身体への影響と対処
長期的な健康管理
更新・確認日:2022年3月30日
がんの治療が終了した後にも、何らかの健康問題を抱えて悩んでいる人は少なくありません。
晩期合併症の早期発見のために
がんの治療終了後、何年もたってからあらたに合併症が生じる可能性(晩期合併症)があります。 どのような合併症を起こす可能性があるかは、がんの種類だけでなく、治療の内容や治療を受けた年齢などによって異なります。そのため、自分がいつどのような治療を受けたか、どのような健康上のリスクをもっているのかを把握し、早期発見につとめることが大切です。治療を受けた医療機関で経過を見ていく場合や、市町村や職場などの一般健康診断を受ける場合などがありますが、いずれにしてもかかりつけ医を決め、定期的に健康状態をチェックすることが大切です。
晩期合併症の詳細については、医療者向けですが、以下の書籍を参考にするとよいでしょう。
『小児がん治療後の長期フォローアップガイド』
JCCG長期フォローアップ委員会長期フォローアップガイドライン作成ワーキンググループ編, クリニコ出版, 2021.
治療や検査などの記録のために
引っ越しなどのため、医療機関や主治医が変わることもあります。そのようなときに自分の医療情報を確認できなくなることがないよう、普段から自分自身で治療歴をまとめておくと良いでしょう。わからないことは主治医に確認し、治療サマリー(※1)を作成してもらうことも可能です。
(※1)治療サマリー:NPO法人日本小児がん研究グループ(JCCG)発行の治療サマリー(外部リンク)は、これまでどのような治療を受けたかを記載するものであり、医療者や家族と共有できる情報源になります。
治療歴を把握しておくと、初めて受診する医療機関でもこれまでの経過を自分で説明することができ、その後の診療がスムーズになります。自分の体調の変化に気づくためには、定期検査の結果を記録しておくことも大切です。受けた治療のリスクに応じて検査の種類や頻度が異なるため、今後計画されている定期検査の予定を記入したり、検査結果を記録したりするフォローアップ手帳など(※2)を活用することも自己管理に役立ちます。
(※2)フォローアップ手帳:日本小児白血病リンパ腫グループ(JPLSG)(現日本小児がん研究グループ:JCCG)の長期フォローアップ委員会が作成したフォローアップ手帳は、診断・治療内容や治療終了後の検診結果などを1冊にまとめて記録できます。この手帳に興味のある方は、医療者に問い合わせてみるとよいでしょう。また、一般社団法人日本造血細胞移植学会が作成した「造血細胞移植患者手帳」や国立がん研究センターがん対策情報センター編集による「わたしの療養手帳」などがあります。
健康的な生活を送るためには
がん経験の有無にかかわらず、規則正しい生活、バランスのとれた食事、適度な運動、ストレス発散などの日常的な心がけが体調を保つことにつながります。喫煙や過度の飲酒は控えましょう。また性感染症を予防するため、性行為の際はコンドームを使用し、不特定多数の人との性行為は避けましょう。自分の体調を正しく理解し、必要なときは無理をせず家族や友人、同僚に援助を求めることも健康管理において大切なことです。
参考文献
- Oeffinger KC, Mertens AC, Sklar CA, et al. Chronic health conditions in adult survivors of childhood cancer. The New England Journal of Medicine 2006; 355: 1572-1582.
- 日本小児がん研究グループ(ウェブサイト). 長期フォローアップについて(閲覧日2018年9月5日)
- 日本造血細胞移植学会(ウェブサイト). 患者さんの情報(閲覧日2018年9月5日)
- 国立がん研究センターがん情報サービス(ウェブサイト). がんになったら手にとるガイド(閲覧日2018年9月5日)