1995年1月7日に起こった阪神・淡路大震災から2年になる。医療救護活動に出動 したりあるいは復興援助に参加した行政,日本医師会,兵庫県他各県の医師会や大学の援 助チーム等より,あらゆる角度から,この大震災の問題点,反省点が検討され,今後の対 策が述べられている。これらの多くは,当時の現場の状況報告あるいは災害に対する現在 の各県の備えの状態,またはその両者を比較しそのギャップから問題提起するなど,今後 のとるべき対策を示唆または少し具体的に述べられているタイプのものであった。そして これらの報告書の出版は震災後約1年たった頃が最も多かった。震災から2年目を迎える 時に,以下に示すマニュアルが作成された。
マニュアル作成の経緯は平成7年度に東京都災害医療運営連絡会が,幹事会とトリアージタッグ関係機関会議を含め計11回開催され,そこでの合意を得て1196年3月に「 東京都統一トリアージタッグ」が作成され,ほぼ時を同じくして「災害時医療救護活動マ ニュアル」が作成された。さらに平成8年度には,同議会と「トリアージ研修テキスト作 成会議」「検視・検案活動などに関する検討会」を含め計10回が現在まで〔1996年 9月まで)に,この種の会議としては精力的にかつ異例のスピードで開催され,これらを 通して1996年8月に「病院における防災訓練マニュアル」と「病院の施設・設備自己 点検チェックリスト」および都民向けの「災害時の応急手当」を作成し,1996年9月 には,「災害時医療救護活動とトリアージ」を医療救護班用と医療機関用にわけて作成し た。さらに1996年11月には「医療救護マニュアル繼謗s町村縺v,1997年3月 には「検視・検案活動に関する共通の指針」の他「避難所衛生管理マニュアル」,「歯科 医療救護活動マニュアル」が出来る予定で(1996年12月現在),またこれらに伴っ て事務の面では災害時の備蓄医薬品の見直しや,災害時後方医療設備の追加指定などが予 定されており,一層の災害医療対策の充実がはかられることになる。今まで述べた各マニ ュアルについて個々に少し説明する。
災害時医療救護活動マニュアルは,概ね震度6以上の地震などによる大規模災害が発生 した場合の標準的な医療救護活動を示したもので,地域事情等により個別にあったものを 造る基準となるものであり,この後出された各マニュアルの基本となるものである。災害 時の医療救護活動の流れに始まり,医療救護班の編成,救護所の設置,医薬品等の備蓄状 況,各機関の役割分担等の説明さらに被災地内と被災地外に分けてそれぞれの医療救護班 と後方医療機関の活動の指針を示し,最終章でトリア−ジについて述べてある。さらに資 料として災害時の関係機関等の情報を掲載した2次医療圏ごとの地図もついている。
病院における防災訓練マニュアルは,都内の病院の防災訓練に関わる現状を踏まえ,病 院の取るべき処置,留意点について述べ,標準的な訓練事項を示してある。特に病院には 災害時に2つの役割,すなわち,在院患者の安全確保と新たな負傷者を受け入れるための 病院機能の継続とスペ繝Xの確保といったことを主眼に書いてある。
病院の施設・設備自己点検チェックリストは,概ね200床規模の病院を想定して作成 した標準的なチェック事項を示したもので,現在行われている法定点検を補完する立場で 病院の職員が自ら点検する際のポイント等を示している。
災害時の応急手当は都民向けとして作成した地震への心構え編として,”意識がなかっ たら”等の具体的な状況から,それぞれに対応した応急手当をイラストで示したもので, 今までと違うのは,クラッシュ・シンドロームやトリアージについての説明をのせ,理解 を深めてもらうよう配慮がなされている。
災害時医療救護活動とトリアージは,初めに書いた東京が全国に先駆けて統一し作成し たトリアージタッグの使用に関して使う側の考え方の統一を目的に,原則,実施要領,注 意事項等を示したもので,それぞれ「災害時医療救護活動マニュアル」の被災地内・外の 医療救護班活動マニュアルの部分を抜粋し,これにトリアージの部分をさらに細かく解説 してあり,研修用テキストとして作ったものである。
1995年1月17日未明に発生した阪神・淡路大震災の経験を踏まえて、厚生省薬務局は、1995年7月、「大規模災害時の医薬品等配給システム検討会」を設置した。検討会では、今回の阪神・淡路大震災において、行政、製薬、卸業界、薬剤師会などが実際に医薬品供給活動に参加して得た実体験を踏まえて報告書を制作することにした。したがって報告書は主としてこれらの関係者の役割の明確化と連携、ネットワークづくりを中心としたものになっている・なお報告書の性格は、今回の地震時の体験報告であると同時に大震災に備えた医薬品供給マニュアルとしての性格も持たせることとした。
B、 災害に備えた事前対策
医薬品の備蓄・供給システム
渡辺 徹、臨床外科 51 (13): 1551-5, 1996(担当:福富)
『大規模災害時の医薬品等供給システム検討会報告書』の内容