例の津波による傷病者は,1例を除いて外傷症例であった.災害サイクルにおけるPhase 1ということで,救急医療を要する症例を想定していたが,全例全身状態は安定しており,重症の頭部,胸部,腹部外傷は認められなかった.症例の約3/4が骨折患者であり,特に下肢の骨折が多かった.Phase 1の後期ということで,創感染が多く認められた.又,海水を飲み込んで誤嚥性肺炎を合併している症例も見受けられた.しかし,被災地から離れた後方病院である為,院内の衛生状態は管理されており,衛生状態の悪化に伴う呼吸器系あるいは消化器系感染症などは皆無であった.
Abstract:1998年,パプア・ニューギニア国で発生した津波災害において,国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)の看護婦として,2週間,後方病院で活動した.被災者の精神的,身体的な被害による心の傷は深く,心のケアが必要であった.現地の看護婦,ボランティア,JMTDRのメンバーが被災者を精神的にも支えており,変化がみられたケースもあった.今後さらに効果的に関わる為には,災害サイクルに応じて災害看護を展開していくことが重要である.看護に携わる者も,精神面の看護についての学びを深め,心の傷がPTDS(心的外傷後ストレス障害)へと移行するのを防ぐ為にプライマリーヘルスケアに基づき,現地の人と協力できるよう,様々な準備をしておく必要がある.又,海外における活動では,宗教の関わりを含んだ異文化に対する理解も重要となる.
Abstract:災害や人道的危機などで経験されてきた全ての問題の中で,最も深刻なものは,連絡ができなかったり,また重要な情報(たとえば初期の災害の評価や特別な手段の要請など)に接触できなかったりしたことである.しかしながら,過去30年間における人道援助や災害時の連絡手段の応用の経験や情報工学の発展は未来への可能性を示し,21世紀における災害管理に大きな変化をもたらすことになる.災害時の情報管理のあり方について総括し,将来の災害対策に変化をもたらす重要な技術分野とそのための技術者,科学者,災害管理者間の地球規模の協力体制について論じた.
Abstract:1999年9月30日,茨城県東海村にある株式会社JCOのウラン加工工場において臨界事故が発生し,3人の従業員が高線量の中性子線に被ばくした.受傷後2時間後に国立水戸病院を受診,高線量被ばくによる急性放射線症の発生が予見されたため,初期治療ののち約5時間後に放射線医学総合研究所(放医研)に搬送された.3人の被ばく線推定線は,O氏17GyEq,S氏10GyEq,Y氏2.5GyEq程度と仮定された.緊急被ばく医療ネットワークが招集され,短時間で専門治療医師団が治療を開始.最も高い線量を被ばくしたO氏とS氏は,急速に全身の浮腫,発熱,下痢等の急性放射線症と思われる症状を呈し,関係者の懸命な集中治療の甲斐なく死亡した.最も低い線量を被ばくしたY氏については,軽度の骨髄抑制をみたものの,放医研において,無菌室で骨髄抑制時期の治療を受け,骨髄機能の回復を確認した後,一般病室において治療し退院となった.
Abstract:2000年3月31日.有珠山噴火直後に現地入りした際に,「有珠山噴火における,重症患者多数発生時の道内及び道外への救急医療の確保について」検討した.1991年の雲仙普賢岳での多数重症熱傷患者発生の教訓より,そのような場合に備えて後方医療機関の確保を行った.札幌医科大学医学部救急集中治療部が調整し,重症熱傷患者は道内では10例まで対応可能で,10例以上の場合,厚生省を介して全国の医療機関に要請するシステムの案を作成した.しかし道外の民間空港への自衛隊機の着陸解決には時間がかかる.そのため,とりあえず北海道内で収まるシステム構築を行い,引き続き全国展開を視野に入れたシステムを考慮している.
Abstract:救命救急の際に用いることの多い薬剤を予め充填した救急用プレフィルドシリンジ(以下PFS)の試作品を入手し,阪神・淡路大震災を経験した関西地区の救命救急センター等5施設46名の協力を得て,災害医療現場におけるPFSの有用性を検証するためにアンケート調査を行った.震災時の救護経験を有する医師を中心にPFSの操作方法を説明し,模擬的試用の後にアンケートを行った.アンプルを用いた方法は被災時の体験を基にし,PFSは被災時に用いることを想定した回答を得た.その結果,PFSでは,細菌汚染・ガラス片や異物の混入の可能性,投薬準備の煩雑さ,けがの危険性がないこと,迅速性・携帯性に優れ,備蓄医薬品としての可能性がある等,PFSは災害医療における不安や問題点を減少させるものであり,災害の医療現場において有用性が期待されるシステムであることが明らかとなった.
Abstract:札幌市内の丘珠空港における消火救難合同訓練において,関係各機関の出動要請から現場到着迄の実際の時間を考慮した現場到着時間設定と,迫真の演技とメイクアップを施した模擬患者を設定することにより,より現実的な災害環境のもとで多数傷病者対応訓練を行った.現実に即した設定を行った結果,従来のシナリオに沿った訓練では不明瞭であった医療救護活動における関係各機関の役割が明らかとなった.
Abstract:1998年10月下旬に発生した大型ハリケーン・ミッチによって生じたニカラグア共和国の洪水災害に対し,11月14日から22日の期間,国際緊急援助隊医療チームは救援活動を行った.首都マナグアのヌエバ・ビダ地区,グラナダ県のマラカトーヤ地区とテパロン地区の3地域で1,120人に対して診療活動と調査活動を行った.受診者は小児(14歳以下55.0%)と成人女性(15歳以上34.5%)が多かった.疾病では約4割が呼吸器疾患が約4割と最も多く,下痢・消化器疾患,皮膚疾患がそれに続き,外傷は約1%.主たる活動内容は救援期から復興期に移行する時期の感染症の監視及び治療であった.
Abstract:トルコ共和国で発生した大規模地震に対し日本赤十字社は医療救援チームを派遣,発災後3日目より活動を開始した.活動場所は震源地イズミット郊外のウズンチフリック町,トルコ赤新月社が運営する仮設診療所であった.約1ヵ月の活動期間中,医師6名,看護婦5名,管理要員4名の計15名が派遣され,医療援助を行った被災者数は延べ1,700人に上った.看護スタッフの業務には直接的な医療行為の他,診療所の整備,医薬品の確保,医療物品の管理,診療システムの確立,連絡調整,情報収集等があり,広範囲に渡る活動が要求された.海外での緊急災害医療援助には,迅速な活動開始,効果的な活動成果を得るための方法論,が必要である.
Abstract:日本赤十字社は,1999年9月21日に発生した台湾地震の15時間後に,医療チームを現地に向け派遣した.活動の前半は被災現場でレスキュー隊と共に救援活動する方針とし,山奥の集落や地滑り現場等に出動する機会があったが生存者の救出には至らなかった.後半は,学校や公民館などで避難民の巡回診療を行った.災害早期の全体的な救援状況は,1)現地医療チームの迅速な対応,2)道路や橋が崩壊しているにも関らず応急工事や間道で車両を通行させて,物資の搬送供給が速やかであった,3)組織的で活発なヘリコプターによる搬送,4)多数の国際救助隊の活動,など注目すべきことが多かった.
Abstract:阪神大震災後,直接訪問リハビリテーション指導を行った在宅患者の中の26名を,3年目を目途に再訪問し,Philadelphia Geriatric Center(PGC)Morale Scale改訂版を使用して,主に患者本人と介護者の社会心理的な問題について検討した.PGC総得点は,健常高齢者,本人,介護者の3群間では,介護者に有意に低下がみられた.家屋の損壊とPGC得点の関連では,有意差のある逆の相関関係がみられ,完全損壊の方が介護者並びに本人ともに有意に高かった.疾患別では,いずれも有意差は見出せなかった.これらの調査から,被災者の支援を考える際には,介護者のQOLに注意深い配慮が必要であることが明らかになった.家屋の全壊が,被災者に前向きの生き甲斐を与えている結果であったが,研究が時系列を追ってされず,再調査のサンプルも少ないことから,今後より組織的に広範囲でprospectiveな研究の推進が必要である.
Abstract:クアラルンプールとマラッカで計162名の邦人(成人女83名,男15名,学童19名,乳幼児45名)に健康相談を実施,併せてヘイズの健康被害に関する講演会を開催した.又,健康相談参加者を対象に,ヘイズ災害及び海外赴任者の健康管理に関するアンケート調査を実施した.健康相談の結果は,有症状者は137人,咳・痰が76人と最も多く,咽頭痛72人,鼻症状53人,眼症状50人,頭痛45人と続いた.25人に肺雑音を聴取した.アンケートは80名が回答し,ヘイズに関する情報不足と現地医療体制への不安が浮き彫りにされた.一時帰国が必要と考える人は64%いたが,47%の人は帰国が容易でないと答えた.
Abstract:ネパールに発生する災害について,自然現象と社会的要因の視点からプロジェクト・サイクル・マネージメント(PCM)手法を用いて問題分析した.自然現象は地形と気候を視点とし,社会的要因は自然現象に影響を与える森林伐採,政府の防災対策,災害に対する住民の意識と行動を視点とした.その結果,中心問題は『地滑り,洪水による被害の増悪』が挙げられた.その要因として,森林伐採をせざるを得ない状況,政府による防災対策の不備,住民の災害に対する脆弱性が分析された.また疫病の要因については,政府によるインフラや医療体制の不備に加え,住民の公衆衛生に対する意識不足等が挙げられた.
Abstract:大規模災害における死体検案体制の構築の為に警察(嘱託)医ならびに救急医を対象として大規模災害時医療活動に対する関心と可動性,日常の死体検案体制の実態,日本法医学会による死体検案認定医制度に対する関心,等に関するアンケート調査を行った.警察(嘱託)医は,大規模災害時の死体検案に対して意欲は認められるが,開業医の比率が高いため,日常の診療業務,報酬等を考慮すれば,他地域への派遣は困難であると思われた.一方,救急医の中にも死体検案に参加意思を示すものは少なからず認められたが,特に,他地域への応援派遣の場合,所属医療機関での服務免除,派遣命令が発災後速やかになされなければ参加困難であると思われた.
Abstract:酸素濃縮器のみでは,高流量のガスが得られないが,エア・コンプレッサの利用で6l・min-1以上の流量が得られ,かつ,どの麻酔器でも酸素濃度を45%以上に維持できた.酸素濃縮器とエア・コンプレッサを麻酔器に接続する方法は,紛争,災害地での麻酔に実用可能と思われる.
Abstract:2000年に行った被災地の幼稚園児の母親を対象にした阪神・淡路大震災後の震災ストレスに関する調査を基に,母親が置かれている立場や状況による震災ストレス認知の相違と,激震地区と他の地区の質問項目について詳細に検討した.その結果,地域的・個人的に被害が大きい ほどストレスを感じており,専門的援助を受けた母親は非常に少なかった.また,半数以上の母親は,ストレスに対して積極的な対処をせずに諦めており,ストレスの対処が難しい状況に置かれやすく,母親としての完璧思考の存在を示唆した。
Abstract:データは,愛知県下の3地域で行ったアンケートを基に,主として,1)重症及び軽傷の場合の差異,2)平常時と災害時の差異,について医療施設の選択傾向を分析し,3)医療施設側から見たボロノイ区域内選択率について分析した.その結果,1)医療施設の密集地域では,殆どの患者は病院を選択し,その選択は重症・軽傷の状況に依らないこと,2)医療施設の少ない地域でも8割程度がその規模に関わりなく病院を選択するが,こうした地域では,重症の場合には病院を,また軽傷の場合には診療所(外科系)を選択する傾向があり,3)いずれの場合にも,選択される病院は,徒歩限界の範囲内である.
Abstract:北淡町の地域社会を分析し,阪神・淡路大震災の被害状況,及び復興過程についてみた.震災前の北淡町は,昭和35年から急激に人口が減少し,最近はその減少率は緩やかになってきているが,止まってはいない.漁業は,これまで経営的にみても比較的順調に推移してきている.それを可能にしたのは,のり等の養殖漁業への切り替えが成功したことが考えられる.溜め池や港湾,道路などハード面の被害は,国や県等の支援により,この3年間でほぼ原状回復がなされている.
Abstract:調査の目的を,地域社会と住民生活の変容の2側面に絞ることとし,両面を把握できる立場の町内会長を調査対象とした.調査項目は,地域社会の側面に関しては,住宅,地域の宗教関連施設,集会所等の被害状況と修復の現状,地域経済の変化,町内会組織の変化等である.住民生活の側面に関しては,住宅の被害状況と現状,震災後の家族構成の変化,家族,親戚,近隣における人間関係の変化等である.結果の概要を示した.地区によりその社会および住民生活における変容の状況は,大きく異なることが明らかになった.
Abstract:対象は男性6例,女性2例,年齢は23歳〜71歳(平均48.5歳)で,追跡調査の結果,全員の生存を確認した.地震後救出される迄の時間は4〜23時間で,全例褐色尿,白血球増加,血液濃縮,代謝性アシドーシスが認められ,転送先での検査でCPKの異常高値がみられた.血液浄化療法は6例に施行され,血液透析14回が最高であった.挫滅部位は下肢が7例で4年後も疼痛・しびれが存在した.GHQ30による精神状況の調査では3例に問題点を持つとされ,また6例に睡眠障害がみられた.以上の通り,患者は4年後も機能的障害を残し,また精神的,社会的な課題も長期に残存する可能性があり,長期にわたるフォーローアップが重要と考えられた.
Abstract:シベリヤ・サハで,12回の産業を目的とした地下核爆発があった.同国自然保護省の依頼のもとに,その中の一つの爆発地点(K-4:地下560m,20kt,1978)周辺の環境及び住民の被曝調査を実施した.1998年時点で,爆心地とその周辺に,放射線的な異常は見られなかった.食肉も含めて,環境の放射線・放射能の測定値は正常であった.この結果はK-4での核爆発により発生した放射能が,厚い永久凍土に固定され,地表面への流出が生じにくいことを反映したものと考えられる.
Abstract:今日では世界中で広範に遠隔医療が実施されている.遠隔医療は,実験・研究の段階を越えて実際の医療の場で使われ始めている.遠隔医療には大きく分けて 1)中核的病院間での遠隔医療,2)病院と診療所間での遠隔医療,3)災害時や国際医療救援活動時等の医療の現場と病院間の遠隔医療の,三つの異なった形態のものが含まれている.各々の形態でどんな内容の遠隔医療が実施されているのか,どんな制約を受けているのか等,各形態の遠隔医療の特徴と現状を,デジタル通信による医療画像通信に絞って概観した.同時に,近年の情報技術,通信技術,とりわけコンピュータネットワーク,インターネットの進歩が遠隔医療にもたらした変革を説明し,遠隔医療の問題点と将来像を述べた.
Abstract:大規模災害では,被災者のみならず救援者も多様な強い精神的ストレスに曝される.救援者のストレスは,特にその役割機能に関連して生ずることが多い.これらのストレス対処がうまくなされなければ,救援者自身が精神的健康を損ね,二次的被災者となってしまいかねない.災害派遣活動時におけるストレスについて,被災者ストレスの理解とその対応,救援者ストレスの認識とその対策の両視点から,その概要を述べた.災害対処能力を更に向上するためには,このようなストレスに関する知識を普及していくことが必要である.
有毒ガス中毒健康調査・健康診断実施経過
Abstract:避難生活を開始して6ヵ月が経過した時点から24ヵ月後の時点迄に,避難住民の心理的苦悩を示す指標の多くは有意に改善していた.しかし,最も改善した時点でさえ,高得点者率は約57%であった.日本の一般住民を対象とした研究をみると,GHQ高得点者率は15〜25%であるという報告が多いことから考えても,避難住民の高得点者率が著しく高いまま持続していることは容易に指摘できる.
Abstract:1998年9月の高知水害による心理的影響を調査した.最も被害の大きかった地区より無作為抽出にて半数2,027世帯を選び,アンケートを送付した.送付時期は災害から4ヵ月あまりたった時点であった.調査内容は,Impact of Event Scale-Revised(IES-R)日本語版と被害状況であった.有効回答は大人953人(送付者の20.8%),子ども164人(同20.1%)であった.高齢者でIES-R得点が高く,性別では女性の方が高い傾向があった.大人では被害の程度が大きいほど得点が高かったが,子どもではそのような傾向はみられなかった.
Abstract:中毒災害に即応するためには,まず,中毒であることを認識しなければならない.中毒災害は繰り返されるので,ひとごとだと思わずに情報を収集して対応の参考にしておくことが大切である.原因毒物は一つとは限らないので,1種類の毒物が分析された段階で安心してはいけない.被害の軽減化のためには,除染システム,個人防護装備,解毒薬の備蓄が必要である.