オートプシーイメージング ―ここ数年の動向―
2000年にオートプシーイメージングの概念が提唱されて後、2004年にオートプシーイメージング学会が設立された(1-3)。これにより、それまでは法医学、病理学、救命救急医学、放射線医学それぞれの領域で知られていたこと、施行されていたこと(4 -11)が、一つにまとまりだした。2006年オートプシーイメージング学会の調査は、日本の主要な救急病院の約9割が死後CTを施行していることを示した(12、13)。
2004年千葉大学法医学教室が検案に死後CTを導入し、従来の外表観察主体の検死または検案結果と2割の食い違いが生じることを示した(14)。これ以降国会でも、オートプシーイメージングを死因の究明に用いる提案がなされ、犯罪や事故の見逃しを最小限にするような検死のあり方について、議論された(15-18)。
2005年には千葉大学病院が大学病院としては初めてオートプシーイメージングをシステム化した(19、20)。現在、複数の大学病院、市中病院が、同様の活動を行っている(21、22、グーグルなどの検索サイトで‘オートプシーイメージング’‘autopsy imaging’‘死後CT’‘検視CT’‘検死CT’‘postmortem CT’‘PMCT’などの検索単語で検索すれば、他にも複数出てくる)。2007年には千葉大学病院が、オートプシーイメージングセンターを設立した(23)。
2007年には警察庁が、殺人や事故を自然死としてしまう誤認検視を防ぎ、死因を迅速に特定するため、検視に医療用CTを導入した(各警察が、CTを備えた医療機関と委託契約、経費の半額を警察庁が補助)(24)。2007年8月に公開された厚生労働省「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」の提言には、死後CTが盛り込まれている(25)。
日本のオートプシーイメージングと欧米を中心とするバーチャルオートプシーが目指しているものの一つ、画像診断を利用した低侵襲剖検システムの開発は、既に日本で特許が取得されている(26)。
引用文献
- メディカルトリビューン:オートプシー・イメージング ―死後にCT、MRI撮影― 剖検との併用で精密な死因解明が可能に.http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno7/3701/01hp/M3701201.htm
- メディカルトリビューン:第1回オートプシー・イメージング学会―臨床医学の発展に期待されるAi― http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno8/3806/06hp/M3806181.htm
- メディカルトリビューン:第2回オートプシー・イメージング学会―Ai導入が医療現場に与える影響―
- Takatsu A., et al.: The concept of the digital morgue as a 3D database. Legal Med. 1: 29-33, 1999.
- Takatsu A., et al.: High-demensional medical imaging and virtual reality techniques. Rechtsmedizin 17: 13-18, 2007.
- 尾崎 梓ほか:筑波科学博における観客と従業員の救急疾患およびその医療体制.日本医事新報No. 3244: 27-31,1986.
- 日本臨床検査専門医会ニュースNo.93:死者の主治医として、死後検査との関わり http://www.jaclap.org/JACLaP-NEWS/No.93.pdf
- 大橋教良:DOAの原因疾患の診断(死亡後CT撮影の有用性と問題点について).日本救急医学会関東地方会雑誌10:604-605,1989.
- 白川洋一ほか:交通外傷で急死した症例に対する死後全身CT撮影の意義.日救急医会誌7: 273-280,1996.
- メディカルトリビューン:オートプシー・イメージングとVirtopsy_が中東で邂逅 「第1回法医放射線医学の進歩に関する国際シンポジウム」に参加して http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno8/3819/19hp/M3819421.htm
- メディカルトリビューン:法医学関連の二つの国際学会に出席して 目を見張る「法医学領域への画像技術の応用」http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno8/3843/43hp/M3843481.htm
- メディカルトリビューン:第3回オートプシー・イメージング学会 ~全国救命救急センターアンケート~ 9割の施設が死後画像撮影の経験あり http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno9/3910/10hp/M3910141.htm
- Shiotani S., Hamabe Y., Ohashi N., Ezawa H.: The groud swell of postmortem computed tomography in Japan: the harbinger of widespread use of autopsy imaging? http://www.bmj.com/cgi/eletters/324/7351/1423
- メディカルトリビューン:検案に死後CTを導入―外表観察の限界を克服し、「真の死因」解明に貢献― http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno7/3723/23hp/M3723381.htm
- 衆議院会議録情報:検死、検案、司法解剖等に関する質問に対する答弁書
- http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a159104.htm
- 衆議院会議録情報:第162回国会法務委員会第8号 http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/162/0004/16203300004008c.html
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- 衆議院会議録情報:第166回国会法務委員会第19号(平成19年5月23日) http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/166/0004/16605230004019c.html
- メディカルトリビューン:千葉大学病院がAiをシステム化―死後画像診断導入で病理解剖の停滞打開へー http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno9/3904/04hp/M3904391.htm
- 千葉大学産学連携・知的財産機構:死後画像を基盤とした事業展開の提案 http://www.ccr.chiba-u.jp/sangakurenkei/kenkyuusyoukai/index_syoukai.html
- 札幌医大オートプシーイメージング研究グループ http://www.geocities.jp/sapmedradiology/Autopsy_Imaging/Ai_index.htm
- 地域医療再生プロジェクト http://www.medic.mie-u.ac.jp/project/web/business11.html
- Autopsy imaging (Ai) Center http://radiology.sakura.ne.jp/Ai/method.htm
- 中根憲一:我が国の検死制度―現状と課題―.http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/200702_673/067306.pdf
- 厚生労働省 第7回診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/08/s0810-6.html
- 科学技術振興機構研究成果展開総合データベース:非侵襲性剖検方法および装置(考案者:中田 力) http://jstore.jst.go.jp/cgi-bin/patent/ipc/pat/detail_pat.cgi?patid=10738