群馬大学におけるAiセンター設立
群馬大学大学院医学系研究科・診断病理学教授、中島 孝(この提言がでる頃は静岡県立静岡がんセンター病理部長に変わっていることでしょう)
放射線部長から「CTが1台余るけど、病理でいらない?」と相談されたのは約2年前になる。そう言われても、置き場所もなく、運転資金の調達のメドもなく、動かす専門家もおらず、病理医のAiへの関心も今ほど高くなく、全てナイナイづくしで、「法医が一番使うだろうし、法医に貰ってもらったら?」と振ってしまった。振られた法医も当時はナイナイづくしで、結局、このCTの運命は宙に浮いたままになっていた。
ところが今年になって、急転直下、このCTの運命が決まることになる。それも「オートプシー・イメージングセンター設立」というおまけまで付いてきた。このセンター設立の経緯は「平成20年3月、群馬大学医学部附属病院での新中央棟の完成・移転に伴い、附属病院の画像診断機器が移転することになり、X線CTなどの現行機が廃棄処分される予定であったが、これらの機器は、年式がやや古いものの、基本的な解析能力については最新の機器と比較して殆ど遜色なく、教育・研究目的に使用する限りにおいては十分な性能を有しているため、「もったいない」という素直な発想を生かし、教育や研究目的にCT装置を転用することになった。」と書かれている。さらにその設立趣旨は「現代の画像診断用医療機器の進歩には目を見張るものがあり、診断精度は著しく向上し、先端医療には不可欠なものとなりました。このような最新の画像診断機器の持つ高い解像力と3次元表示への立体再構成能力は、多分野への転用が十分に可能であり、本センターは本学での医学教育と研究のみに限定することなく、県内外の教育・研究機関などを含め、地域一般に「開かれたセンター」として活動する。」とある。こうなると早いもので、場所も法医解剖室の隣に決まり、現在CTが設置されている建物が直ぐにでも取り壊される予定なので、追い立てられるようにして「オートプシー・イメージングセンター」建設が始まろうとしている。
既にお気づきのように、群馬大学の「オートプシー・イメージングセンター」は解剖学、法医学、病理学、放射線診断学が中心となり、「教育」という要素がかなり濃い。解剖学実習前に解剖献体のCT撮影を行い、CTイメージを参考にしながら、学生は解剖実習を行うことになる。よって、肉眼解剖学実習と画像診断教育の融合が可能になり、基礎医学教育と臨床医学教育に双方向性を持つ統合型医学教育の実現、すなわち医学教育の質の改善を、このセンターに託している。当然、Aiによる死因究明方法の研究や異常死体の死因特定に役立てる地域貢献も視野に入れている。
群馬大学で1台のCTの運命が宙に浮いていた2年間は、海堂尊氏のデビューと彼によるAi宣伝活動、さらに千葉大学における「Aiセンター」の活動開始等、Aiにとって大きな出来事が目白押しであった。このような出来事に触発され、群馬大学の「オートプシー・イメージングセンター」が今動きだそうとしている。