発展途上国での感染症対策:マラリア・下痢症

資源の乏しく、低所得者も数多くいる発展途上国では、先進国以上に、「健康の社会的な決定要因」の役割が格段に高くなります。バングラデッシュやネパールの都市部をフィールドとして、発展途上国における社会環境・地域環境と健康との関係を明らかにする研究を続けています。

これまでの研究成果

  • バングラデッシュ・ダッカ市内の10スラム(低所得コミュニティによる繰り返し縦断調査:雨期の前・中・後の3回にわたり300世帯を追跡調査した研究により、排水施設がないこと季節に関係なく浸水しがちな地域に住んでいること、食事の準備中や食前・トイレ後に手洗いしない、といった衛生行動などが、小児の下痢発生による健康負荷と関係していることがわかりました。利用できる資源(援助金やマンパワー)を勘案しつつ、これらの対策を行っていくことが大切と考えられました(文献
  • バングラデッシュは洪水や浸水がとても起きやすく、治水が過大となっています。山梨大学工学部では、コンピュータシミュレーション技術により、ダッカ市内の浸水予測システムの開発に取り組んでいます。予測された浸水の水位の地理分布と2007年のコレラ流行時における下痢発生の地理分布データとを統計的に比較したところ、浸水の水位が高い方が下痢発生が多いことがわかり、シミュレーションの精度の高さが一部証明されました(文献

関連リンク

関連文献リスト

  • Ahsan Mollah K, Nishida K, Kondo N, Yamagata Z. Children’s Health Deficits due to Diarrhoea: Effects of Water Supply and Sanitation Systems in Slums with Different Water Logging Conditions. Journal of Water and Environment Technology 2009;7(4):277-291.
    FULL TEXT: J-STAGE
  • 橋本雅和, 末次忠司, 砂田憲吾, 市川温, 近藤尚己, 西田継. バングラデシュ・ダッカにおける氾濫解析のための主要氾濫因子に対する感度分析に関する研究. 河川技術論文集 2012;18:487-492.