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長期留置型脳室ドレナージ

長期留置型脳室ドレナージ

long-term placement of ventricular drainage

頭皮から導出する脳室ドレナージ(外ドレナージ)は2週間以上留置すると髄膜炎(脳室炎)を引き起こす可能性が高くなります。ここに記載してあるのは数週間から数ヶ月の外ドレナージを必要とする場合に用いる手法です。

髄芽腫や胚細胞腫瘍やPNETなどの,悪性脳腫瘍の疑いがあるときに,V-Pシャントによる悪性腫瘍細胞の腹腔内転移を防ぐための代替法として用いられます。数週間以上の化学療法や放射線治療によって,髄液腔から腫瘍細胞が駆逐されれば,V-Pシャントへ入れ替えます。一方,腫瘍が縮小して閉塞性水頭症が改善されれば,この長期型ドレナージは抜去できます。

手術方法

通常のV-Pシャントシステムを使って,V-Pシャントと同じような手術をします。この手法を用いる時はMRIを頻回に撮影することが多いでしょうから,バルブ不全のトラブルを避けるために,MRIによって設定圧が変わらないシステムがいいでしょう。まれに,脳室内出血がある場合にはシャントシステムを用いないで,単純な脳室ドレナージ・チューブを入れるという方法もあります。
シャント・チューブは皮下を通して,胸部あるいは腹部から外部へ出します。胸部から導出する時も腹部から導出する時も同じなのですが,皮下を出す直前の①の位置で,チューブの周りに薄いダクロン・フェルト(ポリエステル繊維ならなんでもいいです)を巻いてナイロン糸で縛っておきます。これはチューブニ沿った皮膚からの逆行性感染を防ぐためで,ブロビアック・カテーテルなどの長期留置型の中心静脈カテーテルに用いられているものと同じ理論です。ダクロン・フェルトは薄いものを用いてチューブの周りに巻いて皮下に挿入しますが,あまり難しく考えなくても適当でいいです。また本当に効果的かどうかは学問的には検証されていないので,このダクロン・フェルトを巻く操作をしないこともあります。
長い期間の留置ですから,サイフォン管理はしません。 シャントチューブと髄液廃液バッグとの間に,②の位置でアクティバルブを入れると過流出 over drainage による低脳圧(頭痛と吐き気)を避けることができます。患者さんが自由に歩行できると,概して過度の髄液排出になることが多いので,アクティバルブは,高圧 (145-190 mmH2O)か超高圧 (195-240 mmH20)を用います。
このシステムを用いてそのままV-Pシャントにすることができます。しかし,感染予防のために皮膚の導出部から15cmくらい中枢端でチューブを切断して,新たな腹腔端を挿入します。だから上図にあるように,最初からV-Pシャントの通り道となる部分を避けてより外側に皮膚導出部を作ることがコツです。

もちろんこのシステムは感染抵抗性ですが,感染することはあります。感染したら全てのシステムを抜去します。そうしないと感染が長期化して髄液吸収障害の原因になってしまいます。

 

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