日本は地震による災害の多い国である。数年前の阪神淡路大震災から、先日の鳥取県を襲った大規模な地震まで、大小様々な規模の地震が毎年、日本を襲う。それゆえ、災害が発生したとき、医療に携わるものとして何ができるかということは非常に重要な問題である。
災害時には病院においてどのような被害がもたらされるのだろうか。
まず、病院では建物の壁、柱などが損壊し、ガラスの破片が飛び散り2時災害の危険性がある。
第2に設備、備品類が倒壊や落下により破損する。ベットの移動や無影灯の落下などが起こる。またスプリンクラーやスチームの配管部分にひび割れが生じ、流水があちこちにおこる。給湯機の故障などによる2次災害が起こる。
第3にライフラインが損壊し、交通網・通信網が寸断され、大きな影響を被る。水道管の破損が長く回復しないし、暖房もスチーム用配管の破損の復旧が遅れ、なかなか機能しない。
以上のような破損が災害時に生じると考えられる。災害時には病院においてこのような被害が発生することを念頭におきながら、行動しなければならない。
では実際に災害が発生したとき、どのような活動が考えられるであろうか。
震災発生時にはまず患者、そして自らの身の安全をはかり、その後何が起こったのかを確認し、患者の安否の確認をするというプロセスが重要である。その際、何らかの怪我や火傷などを負った患者を迅速に応急手当を施す。また余震に備えて、患者の避難などを行わなければならない。
そして、平常時の何倍もの被災者の受診に加えて、入院患者の安否を確認する家族の問い合わせにも応じなければならない。また入院患者を重傷、中等傷、軽症、それぞれに集め、治療しやすいようにすることも必要である。
また、病院の職員、医師、看護婦、その他のスタッフ、全員がどのような状況にあるのか確認することが必要である。交通網の破損から帰宅できない、出勤できないスタッフも多い。病院全体にどれほどの職員が留まるのかを確認し、ベットや食料の確保などを行う。 また病院内部の人材をどのように生かすかだけでなく、ボランティアなどの人的資源をどのように活用してゆくかも重要である。
災害時にはこういった病院における活動のみならず、仮設住宅や避難所における被災者の健康管理活動も重要である。
特に小児や老人などは震災によって常に非日常的な状況に置かれており、それによる精神・身体に大きなダメージを負っている事が考えられる。また仮設住宅では震災以前に築いてきた人間関係とも遮断されるため、孤独に陥る家族が少なくない。
医師や看護婦はそういった状況も念頭におき、治療のみならず、様々な助言や手助けを行うことが必要であろう。
また、被災者、そして職員も震災による心的外傷の後遺症(PTSD)を負っていることを忘れてはならない。大きな震災によって恐怖を感じ、また日常が崩壊することで人間はこころに大きなダメージを被る。
そして、患者の心のケアも重要であるが、職員も震災による傷を負っており、場合によってはケアが必要なことも忘れてはならないのではないだろうか。
多数の在館者を避難させなければならない大規模な建物では、'安全区画'という考え方を基本に避難計画を立てるのが一般的である。
a. 患者が就寝中に出火すると避難開始までに時間がかかる。
上記のような特殊性を背景に次のような防災計画手法が奨励されてきた。(詳しくは別途記載)
*水平区画について
耐火構造の建物では建築基準法施行令により、1500u以内ごとに防火区画をもうけ
ることになっている。
各階を1500u居ないに納めて1階1区画帯で済ませることもできなくはないが、病
棟の場合、是非とも2区画帯以上に細分すべきである。階段や斜路を使わない水平避難ならば少ない人手でもどうにかなる。このためには、区画自体が防火防煙の点で完全なものでなければならず、さらにある程度の時間とどまることのできる安全な場所(バルコニーなど)が各区帯ごとに準備されていることが望ましい。
<治療>:対症療法・移植
(1) 急性放射線症(ARS)
(2) 晩発性放射線症
(2)緊急被曝医療ネットワークの現状と課題
国の防災基本計画原子力災害対策に基づき、放射線医学総合研究所(放医研)を中心に
緊急被曝医療に関するネットワークを設立(平成10年7月)
(A) 全国的な緊急被曝医療ネットワークの確立(Fig.1)
(2)死体検案支援対策本部の設置と派遣
(3)派遣可能者リストの作成
(4)死体検案の実施
(5)解剖への支援
(6)遺体の保存処置
また今後の災害について考えると、温暖化による影響が心配される。予測では、2080年までに海水面は44センチ上昇し、世界で30億人が住む沿岸地域に洪水が引き起こされる。内陸部では逆に旱魃が起こると考えられ、それらにより生じる資源などの枯渇が人為災害の原因となると予想されている。
建築学の目からみた病院防災
長谷見雄二:エマージェンシー・ナーシング 13: 1450-3, 2000
I.大規模な建物の避難計画について(火災を想定して)
II.病院防災計画の特殊性
b. 自力で避難できなかったり避難時間がかかる人が少なくない。(階段を降りるのが難しい患者も多い。)
c. 手術室、分娩室、ICU等では避難自体が不可能。
III.病院防災計画の問題点
防火区画とは出火室が火の海になるような高温になっても一定時間(普通壁ならば1時
間)延焼しない性能をもった壁・床・扉などで囲ってしまうという方法。東海村放射線高線量被ばく事故における緊急被ばく医療ネットワークの役割
田中秀治ほか:日本集団災害医学会誌 5: 11-6, 20001. 放射線障害
2. 緊急被曝医療ネットワーク
→ 高線量被曝に対する備え
(救急・集中治療医、血液骨髄移植医、熱傷専門医、放射線専門医)
(Table.1)
臓器 早期障害 晩期性障害 造血臓器 リンパ球・顆粒球減少、血小板減少、赤血球減少、免疫力低下、出血傾向 白血病、赤血球増多症、免疫障害 皮膚 紅斑、脱毛、びらん、潰瘍
色素沈着・脱落、皮膚萎縮、毛細血管拡張、皮下硬結、潰瘍、皮膚癌 生殖腺 精子減少、月経停止 性器萎縮、不妊 中枢神経系 脳浮腫 脳炎、脊椎炎 眼 睫毛脱落、結膜炎、角膜炎 白内障、緑内障 肺 肺炎 肺線維症 消化管 嘔吐、下痢、下血、しぶり腹 狭窄、閉塞、穿孔 膀胱 頻尿、排尿困難 膀胱萎縮 腎臓 腎炎 高血圧、腎不全 骨 発育障害、骨壊死、骨腫瘍
(Table.2) Relation of prodromal symptoms and exposured dose
1-2Gy
(軽症)2-4Gy
(中等症)4-6Gy
(重症)6-8Gy
(重態)>8Gy
(致死的)Vomiting <50%
2h-70-90%
1-2h100%
-1h100%
-30min100%
-10minDiarrhea (−) (−) <10%
3-8h
mild<10%
1-3h
heavy100%
1h
heavyConsciousness Normal Normal Normal Confusion Loss of conciousness Body temp.(℃) Normal Low grade fever Low grade fever High fever High fever
(Table.3) Radio sensitivity of various cells
1. lymphocyte, erythroblast, spermatocyte
2. myeloma cell, criptocyte, skin germablast
3. myelocyte, endothelial cell
4. osteoblast, osteoclast, chondroblast
5. osteocyte, gastric mucosa epithelial cell
6. parenchyma cell, fibroblast
7. fibrobrocyte, macrophage
8. myocyte, neuron死体検案(下)
西村明儒、吉岡敏治ほか編・集団災害医療マニュアル、へるす出版、東京、2000年、pp.68-75*死亡診断書(死体検案書)の意義
*阪神・淡路大震災での反省
*今後にむけての改善すべき点
*日本法医学会における死体検案体制
*検案体制の概略
*結 語
国際的災害活動および協力の実態
二宮宣文、エマージェンシー・ナーシング 13: 801-5, 2000【昨今の災害の状況】
人為災害:コソボ問題、東チモール問題、JCO臨界事故、日比谷線脱線事故【国際保険医療協力と国際災害医療協力】
【医疲援助に於ける情報支援システム】
【今後の展望】