研究テーマ
当教室では喘息・COPD、肺癌、間質性肺疾患、呼吸器感染症、ARDSの病態制御などを目的とした研究をし、遺伝子や分子・細胞ベルでの解析によるトランスレーショナルリサーチから多施設共同大規模臨床研究まで、基礎と臨床研究をバランスよく実施しています。
1. 気道過分泌のメカニズム解析と制御に関する研究
COPDや気管支喘息のQOLや予後において、気道分泌制御は重要な課題です。気道分泌に関与するさまざまなシグナル伝達や転写因子などのメカニズムを明らかにし、それらを制御する最も有効な分子の発見を目指し研究しています。
2. Digital PCR を用いた感染症診断法の確立
汎用されている realtime PCR と比較し低いコピー数での定量的検出を可能とする digital PCR を用い、病原体の検出を感染病巣以外から採取した検体から検出・診断する方法の確立を目指しています。主に結核菌感染症での研究を行っていますが、他の病原体への応用も検討中です。
3. 新規吸入キャリアーを用いた呼吸器疾患制御の研究
気道炎症性疾患に対する吸入療法の発展は目覚ましい。現在、次世代の吸入治療の確立を目指して、気道粘膜免疫系を標的としてあらゆる呼吸器疾患の制御が可能なナノ・マイクロ粒子キャリアーの開発研究を動物モデルで行っています。
4. 閉塞性肺疾患におけるIL-17の機能解析
気管支喘息などの閉塞性肺疾患の症状、病状の悪化には気管支に存在する気管支平滑筋の働きが重要と考えられます。我々は気管支喘息で重要な役割を演じていると考えられているIL-17に注目し、直接気管支平滑筋の機能に関与する可能性を検討してきました。この機能が他の因子と相乗効果を持つことで喘息の重症化や、ステロイドに対する治療抵抗性への関与を検討しています。
5. 気道上皮細胞におけるマクロライド免疫調整作用とシグナル伝達の研究
ステロイドが炎症サイトカインを終始抑制するにもかかわらず、マクロライド系抗菌薬が、炎症性サイトカインを減少させるだけでなく増加させ調整し正常化することを報告しました。そのメカニズムの一端がERKの関与するシグナル伝達調整であることも併せて報告し、マクロライド免疫調整作用とシグナル伝達のさらなる研究を実施しています。
6. 喫煙習慣に伴う呼吸器病(COPD、肺癌等)の発症リスクと予後予測のための遺伝子診断 ―肺癌の個別化医療を可能とする迅速キット開発―
SmartAmp 法などの外来迅速キットが以下の項目で実用可能かどうかを理化学研究所と共同で検討しています。
発癌関連の EGFR・KRAS (肺腺癌の10%弱)・BRAF(肺腺癌の3%)・MDN2・ABCB1、肺癌の感受性に関する CYP2A6(ニコチン排泄)・ALDH2(アルデヒド脱水酸化酵素)、COPD合併肺癌に関連する NRF2・HO-1 など。
7. 肺癌予後予測因子の研究
肺癌患者において遠隔転移のコントロールは予後を規定する重要な因子です。転移活性と相関しうる血管新生関連蛋白を網羅的に解析するとともに、現在使用可能な血管新生阻害薬の選択に寄与するマーカーの研究を行っています。
8. 閉塞性肺疾患(喘息・COPD)におけるバイオマーカーの開発
喘息・COPDにおける様々なバイオマーカーを網羅的に探索しています。
9. 間質性肺炎増悪とARDSにおける予後予測因子の研究
間質性肺炎増悪・ARDSにおけるHSPなどの予後予測因子の研究を実施しています。
10. 次世代在宅酸素濃縮装置開発など医療機器イノベーションに関する研究
LTOT患者さんが酸素濃縮装置に求める機能について、「利便性、安心・安全性、エコロジー、デザイン・ブランド」の観点から研究し、患者さん目線のトランスポータブルタイプ酸素濃縮装置の改良に携わっています。我々は、産官学連携による呼吸器病学に係る医療機器のイノベーションを目指しています。
11. 肺癌、COPD、喘息を中心とした呼吸器病に関する多施設共同大規模臨床研究
横浜市大呼吸器病学教室の2附属病院と12の基幹病院を中心とした研究グループ (YCRG: Yokohama City University Respiratory & Research Group)は、肺癌・COPD・喘息・呼吸器感染症・間質性肺炎・ARDSの治療に関する多くの多施設共同大規模臨床研究を実施しています。