日本実験動物医学専門医の役割概要説明文書
1. 本文書の概要
1) 役割概要説明文書は6分野(領域)から構成される。
第1分野 | 自然発生及び実験誘発性疾患並びに兆候の管理 |
第2分野 | 疼痛及び苦痛の管理 |
第3分野 | 研究 |
第4分野 | 動物のケア |
第5分野 | 関連法令及び各種指針の遵守 |
第6分野 | 教育 |
2) 各分野は実験動物医学専門医としての業務及び知識のテーマから構成される。
知識 | |
獣医学教育プログラム受講中 | 主に在学中に獲得する知識で、一部は獣医師国家試験の必須科目(実験等物学)を含む |
実験動物医学専門医認定時 | 実験動物医学専門医として必要とする知識で、大半は獲得済みである |
認定後(業務又は継続教育の場で) | 通常は、優先的に獲得する知識である |
2. 各分野における職務及び知識のテーマ
第1分野: 自然発生及び実験誘発性疾患並びに兆候の管理
知識 | |
獣医学教育プログラム受講中 | K1. 診断法 |
a. 身体検査(理学診療) | |
b. 臨床病理学 | |
c. 他の診断法 | |
K2. 診断的及び治療的手術に関連する手術手技 | |
K3. 免疫生物学 | |
K4. 栄養学:欠損症又は毒性に重点を置く | |
K5. 解剖学:臨床医学又は実験医学において、重要な特徴に重点を置く | |
K6. 生理学:正常値及び特性、代謝の違い、又は誘発性疾患の代謝、生殖生理学及び臨床的に明らかな生理学的特徴に重点を置く | |
K7. 寄生虫学:コロニーとして樹立可能な寄生虫疾患及び人獣共通感染症の寄生虫疾患に重点を置く | |
K8. 細菌学:臨床的に重要な生命体(微生物)、生理学的、生化学的及び/又は免疫学的変化に起因する不顕性感染の生命体、実験的誘発性感染症及び予期せぬ感染症の生命体、前述した生命体の採取及び培養技術に重点を置く | |
K9. 解剖病理学:自然発生及び実験誘発性疾患の病因(発症機序)、代表的な全身的及び組織病理学的病変、並びに関連する解剖病理学的な手技を含む | |
K10. 薬理学:自然発生又は誘発性疾患を治療する薬剤、並びに誘発性疾患に使用される薬剤に重点を置く | |
実験動物医学専門医認定時 | K11. 伝染病学:誘発性疾患に対する種特異的感受性を含む |
K12. 予防医学 | |
K13. 診断手法 | |
a. 種特異的行動評価 | |
b. 血清学検査、細胞学検査及び分子診断検査並びに正確な採取手技 | |
K14. 遺伝学:自然発生及び実験的誘発性疾患の抑制及び治療、疾患の素因及び遺伝様式に重点を置く |
第2 分野: 疼痛及び苦痛の管理
知識 | |
獣医学教育プログラム受講中 | K1. 診断法 |
a. 身体検査(理学診療) | |
b. 臨床病理学 | |
c. 他の診断法 | |
K2. 診断的及び治療的手術に関連する手術手技 | |
K3. 免疫生物学 | |
K4. 栄養学:欠損症又は毒性に重点を置く | |
K5. 解剖学:臨床医学又は実験医学において、重要な特徴に重点を置く | |
K6. 生理学:正常値及び特性、代謝の違い、又は誘発性疾患の代謝、生殖生理学及び臨床的に明らかな生理学的特徴に重点を置く | |
K7. 寄生虫学:コロニーとして樹立可能な寄生虫疾患及び人獣共通感染症の寄生虫疾患に重点を置く | |
K8. 細菌学:臨床的に重要な生命体(微生物)、生理学的、生化学的及び/又は免疫学的変化に起因する不顕性感染の生命体、実験的誘発性感染症及び予期せぬ感染症の生命体、前述した生命体の採取及び培養技術に重点を置く | |
K9. 解剖病理学:自然発生及び実験誘発性疾患の病因(発症機序)、代表的な全身的及び組織病理学的病変、並びに関連する解剖病理学的な手技を含む | |
K10. 薬理学:自然発生又は誘発性疾患を治療する薬剤、並びに誘発性疾患に使用される薬剤に重点を置く | |
実験動物医学専門医認定時 | K11. 伝染病学:誘発性疾患に対する種特異的感受性を含む |
K12. 予防医学 | |
K13. 診断手法 | |
a. 種特異的行動評価 | |
b. 血清学検査、細胞学検査及び分子診断検査並びに正確な採取手技 | |
K14. 遺伝学:自然発生及び実験的誘発性疾患の抑制及び治療、疾患の素因及び遺伝様式に重点を置く |
第3分野: 研究
職務(任務) | 知識 | |
獣医学教育プログラム受講中 | 該当なし | K1. 研究方法及び装置 |
K2. 実験デザイン及び統計の原則:科学的方法を含む | ||
K3. 動物モデル:研究に関する標準的生物学を含む | ||
K4. 動物モデルの特性評価 | ||
K5. 遺伝学及び命名法 | ||
K6. 遺伝子組み換え/ 遺伝子工学技術:分子生物学技術の応用を含む | ||
実験動物医学専門医認定時 | T1. 研究支援を促進する又は提供する | K7. 生物学的方法論の手技 |
T2. 研究に関連する事項を研究者に助言する及びコンサルを行う | K8. ノトバイオティックス | |
T3. 研究を企画する及び実施する | K9. 実験的外科手技及び器具 | |
K10. 情報資源 | ||
K11. サイエンスライティング | ||
K12. 代替法の利用、使用動物数の削減及び苦痛の軽減に関する手技 | ||
K13. 研究関連の懸念事項を交換するための有効な方法 | ||
K14. 外科手術時の無菌的要件 | ||
K15. ゲノミクス、メタボロミクス、プロテオミクス | ||
認定後(業務又は継続教育の場で) | T4. 研究プロジェクトにおいて他の科学者と共同研究を行う | K16. 助成金申請、審査及び資金調達メカニズム |
第4 分野: 動物のケア
職務(任務) | 知識 | |
獣医学教育プログラム受講中 | 該当なし | K1. 種特異的な飼育 |
K2. 滅菌法、汚物処理法及び汚染除去法 | ||
K3. 繁殖コロニーの管理 | ||
K4. 動物個体識別システム | ||
K5. 害虫駆除 | ||
K6. 実験動物における生理的変化の環境的な要因及び研究への影響 | ||
K7. 環境モニタリング | ||
K8. 飲水及び給餌 | ||
実験動物医学専門医認定時 | T1. 動物飼育プログラムを開発する | K9. 環境エンリッチメント、種に適した行動的及び心理社会的必要性:適切な社会的ペア又はグループを含む |
T2. 動物飼育プログラムの間接的管理/監視を行う又は提供する | K10. 動物ケアに関連した器具及び消耗品のための品質保証の手技 | |
T3. 実験動物施設の間接的管理/監視を行う又は提供する | K11. 動物調達の検討事項 | |
K12. 無菌バリア、歩哨動物(おとり動物)の使用及び監視プログラムを用いた無菌コロニーの維持 | ||
K13. 封じ込め施設 | ||
認定後(業務又は継続教育の場で) | T4. 実験動物施設を設計する | K14. 動物ケア関連器具及び消耗品の選定基準 |
K15. 財務運営:動物施設管理と関係がある予算及び財務問題に関連する場合 | ||
K16. 人材資源管理:動物のケアと使用に関するプログラムの運用に関連する場合 | ||
K17. 災害対策 | ||
K18. 設備設計、配置及び構造 | ||
K19. 機械、電気及び配管システム | ||
K20. 廃棄物管理 | ||
K21. 飼育システム |
第5 分野: 関連法令及び各種指針の遵守
職務(任務) | 知識 | |
獣医学教育プログラム受講中 | 該当なし | K1. 法律、規制、方針及び基準 |
a. 医薬品医療機器等法 | ||
b. 動物の愛護及び管理に関する法律 | ||
c. 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律 | ||
d. 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律 | ||
e. 麻薬及び向精神薬取締法 | ||
f. 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 | ||
g. 家畜伝染病予防法 | ||
h. 化製場等に関する法律 | ||
i. 狂犬病予防法 | ||
j. 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律 | ||
k. 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律 | ||
l. 労働安全衛生法 | ||
m. 農薬取締法 | ||
n. 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 | ||
実験動物医学専門医認定時 | T1. 直接又は委譲された選任獣医師の責任を実行する | K2. 法律、規制、方針及び基準 |
T2. 実験動物の人道的ケア及び使用を提唱する | a. 非臨床試験の信頼性を確保するための基準 (GLP) | |
T3. 労働安全衛生プログラムに助言する | K3. 国際法、規制、方針及び基準 | |
T4. 動物研究プログラムの生物学的、化学的及び放射線ハザードに関して助言する | a. 実験動物の管理と使用に関する指針 (ILAR/NRC) | |
T5. 動物実験委員会のメンバーとしての役目を果たす | b. 米国獣医学会動物の安楽死指針 (AVMA) | |
T6. 動物実験計画書を審査し、研究者及び動物実験委員会に助言する | K4. 動物実験委員会の役割及び機能 | |
K5. 動物実験計画書の審査 | ||
認定後(業務又は継続教育の場で) | 該当なし | K6. 国際法、規制、方針及び基準 |
a. 動物福祉法、米国農務省連邦規則集、動物ケアに関する政策 | ||
b. 健康科学推進法、実験動物の人道的取り扱いと使用に関する公衆衛生局方針、米国国立衛生研究所実験動物福祉局解釈ガイドライン | ||
c. 米国疾病予防管理センター・米国国立衛生研究所の微生物学・医学実験室のバイオセーフティ | ||
d. 絶滅のおそれのある動物種の保護に関する法律:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約) | ||
e. 農業研究及び教育における家畜のケアと取り扱いに関するガイド(Agガイド) | ||
f. 生きた動物規則(IATA:国際航空輸送協会) | ||
g. 米国農務省・米国疾病予防管理センターの動物輸入規制 | ||
h. 米国国立衛生研究所の組換えDNAガイドライン及びバイオテクノロジー:バイオテクノロジー事務局 | ||
i. 実験動物の使用と管理に関する労働安全衛生指針(ILAR/NRC) | ||
j. 非ヒト霊長類の使用と管理に関する労働安全衛生指針 | ||
k. 他の諸国又は地域(欧州連合指令) | ||
K7. 施設査察及びプログラム審査 | ||
K8. 労働安全衛生 | ||
K9. 施設内バイオセイフティ委員会(IBC)の役割及び機能 | ||
K10. AAALAC インターナショナルの役割及び機能 | ||
K11. 研究の責任のある研究の実施 |
第6 分野: 教育
職務(任務) | 知識 | |
獣医学教育プログラム受講中 | 該当なし | K1. 動物の使用を伴う社会問題 |
a. 動物の使用に関する哲学及び倫理:動物研究の歴史及び価値 | ||
実験動物医学専門医認定時 | T1. 動物のケア及び使用に関する人材を教育する | K2. 教育的資源 |
T2. 実験動物医学における現状の知識及び継続する力量を維持する | K3. 認定プログラム (例えば、日本実験動物医学専門医の認定) | |
K4. 動物の使用を伴う社会問題 | ||
a. 実験動物医学及び動物研究に関連する及び/又は支援的な組織 (例えば、日本実験動物学会、日本獣医学会、日本実験動物医学会、日本動物実験代替法学会、研究用動物資源協会) | ||
b. 動物実験に反対する組織 (例えば、動物実験廃止・全国ネットワーク、地球生物会議、動物の倫理的扱いを求める人々の会、米国人道協会) :該当組織の哲学及び反対戦略を含む | ||
認定後(業務又は継続教育の場で) | T3. 教育機関での教育及び/又は実験動物レジデンスプログラムを提供する | 該当なし |
T4. 公的教育プログラム以外の場で、実験動物医学に関心を持つ者、又は関与している者に対して指導する | ||
T5. 動物のケア及び使用に関する地域への働きかけを行う |
JALAS:日本実験動物学会; JSVS: 日本獣医学会; JALAM: 日本実験動物医学会; JSAAE: 日本動物実験代替法学会; ILAR:実験動物資源局; AVA-Net: 動物実験廃止・全国ネットワーク; ALIVE: 地球生物会議; PETA:動物の倫理的扱いを求める人々の会; HSUS:米国動物愛護協会
実験動物の種カテゴリー
推奨される実験動物の種は、一次的及び二次的カテゴリーに分類される。以下がカテゴリーのリストである
カテゴリー | 種 |
一次的 | P1. マウス (学名Mus musculus) |
P2. ラット (学名Rattus norvegicus) | |
P3. ウサギ (学名Oryctolagus cuniculus) | |
P4. イヌ (学名Canis familiaris) | |
P5. ブタ (学名Sus scrofa) | |
P6. マカク (学名Macaca spp) | |
二次的 | S1. モルモット (学名Cavia porcellus) |
S2. シリアンハムスター (学名Mesocricetus auratus) | |
S3. スナネズミ (学名Meriones spp.) | |
S4. 他のゲッ歯類 | |
S5. ネコ (学名Felis domestica) | |
S6. フェレット (学名Mustela putorius furo) | |
S7. ヒツジ (学名Ovis aries) | |
S8. ヤギ (学名Capra hircus) | |
S9. ウシ (学名Bos taurus) | |
S10. ウマ (学名Equus caballus) | |
S11. リスザル (学名Saimiri sciureus) | |
S12. マーモセット/タマリン (学名Callitrichidae) | |
S13. その他の非ヒト霊長類 | |
S14. ニワトリ (学名Gallus domestica) | |
S15. 二ホンウズラ (学名Cotunix japonica) | |
S16. 他の鳥類 | |
S17. ゼブラフィッシュ (学名Danio rerio) | |
S18. コイ (学名Cyprinus carpio) | |
S19. 二ホンメダカ (学名Oryzias latipes) | |
S20. 他の魚類 | |
S21. アフリカツメガエル (学名Xenopus laevis and Xenopus tropicalis) | |
S22. 無脊椎動物:ショウジョウバエ及び線虫を含む |
Last Revised on Novenber 19, 2022.