身体への影響と対処
性生活
更新・確認日:2022年3月30日
病気や治療によって、性欲、性感、オルガズム、勃起機能、射精機能など性行為に関連するものごとに影響が出ることがあります。影響は、一時的なことも、長期的に続いてしまうこともあります。15歳から39歳のがん経験者を対象としたアメリカの調査では、診断1年後に回答者の49%、2年後にも43%が、性に関連して何らかの悪影響があったと答えています。
性は私たちの暮らしの重要な部分ですが、病気や治療が似ていても、性的な変化の起こり方や、その変化が問題になるかどうかは、個人やカップルによっても大きく異なります。
治療の影響
治療による全身症状(倦怠感、吐き気、脱毛、筋力低下など)があると、性行為を楽しむ気持ちになれないことが多いでしょう。
男性の場合、骨盤内の手術や放射線療法の影響で、勃起不全や射精障害が起きることがあります。女性の場合、手術・放射線療法・化学療法・内分泌療法の影響で卵巣のはたらきが低下すると、更年期障害に似た症状(腟の潤いの低下、急なほてり、性交痛など)が出ることがあります。骨盤内(子宮・卵巣など)への放射線療法や造血幹細胞移植に伴う移植片対宿主病(GVHD)(移植の際の副作用・合併症(がん情報サービスへリンク))により、腟が狭くなったり癒着(ゆちゃく)(がん情報サービスへリンク) したりして、性交が難しくなることもあります。
化学療法などでからだの抵抗力が低下しているときには、感染を予防するために、一時的に性行為を避けたほうがいい時期があります。ただし、抵抗力が戻れば性行為は可能です。また、性行為でがんが進行することはありません。
妊よう性への影響については、当ウェブサイトの「恋人との付き合い・結婚・子どもを持つ力(妊よう性)」を参考にしてください。
医療者にも聞いてみましょう
あなたの治療が性行為に影響を及ぼすおそれがあるかどうか、医療者から説明を受けておくとよいでしょう。心配なのに医療者から説明がなければ、あなたのほうからざっくばらんに聞いてしまうのがコツです。性行為をしてもよいか、何か気を付けることがあるか、話しやすい医療者を選んで聞いてみるとよいでしょう。女性の性交痛をやわらげる水溶性の腟潤滑ゼリーは、ドラッグストアや通信販売で入手できます。放射線療法などで腟が狭くなることを予防する腟ダイレーターという医療器具もあります。男性の勃起障害にもさまざまな治療法があり、一般社団法人日本性機能学会/一般社団法人日本泌尿器学会から診療ガイドラインが公開されています。以下のウェブサイトを参考にするとよいでしょう。
気持ちが楽になる性行為のヒント
性行為は、からだだけではなく、カップルの関係や心理面にも影響されます。気持ちが楽になるヒントをいくつか挙げます。
- ゆっくり、無理せず始めよう
治療のあと、はじめて性行為をするときは、いきなり性交を試みるのではなく、やさしく抱き合うといったスキンシップから始めるとよいでしょう。 - 前のパターンにこだわらない
夜だけでなく、疲労がたまらない時間帯に性行為があってもよいでしょうし、着衣や体位なども、そのとき自分が楽なかたちにしましょう。 - 性行為にともなう苦痛を我慢するのはよそう
性行為にともなって痛みなどの苦痛があるなら、我慢せず相手に伝えるとともに、医療者に相談しましょう。相手の満足だけでなく、自分の満足も大事にしましょう。 - 暮らし全体を見直そう
毎日のペースに無理がないか、相手とゆっくりした時間を過ごせているか、暮らし全体を見直してみましょう。
あなたとパートナーにとってよい方法を一緒に考え、見つけていきましょう。
がん経験者に向けた以下のウェブサイトや書籍を参考にするとよいでしょう。
- 国立がん研究センターがん情報サービス「がんやがんの治療による性生活への影響」
- NPO法人キャンサーネットジャパン「もっと知ってほしい がんと性にまつわること」
- 『がん患者の“幸せな性”-あなたとパートナーのために』アメリカがん協会編, 高橋都・針間克己訳, 春秋社, 2007
出版社には在庫がありませんが、図書館にある場合もあります。
乳がんを経験した人は、以下のウェブサイトも参考にしてみてください。
参考文献
Wettergren L, Kent EE, Mitchell SA, et al. AYA HOPE Study Collaborative Group. Cancer negatively impacts on sexual function in adolescents and young adults: The AYA HOPE study. Psycho-Oncology 2017; 26: 1632-1639.