第53回
2007年9月3日

Aiセンター設立記

千葉大学医学部 放射線医学教室
山本 正二

2007年8月なんとかAiセンターの開設にこぎ着けました。但しセンターとは名ばかりで、新しい施設、設備などはなく、実際の窓口は放射線科の読影室の電話番号、担当は山本をはじめとして診断部の各先生方だけというような状態です。組織としてはまだまだよちよち歩きで、実際の組織としての方向もまだ定まらないというような状態です。確かに小さな一歩ですが、今後の死因究明制度の指針となるべき新たなる橋頭堡として、今後ともセンターの拡充を目指していこうと思います。

詳しくはホームページhttp://radiology.sakura.ne.jp/Ai/index.htmを参考にしていただきたいのですが、センターの当初の仕事は、千葉県下の各病院から千葉県医師会を通して病理解剖依頼がある症例について、病理解剖前に画像診断を実施することです。Ai学会に参加されている先生方は当然認識されている事と思いますが、病理解剖前に画像診断を行うことにより、解剖の精度がかなり上がり、またそのデータを死後画像の読影にフィードバックし、死因究明の画像診断の質的向上を図ることができます。この他に、千葉県医師会の理事と話し合いをすると、「ご遺族の心理として “体に傷を付ける解剖まではしたくはないが、画像検査ならしても良い”という事例がかなりあるのではないか、是非とも画像診断だけの項目も追加して欲しい」との要請がありました。臨床の主治医の当然の希望としてなぜ患者様が亡くなられたのか?死因を究明したいという欲求はあると思いますし、ご遺族としてもここまで病気が進行し、医師も全力を尽くして治療していただいたのだからと、口頭での説明だけでなく、客観的な画像を提示した上で説明されれば、納得し、ひいては医師及び病院との信頼関係も良好になるのではと考えられます。

厚労省の「診療行為 に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」を傍聴して感じることは、遺族の代表者も感情論で医師のつるし上げを行うのではなく、なぜ死亡したのかを客観的に、なおかつ公平、公正、中立的な立場で判断できる組織を作って欲しいという要求が上がっているということです。

今回のセンター設立に関してあえて、21条の法改正や不審死の定義についてはふれませんでした。現状で現在の設備を利用して、客観的な死因究明のフローチャートを確立するためにはどうすればよいのか?それを第一に考えました。私の立場は、放射線科の画像診断(但し今年度、法医学会の会員になりました)ですので、外科の先生が手術前に画像で病変を評価し、切除範囲を決定するのは当然だと思っていました。ですから、病理解剖前にも画像検査をするのは当然だと思います。現にご遺族の方々に解剖前に画像検査を実施する同意を得るために、検査内容の説明をすると、かえって“解剖前に画像検査をするのは当然なのではないのですか?もしかして今までやってなかったのですか?”などとかえって不思議がられ、画像検査を実施する事に関して異議を唱える方は一人もいませんでした。Aiセンターという名称に関しても、わかりにくいのではないかなどと意見がありましたが、こちらに関しても我々が予想している以上に一般の方々には認知されているようです。Autopsy imagingの意味だけでなく、all integrated(すべてを統合、融和した)という意味も込めたAiセンターが今後も発展していけばと考えています。今回のセンター設立に関しては、医学部長の徳久先生、放射線科伊東先生、各病理学教室の張ヶ谷先生、中谷先生、岸本先生、および法医学教室の岩瀬先生など内部の先生方、また千葉県医師会理事土居先生、千葉県健康福祉部医療整備課中村様など各施設の方々の協力が得られて初めて実現できました。ここに紙面(?)を借りてお礼を申し上げます。