厚生省の統計では震災による死者阪神5488人で、そのうちわけは以下のようになっている。
このうち救急の可能性と考えられるのは熱傷であるが、ほとんど生き 埋め状態のため、救出ができなくて死亡したと考えられる。
一般に死因の30%を占めるといわれる内蔵損傷1.8%と外傷性ショック 1.2%が計3%しかないのは、やはり救出が遅れ救出時にはすでに死亡していたため窒息,圧死の77%に組み入れられたためと考えられた。すなわち、 重傷例ほど救出に時間がかかったため、救出時にはすでに死亡していた症例が多かったと考えられた。
全身挫滅 0.8%,挫滅症候群 0.3%と少ないが、これも救出され、再還流がなされた時点で高カリウム血症となり、死亡した症例がふくまれていなかったためと考えられている。(逆に救命された症例は比較的軽症例か高カリウム血症に耐えられた若い元気な人たちであったと考えられる。)
死亡日時については、
死亡場所については、
一般に外傷患者の死亡の50%は、受傷直後の数分以内で、脳の脳幹、上部脊髄の損傷や心大血管損傷で、殆ど即死に近く救命の可能性はないとされている。死亡の30%は脳内出血や硬膜下出血,血気胸,脾破裂,肝損傷等の腹部臓器損傷,骨盤損傷,大腿骨折やこれらが組合わさったいわゆる多発外傷で、受傷後2時間以内いわゆるゴールデンタイムに止血を主とした手術を含む集中治療を開始しないと救命できないとされている。 2日から20日までの間に、全体の20%以下が死亡し、その成因は敗血症や肝腎症候群や今回問題となったクラッシュ症候群であった。
今回被災地の病院に対し、なぜもっと早く被災地以外の病院に送らなかったかという批判が救急医学会でもあったが、重傷の外傷の場合はゴールデンタイム以内に高度な治療を開始すべきであり、そのためには午前8時までに救出と搬送がなされなくてはならず、実際上不可能であった。また、被災地外の病院への搬送に関しても患者さんや家族は、家の近くに留まりたいという希望が強く、被災の程度が大きいほど強かったようである。こうした態度は近代的な治療という点でいくらかマイナスであったかもしれないが、こうした連帯感が被災地内での略奪,暴力,交通事故,等の2次災害の防止という点ではきわめて効果的で、世界に誇り得るのではないかと考えられた。
地下鉄サリン事件ではなはだしい情報混乱が起こったことはよく知られています。その原因を究明するために調査をしました。
方法は、各種の資料から事件被害者の診療をしたと思われる医療機関315施設に対するアンケート調査と、情報発信源に対する個別調査の2つを組みあわせました。アンケートの有効回答は210でした。
事件被害者を診療した210施設は医療機関としての規模や性格など多種多様でしたが、最初の患者さんが来院した時刻の分布をみると、ちょうど半数近くの106施設では午前11時以前に被害者診療が開始されています。この11時というのは、警視庁が記者会見でサリンと断定した時刻です。
最初に、治療をした医療機関がサリンを含むChE阻害薬中毒に対していかに無防備な状態であったかを、さらには急性中毒一般の治療にすら比較的経験の浅い施設が多く含まれていたかを示します。事前にサリン中毒の参考資料を施設内に保有していたと回答したのはわずか19施設、9%に過ぎませんでした。
次に、各施設ごとの事件当日の受診被害者数と、過去におけるその施設の急性中毒の治療経験を比較しました。治療経験を数値化するには、通常の中毒患者の治療経験を1〜5まで階層化し、また有機リン系の中毒の治療経験も5段階に分け、その2つの数値を足しあわせたものを用いました。分布図を作ると、この指数が2とか3程度の施設にも100人程度の患者が受診しており、経験のない施設でもかなり多くの患者を診療したことがわかります。
それでは本論に入ります。原因がサリン情報の入手先は、報道からという回答が圧倒的多数を占めて128施設を数え、警察から得たのが32施設、消防から26施設、信州大学から7施設、医師会から6施設、日本中毒情報センターから3施設、他の医療機関から8施設、さまざまな行政機関3施設、その他6施設となり、多くは報道に頼っていて、このように放送メデイアに依存せざるを得なかったという事実があります。
次に、治療に関する情報の発信源の第1位は日本中毒情報センターでした。また大学病院、この多くは関連施設に対する情報提供のようでしたが、重要な発信源となっていました。そのほか、行政、医師会などからも情報提供がありました。
最後に日本中毒情報センターが果たした役割を、受診側から分析してみました。ほぼ半数の施設が過去に日本中毒情報センターを利用した経験があり、ほぼ1/3の施設が事件当日に中毒情報センターにアクセスしていました。午前11時までに被害者診療を開始した106施設についてみると、過半数の61施設が過去に情報センターを利用したという経験を持ち、そのうちの32施設が事件当日にもアクセスしていました。一方、過去に情報センターを経験を持たないと回答した42施設のうちでは、9施設が事件当日にアクセスしていたに過ぎません。
以上をまとめると、一つは放送メディアへの依存度がきわめて高かったということです。しかし、その情報は、事件報道に偏っていて、医療機関、被害者へ向けての適切な情報提供をする機能には残念ながら欠けていたと言わざるを得ません。ごく当たり前の予想された結果が出たわけです。
こういった報道の独立性や公権力による情報操作という微妙な問題を潜り抜けながらマスメディアを利用する唯一の方法は、中毒情報に限れば、日本中毒情報センターではないだろうかと考えます。今回の調査でも、情報センターに対する医療従事者の信頼度は十分高いと確認されたわけです。しかし、それだけでは不十分で、やはり公権力から独立した、マスメディアと対等につきあえるだけの中毒情報センターができなければ、そういうことも不可能だと思われる。
もう1つは、医療機関が個別に平常の情報回路を使って情報収集に努めたという点を評価しなければなりません。マスメディアや、いわゆる当局の情報が今回のように機能しなかった場合、あるいは誤った情報が伝えられた場合には、それを修正する補完手段がこういったネットワークですから、多種多様であって、かつ強力であるほどよいというのが結論です。
旱魃災害を他の自然災害と比較すると、重症外傷は少ないが伝染病の危険性が高
く、食糧不足と人口の移動は必ず出現し、長期化・大規模化する傾向にある。
現在最も旱魃を受けやすいとされているアフリカ大陸を例にとると、低栄養状態
が日常から存在し、公衆衛生の概念も皆無に等しい開発途上国である。これらの
国々では雨だけに依存する農業を営んでおり、降雨量の減少により収穫量の激減
する大麦・小麦・豆類・小玉葱等が主な農作物である。極度の人口増加や内戦な
どの治安上の問題によって、食糧不足や食料生産の低下が生じることなども旱魃
の影響を受けやすく、飢餓への進行の促進と疾病の蔓延を招き、旱魃災害が長期
的な被害をもたらす一因となっている。又、雨季の存在は被災地にとっては恵み
の雨であるが、疾病構造が変化したり、川の増水により交通が遮断され、食料・
衣料品などの物資の補給が断たれることもあるので、十分留意する必要がある。
火災による有毒ガスはCO, CO2, HCN, HCl, アンモニア、窒素酸化物、ホルムアルデヒド、硫化水素であるが、死因として重要なのはCO, HCN, HClである。これら有毒ガスの生成量は加熱温度が高いほど、また酸素供給量が少ないほど多い。
COは肺胞より血中へ入り、CO-Hbを形成、組織に運搬される酸化ヘモグロビンの量が経る。
HCNは肺胞、皮膚、粘膜より吸収され、cytotoxic hypoxiaの状態となり急性中毒に陥る。
またinhalation injuryが疑われる時には、予防的な気管内挿管を考慮する必要がある。地下鉄事件における中毒情報授受の実態調査
白川洋一、中毒研究 58-62, 1997(担当:大石)旱魃
山口孝治、災害医療ハンドブック、医学書院、東京、1996年、p.30-5(担当:角田)旱魃とは
疫学
災害に伴う傷病の特徴
医療対策
まとめ
大火災
山口孝治、災害医療ハンドブック、医学書院、東京、1996年、p.54-8(担当:山本)1、疫学
2、災害による傷病の特徴
3、医療対策