東京地下鉄サリン事件(1995) |
目次: EMERGENCY CARE(エマージェンシー・ナーシング)、ER Magazine、ICUとCCU、JAPIC、Modern Media、医学のあゆみ、沖縄県立中部病院雑誌、看護、救急医学、クリニカルスタディ、外科診療、公衆衛生、呼吸、周産期医学、事例から学ぶ災害医療、診療録管理、精神医学、大規模災害と医療、中毒研究、治療、ナースデータ、日本医事新報、日本救急医学会関東地方会雑誌、日本職業・災害医学会会誌、日本集団災害医学会誌、日本法医学雑誌、プレホスピタル・ケア、放射線防護医療、保険診療、薬事、臨床透析
■EMERGENCY CARE(エマージェンシー・ナーシング)
■ER Magazine
■ICUとCCU
■JAPIC
■Modern Media
■医学のあゆみ
■沖縄県立中部病院雑誌
■救急医学
■クリニカルスタディ
■外科診療(37巻、1995年)
■公衆衛生
■呼吸
■周産期医学
■事例から学ぶ災害医療、南江堂、東京 ■診療録管理
■精神医学
■精神科治療学
■大規模災害と医療、日本救急医学会災害医療検討委員会・編, 東京,1996 ■中毒研究
■治療
■ナースデータ
■日本医事新報
■日本救急医学会関東地方会雑誌
■日本集団災害医学会誌
■日本職業・災害医学会会誌
■日本法医学雑誌
■プレホスピタル・ケア
■放射線防護医療
■保険診療
■薬事
■臨床透析
Abstract:東京地下鉄"サリン"事件発生後,比較的早期に東京消防庁が作成した医療機関リストに基づき,アンケート方式で調査を行い,東京都内の56医療機関に入院した691例の医療情報を回収した.患者属性,被災の状況,初診時のバイタルサイン,症候学,検査所見,治療内容,転帰等の医療情報を解析した.
Abstract:オウム関連の事件が発生した折り,著者等は複数の有機リン系化学兵器によ被害者の診療にあたる機会があった.これらの治療は通常の有機リン剤中毒とほぼ同一であるが,病歴では診断がつかず,縮瞳と血清コリンエステラーゼの著明な低値が診断の根拠となった.治療に有用な薬剤は,硫酸アトロピン,PAM,ジアゼパムであり,これらを投与しても呼吸管理を要する患者がいた.また診療にあたっては医療従事者の二次被曝に十分注意しなければならない.
Abstract:テロリズムがTVメディアを媒体として一般市民に与える精神的影響について文献的考察を行った.PTSD,テロリズム,暴力,TVをキーワードとして日米の文献を調査した.米国ではスリーマイル原発事故を契機にTVメディアの影響が研究され,特にオクラホマシティー爆弾事件,9.11テロなどのテロリズムにおいては,直接被害を受けていない一般市民がTVを通しての曝露によって影響を受けることが確認された.現在,TVメディアの影響は精神的被害の拡大と癒しの両面で注目され研究が続けられている.一方,日本では地下鉄サリン事件を契機に災害やテロリズムの直接被害者についての生理的,精神的被害に関する研究は行われているが,メディアを通しての一般市民への精神的影響について調査した文献はなかった.メディア情報を癒しにつなげるために,精神的影響についての予備知識,各地域の安全性などを報道するシステム作りも必要と考えられた。
Abstract:これ迄のPTSDに関連する知見をまとめると, 1)事件後早期の精神症状はサリン中毒による器質的要素を除外できないため検討が困難である 2)事件から6ヵ月後の時点ではPTSDの診断基準を満たす或いはPTSD評価尺度で高得点であった者が7.8〜26%と比較的高率であった 3)2年後の時点でPTSDの診断基準を満たす者2.1%,何らかのPTSD症状を呈していた者1割以上 4)PTSD症状関連の精神症状は遷延化する傾向もみられるといった点が挙げられる.
Abstract:今回の事件では外傷はなく,重傷者はごく少数で治療が単純であった。この事件に対する特別の対応体制が翌日の休日を含む48時間で概ね終了できたことも幸いであった。今回の報告にはないが,小児3名,妊婦5名も入院した。いずれも縮瞳が主体で小児1名を除いて翌日には退院した。その小児には右上下肢の筋緊張低下,喘息様症状を認めたが,1週間後には軽快退院した。妊婦1例は既に無事出産を終え,母児とも健康である。次のような対応の改善があげられる。(1)情報の収集・統合,指令伝達をより一層迅速,効果的にするため,はっきりとわかるように対策本部の設置を行うことが最重要であろう。(2)患者情報の把握と一般に対するその的確な広報,報道機関への対応の改善。(3)個々の患者や現場の医療関係者へ全体像を把握しやすくする情報の伝達。(4)医療関係者への二次災害予防のための情報伝達の徹底。(5)患者や現場の医療関係者への飲食物などの後方支援の中央化。(6)医療関係者間の通常の電話以外の情報伝達機器の導入.
Abstract:身体的異常を示したものは, 1)職種別では看護助手,看護婦,ボランティアに多かったが,これらは直接患者に接触している他に全員が女である.女ではサリンに対する感受性が高い可能性が考えられる. 2)治療に従事した場所別では,礼拝堂,集中治療室,回復室で身体的異常を示したものが多く,救急室では異常出現頻度は低かった. 3)今回の医療者の二次災害については,眼症状,頭痛等の身体的異常を示した者が多かったが,入院を必要とした者は1名であった.しかし補液,散瞳薬,PAM等を使用するような病状は示さず,軽症例が多く,何れも1〜2日で回復した.
Abstract:平成14年10月に,初めてテロによるサリン災害を想定した訓練を実施した.訓練中各エリアの検証班による評価から課題を明らかにした.訓練内容は模擬患者をトリアージし重症と軽症に分け,応急処置・除染・入院又は帰宅にいたる迄の訓練を実施した.訓練評価から,全体として,防護服着用により視界が妨げられ,診療行為に影響を及ぼすことから物品を使いやすく工夫する,声が通らないためコミュニケーションを図る工夫が必要,気温や環境に対する設備の見直し,重症患者の対応では,呼吸管理が必要なため,そのための人員の確保が必要,保温の工夫,軽症患者の対応では,シャワーの水温調節,案内表示の工夫,人員の確保の必要性があげられた。
Abstract:地下鉄サリン事件被災者における非顕性の神経行動障害の存在について,サリン中毒患者18名(男女各9名,平均31歳)を対象に検討した.被災当日の血清コリンエステラーゼ値は13〜131(平均72.1)IU/Lであった.これらの患者に対し事件後6〜8ヵ月時に,神経行動テスト,心的外傷後ストレス障害(PTSD)チェックリスト,大脳誘発電位(事象関連電位,視覚・聴覚誘導電位)測定と重心動揺検査を実施した.その結果,患者群では符号問題の得点が対照群より有意に低く,General Health Questionnaire,気分プロフィール検査(疲労)とPTSD得点が有意に高く,事象関連電位(P300)潜時と視覚誘発電位(P100)潜時が有意に遅延していた.重心動揺検査では女性の開眼時低周波性(0〜1Hz)動揺と面積の有意な増加がみられ,被災当日の血清コリンエステラーゼ値とは有意な相関を示した.地下鉄サリン事件被災者に高次中枢(精神運動・認知機能)と前庭,小脳に対するサリンの慢性・非顕性の影響とPTSD関連の精神症状の持続が示唆された。
Abstract:日本中毒情報センターで整備している中毒情報データベースは,作用,症状,治療法等15項目の見出しからなり,現在迄に,商品名,一般名,別名などを含めた化学製品や物質の名称数にして約40,000件の情報をデータベースとして整備し,10万種類に達する化学製品の情報を収集している,又,松本サリン事件以降,化学兵器についても情報整備を開始し,昨年,九州・沖縄サミットにおける医療対策の為に神経剤,びらん剤,催涙剤,窒息剤等6系列20種類の情報を完備した.今後の課題として,情報提供件数の倍増,情報収集と提供の自動化推進,解毒剤配送システムや分析ネットワーク等の整備,中毒医療の生涯教育,危機管理への関与があり,これらの実行には関連機関との情報の共有と,機能面で連携する必要がある.
Abstract:化学兵器は特に第一次世界大戦において大量使用された大量破壊兵器の一種であり,第一次世界大戦に見られるような大量使用事例はないものの,小規模な使用例は枚挙に暇のない状況である.化学兵器は比較的容易に製造・保有が可能なことから「貧者の核兵器」と呼ばれており,人体作用の観点から 1)神経剤, 2)びらん剤, 3)シアン化物(血液剤), 4)窒息剤, 5)無能力化剤, 6)催涙剤等がある.近年化学兵器の開発,生産等を禁止,廃棄を義務付ける化学兵器禁止条約が発効し,その実効性を検証する化学兵器禁止機関が設立,化学兵器の廃絶に大きく貢献しているが,一方において松本・地下鉄サリン事件に代表されるテロリストによる大量破壊兵器の保有・使用の蓋然性は非常に高まっており,新たなテロ対策が必要となっている.
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