行政であれ、企業であれ、加害者はアスベストのプロで、こちらは素人です。加害者の責任を問い、適切な対応をさせるよう交渉に当たるには、アスベストについての専門知識がどうしても必要です。また、交渉が長引けば被害者の負担が大きくなります。個人で抱え込まず、なるべく早い時期に専門家のサポートを得ることが何よりも大事です。
■アスベストNPO
最新の情報を有し、迅速に適切な対応をしてくれるのは、なんといってもNPOです。一刻も早くNPOの支援を得ることが、成功の鍵といっても過言ではありません。
中皮腫・じん肺・アスベストセンターは、アスベスト飛散防止と被害者の救済を目的とするNPOです。
医師を含むアスベスト専門家の方たちが無償で支援してくださいました。
■行政のアスベスト担当部署
全自治体にアスベスト対策協議会があり、ホームページで情報を示し、相談を受けつけています。ほかにも、環境対策課など環境問題を扱う部署に相談してみるのも良いでしょう。
■弁護士
交渉が長びいたり、行き詰まったり、加害者の不愉快な対応で個人の交渉が困難になった場合、代理人として弁護士に交渉を依頼する方法があります。
被害を立証する根拠となるだけでなく、健康被害を予測する材料となりますので、あらゆる手がかりを保存しましょう。写真(建物、工事の看板、工事の様子など)、設計図、配布されたチラシ等、なんでも構いません。加害者や行政と交渉する際は、必ず担当者の名前を尋ね、内容は録音したり、メモに残すなどしましょう。
これらは時がたつと散逸しやすいので、折を見てコピーをとるとよいとおもいます。
もし、被害にあった人が他にもいるなら、一緒に活動することも検討しましょう。
こちらの人数が多ければ、相手は真剣に対応せざるを得ません。
仲間を得ることで、活動を分担できるので、個人の負担を軽減することが出来ます。
何よりも、同じ被害にあったもの同士で不安や怒りを分かち合えることは精神的に大きな支えになります。
アスベスト環境曝露の被害者は、ショック、怒り、将来の健康不安など、大きな心理的外傷を受けています。
心の傷は、加害者の不誠実な対応や、第3者からの何気ない一言で、さらに深くなっていきます。
交渉や活動で疲れが重なると、意見の違いなどから被害者同士の関係悪化にまで発展することがあります。
なるべく早い時期に、心理面でのプロの支援をうけることをお勧めします。
被害者が子どもである場合は、早急な対応が必要です。大人の論理や都合を押し付ければ、傷は深くなるばかりです。
大人でも子どもでも、最も大切なのは、そばに居て、聴いてあげることです。
どう感じたのか、どうして欲しいのか、「○○さんは、○○な気持ちだったんですね」と、受け止めてあげることです。
日本人は裁判を否定的に考えがちで、法に訴えることには消極的です。
しかし、逆に考えると、加害者にとっても、被告になるということは、大変なダメージなのです。
このダメージを利用して、交渉の切り札に使うことは可能です。
マスコミの参入は賛否両論あると思いますが、加害者が報道を恐れるのは事実です。交渉が行き詰まったり、火急な対応が必要な時の切り札としては有効です。
大人数で活動・交渉を行うメリットはすでにお話しましたが、人数が多くなると、今度は意見がまとまりにくくなることもあります。緊急の対応が必要なときなどは、同じ意見の人だけでNGOを作ると、動きやすくなります。
仲間割れではありません。活動しやすくするための、役割分担です。
意見の違いから被害者同士の関係が悪くならないための知恵ともいえます。