第88回
2011年6月2日

Ai導入後臨床医の意識調査 - 救急科から

亀田総合病院 救命救急科
伊藤 憲佐先生

当院では死因究明を主体としてAiを院内システムとして導入する事を決定し、2009年3月より主としてCTを中心に運用を行っている。2011年02月までの2年間に救急科を経由する症例は64例であった。そこで救急科医師にAi導入前後で診療内容に変化があったかアンケート調査を行う事にした。幸い当院ではAiが撮影された症例が医療紛争になった例はないが、医療紛争とAiについての意識調査、救急科医師がAiに対して望む事を副項目として調査した。救急科所属医師を対象とし、無記名のアンケート調査を行った。調査項目は大きく1) Ai導入前後で診療内容に変化が生じたか 2) Aiは医療紛争に役立つか 3) 救急の立場からAiへの意見・望む事の3つとした。対象医師12名中、全員 (100%)から回答を得た。

1) 診療内容では、a.死亡診断書は「書きやすくなった」「やや書きやすくなった」の回答は11名 (91.7%)で、b.遺族説明、c.警察への説明は、いずれも「説明しやすくなった」「やや説明しやすくなった」と全員 (100%)が答えた。d.治療内容の検証については「検証しやすくなった」「やや検証しやすくなった」の回答が10名 (83.3%)であった。

2) 医療紛争についての質問では、a.紛争となりそうな場合に「役に立つ」「やや役に立つ」の回答は9名 (75.0%)で、b.防止となりうるかとの問いには「役に立つ」「やや役に立つ」の回答は8名 (66.7%)であった。c.発見・証拠保全・再発防止については「役に立つ」「やや役に立つ」の回答が11名 (91.7%)であった。

3)自由記載意見として・現在AiはCTで行っているが今後MRIを用いる時代が来るのか・解剖で直接的に死因を解明する場合とAiで間接的に死因を解明する場合に相違があるか・Ai読影の注意点や特徴的所見など初学者でも分かる簡単なまとめが欲しい・時間経過と共に屍体がどのように変化するか症例を集めて検討していただきたい・Aiと医療紛争についてはAiは防止にもなるが原因にもなり得ると思う・Aiと医療紛争についてはAiの情報と信頼性が確立されていないのでAiがあってもなくても変わらないと思う・夜間でもAiの読影をしていただければ助かる・CPAOA症例は夜間に多くなかなかその場では難しいので説明は最低限にしている・注意して活用していかないと思わぬ落とし穴に足をすくわれそう・症例を集めてより臨床応用が進むようお願いしたい、との回答が得られた。

診療内容については83.3%~100%の医師がAiを肯定的に評価し、医療紛争については66.7~91.7%の医師が役に立つと考えている事が分かった。またAiへの意見として信頼性・読影・死後変化の影響等が挙げられた。2005年のAi学会を中心とするアンケート調査結果では費用と人員不足が施行時の問題点として挙げられていた。施行費用については当院では、病院負担のため指摘する意見は出なかった。同様に実施する場合の人員不足についても問題として挙げられておらず、当院では何とか実施出来ていると思われた。自由記載での意見は現在のAiの問題点を指摘するものと思われた。対象者が当院救急科のみであり母集団が少ない点は今回の調査の限界と思われる。Aiを院内システムとして導入した当院での現状を報告した。

前回の全国調査から5年以上が経過したので、状況変化の有無を確認するために再度の全国調査を行ってはいかがであろうか。

※提言執筆の機会を与えて下さったAi学会の皆様、山本学会理事長に感謝致します※