第99回
2013年12月24日

厚労科研 班研究を担当して

札幌医科大学法医学講座 特任講師
兵頭 秀樹先生

平成24年の厚労科研「医療機関外死亡における死後画像診断の実施に関する研究」を担当させていただき、死後画像診断(Ai)について改めて考える機会を得ましたので、この場をお借りして調査結果の一部をご紹介し、放射線科・法医学の両方を経験している者の考えを述べたいと思います。尚、分担研究者並びに研究協力者として御尽力いただきました多くの先生、特にガイドライン(案)作成でご協力をいただきました本会理事の飯野先生・塩谷先生・高橋先生・山本先生にはこの場をお借りして感謝申し上げます。

死後画像診断実施の全国調査から

平成24年11月~平成25年1月に全国378施設に調査票による調査を行い53.7%(病院/放射線関連162施設・法医学関連41施設)から回答を得ました。医療機関外死亡のご遺体受け入れ(救急搬入死亡例は除く)は既に1万体を超えて実施されており(東北 3585・関東2489・近畿1631・北海道1288・北陸855・中部757・九州381・中四国305)(図参照)、調査票が配布されなかった施設でも実施されていることから、院内/院外死亡ともに一定程度死後画像診断がルーチンワークとして実施されていることが明らかとなりました。調査票の自由記載欄には、画像診断のためのトレーニングに関する要望が多く寄せられ、検案/解剖実施医師と死後画像診断医師との役割分担や資格認定に関して何らかの公的認定制度の必要性について求められていました。将来像に関する設問では放射線科及び法医学から寄せられた意見がほぼ一致し、今後の制度設計で画像/検案/解剖をバランスよく取り入れたものを希望する意見が多く認められました。

図

死後画像診断

私は平成24年10月より現在の法医学講座に特任講師として勤務させていただいております。放射線科勤務時は、Aiは院内で亡くなった患者さんの画像を診る機会が多く、入院時~死亡時に至る一連の画像診断として“死亡時”画像診断という名称がしっくりいっておりました。法医学に移動後は、ご遺体の多くが検視を受けた後の搬入であり死後数日経過していることもあり“死後”画像診断と感じられました。私自身にとって両者を区別することの実務的な意味はなく、私が死後画像診断という名称を使用することについて一部から受ける批判は本質的な問題ではないと考えております。会員の皆様にもご理解・ご賛同をいただけますと幸いです。

学術的研究の必要性

Ai学会は専門分野の垣根を越え従来にない先進的な取り組みを進めている団体です。各会員の背景を尊重しながら建設的な意見が出せる組織として今後も存続していきたいと考えております。また、単なる行政サービスの一翼を担うのみならず学術的価値のある領域として情報発信を行ってゆくことも重要と考えております。会員の皆様にも引き続き学術研究に御尽力いただき、今後実施される多施設共同研究に際しては放射線・病理・救急・医療安全・法医学等多分野からの研究者が参加しAi学会がその場を提供できる環境作りが必要と考えております。

最後になりましたが、本年も厚労省班研究を担当させていただいており、そのなかで「死後画像診断のための診断ガイドライン」を策定予定です。会員の皆様のなかでご協力いただけます先生がいらっしゃいましたら、ご連絡頂戴できますと幸いです。皆様の積極的なご参加をお待ちしております。