1. 症例の臨床経過と症状
- 経過: 45歳の女性。3か月前から自己流のダイエットを開始し、1か月前からは食事を数口しか食べず、多量のサプリメントを常用していました。
- 症状: 来院3日前から体動困難と失禁が出現し、2日前からは発語困難となりました。
2. 所見および検査結果
- 身体所見: 意識レベルはJCS I-3で、眼球運動の失調および注視時眼振が認められました。また、四肢に軽度の失調を呈していました。
- 画像検査(頭部MRI): FLAIR像にて、中脳水道周囲や視床内側部などの第三脳室周囲に異常な高信号域が認められます。
- 予想される検査結果: 血清ビタミンB1(チアミン)値の低下が強く疑われます。
3. 診断
- 診断名: ウェルニッケ(Wernicke)脳症。
- 判断の根拠: 極端な食事制限(ダイエット)を背景としたビタミンB1欠乏によるもので、本疾患の典型的な3徴である**「意識障害」「眼球運動障害(眼振)」「失調」**をすべて満たしています。
4. 治療の概要
- ビタミンB1の補充: 速やかにビタミンB1の投与を行います。
- その他の注意点:
- 診断を確定させるため、治療開始前にビタミンB1測定用の採血を行うことが重要です。
- アルコール多飲者が原因の場合は低マグネシウム血症を伴うことが多いため、マグネシウムの補充も考慮されます。
- 未治療の場合、10〜20%が死亡に至る、あるいは回復が困難なコルサコフ(Korsakoff)症候群(健忘、作話などを主症状とする後遺症)へ移行するリスクがあるため、早期の介入が不可欠です。
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