理事就任のご挨拶
初めまして。
この度、オートプシー・イメージング学会の理事に就任しました座間総合病院放射線科の渡 潤(ワタリ ジュン)と申します。
私は1986年に日本医科大学を卒業後、放射線科医局に入局し現在に至るまで画像診断医として働いてまいりました。私がオートプシー・イメージングに興味を持つようになったのは2006年に上梓された海堂尊氏(江澤英史先生)の「チーム・バチスタの栄光」を読んでからです。もちろんそれまでも大学病院勤務時代に救命救急センターから依頼されたCPAOA症例に対し死亡確認前にCT検査を行い、読影することがあったので、ある程度は死因が判明することはわかっていましたが、この小説を読んで初めて自分の頭の中に死因究明に関わってみたいという欲求が湧いてきました。そして2008年当時、勤務していた海老名総合病院でCPA症例に対してAiを撮影する運用を確立し、実際にスタートさせました。
運用開始前に抱いていた「生体の読影はそれなりの件数をこなしていたので、慣れれば死後画像の読影にも対応できるだろう」という甘い考えは見事に裏切られ、当初は数日かかってやっと1つのレポートを完成させるという状況でした。これは死後画像には生前の病態、死因となった病態、死後変化が複雑に絡み合うため解釈に難渋するだけでなく、自身が主治医でないために生前にどのような治療や心肺蘇生措置が行われたかをカルテから読み込まなければならなかったからです。
その甲斐あって当初は年間数例しか依頼がありませんでしたが徐々に増え、現在に至るまで約700例のAiのほぼ全てを自身で読影し、今ではCPAOA症例のほぼ半数でAiを撮影、死因究明の一翼を担っていると考えています。
今後は学会の理事という立場からも後進への指導(と言うとおこがましいのですが少しでもAiに興味を持つように)、社会への啓蒙、ご遺族へのグリーフケア、災害時の身元究明におけるAiの活用などに力を注いでまいります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。