第123回
2017年2月1日

画像診断と病理診断

JCHO横浜中央病院
病理診断科 桂 義久先生

先日、ある症例の死後画像を撮影したあと病理解剖を行いました。
入院患者さんが急変しお亡くなりになった症例でした。
画像診断では主診断は肺塞栓症。
病理解剖でもしっかりした血栓の形成が右肺動脈にみられ主病変、副病変ともに臨床診断と画像診断、病理解剖の肉眼診断は合致しご遺族の方も納得して終了しました

病理解剖の一週間後ホルマリン固定された臓器を検索、確認していたところ画像診断では指摘できず、病理解剖の肉眼所見では気になってはいたのですが死因には直接の関係はないと判断しあまり言及していなかった病変が進行癌の病変であったことが判明しました。
幸いリンパ節の転移や他臓器への転移は確認できず原発臓器での進行癌でしたが。
ご遺族の方に連絡するとがん保険にも入っていたとのことでした。これから保険会社との交渉に入るようです。
今回の症例のように画像診断では指摘できなかった病変が病理解剖で新たに判明することは時々あります。

病院内で死亡した症例に限りますが、調べてみたところ、かなりの症例で相違が見られました。
どういう症例で相違が生じていたのでしょうか
死後時間、臓器、入院期間などいろいろな角度で検討しましたが特にこれといった傾向はみられません。
困っていたところ、ふと気がついた点がありました。
自分の所属している病院で死後画像診断を取り入れた頃は当然ながら入院患者さんで急変したり、入院期間が短く十分な検査ができなかったため臨床診断に疑いの文字が入っている症例、言い換えれば死亡診断書を自信をもって作成できない症例が、死後画像診断や病理解剖の対象となっていました。
このような症例では病変の部位(臓器)は合致していますが質的診断すなわち炎症性病変なのか腫瘍性病変なのか循環障害によるものかはたまた死後変化によるものかに関しては画像診断と病理解剖最終診断に相違が生じていました。
特に腫瘍性病変と炎症性病変での相違が目立つ印象です。
臨床診断も確定し、十分な検査の行われていた症例では病理診断と画像診断に相違はほとんどみられませんでした。
最近は死後画像診断の読影もかなり進んできて病理解剖所見との相違も少なくなってきていますが、病理解剖だけでも肉眼診断と組織学的検索を加えた最終診断との間で相違の生じることは今でも多々あります。
画像診断と病理診断で相違が生じるのも当然のことです。
臨床の現場では時間や人手、ご遺族の承諾などの問題で死後画像診断で死因が確定したら十分と考えている先生もいると思います。
現状ではまだまだ病理解剖にて確認しないといけない症例はかなりあります。
死後画像診断とともに病理解剖も行う必要性はかなりあると感じます。
病理解剖を行うことが死後画像診断の将来に繋がると考えているのですが、病理医の現状を見るとかなり難しいみたいです。

余談ですが入院患者さんの死亡診断書に腫瘍性病変の記載、特に進行性の癌の存在が記載され、それが生前指摘されていなかったら

それでがん保険がおりるようになったら

ご遺族のかたはお亡くなりになった患者さんの最後のプレゼントと感じるかもしれません