平成29年度補助事業成果報告書

平成29年度補助事業成果報告書

事業名: 平成29年度医療研究開発推進事業費補助金(長寿・障害総合研究補助事業)
研究開発課題名: 発達性吃音の最新治療法の開発と実践に基づいたガイドライン作成
研究代表者 : 国立障害者リハビリテーションセンター病院・第三診療部・部長  森浩一
実施期間: 平成29年4月1日 〜 平成30年3月31日

成果の概要(総括研究報告)

 (1) 幼児吃音への早期介入システムの開発

  1. 疫学調査においては、前年度からの継続で平成29年度4月に相模原で調査を実施した。加えて、平成29年4月から平成30年2月の間、徳島で調査を追加し、総計2040名の3歳児のデータを収集した。3歳時点でのデータの約8割の確認作業を終え、1680名の3歳児における吃音の有症率は5.23%となった。ロジスティック回帰分析で3歳時点の吃音の有無と関連する要因について検討を加えた。追跡調査は、福岡、金沢、筑波で3回、相模原で2回実施した(回収率61%~73%)。

  2. 暫定ガイドラインについては、介入の開始時期や介入方法、合併する問題がある場合の対応方法に関するガイドラインの草案を作成し、その臨床的妥当性についてガイドライン班で検討を進めた。

  3. 介入効果研究では、研究分担機関でも介入を開始し、平成29年度末の時点で総計41名の協力者を得た(目標80名)。協力者のうち再評価を終えた者21名をもとに予備的な分析を行った結果、JSTART-DCMとリッカム・プログラムは共に有効であり、効果の大きさに差が無く、先行研究のRESTART-DCMとリッカム・プログラムのRCTによる知見と同様の結果であった。一方、改善が得られた者の特性についての分析から、従来の研究では指摘されていない、子供の行動情緒面の問題の大きさと治療効果の有無との関連を示唆する結果が得られており、協力者を更に増やして確認する必要がある。

(2) 青年期以降の吃音への支援技術の開発

平成29年度に5グループ23名の参加があった。訓練実施後6カ月までのフォローアップが終了したのは3グループ12名であった。現在3グループが引き続きフォローアップ調査中である。訓練期間中および訓練終了後3カ月までは心理態度面に対する質問紙の成績において治療効果が認められたが、6カ月では効果の持続に乏しい者と効果が持続する者に分かれる傾向を認めた。中核症状頻度は訓練前後で全体として多くの課題で有意な改善を認めた。

(3) 自閉症スペクトラム障害, AD/HD, うつ等合併症障害対応

成人吃音患者188人を主な合併症で4群に分け検討した。LSAS-JはASD合併群のみが有意に高得点だった。吃音の「自己評価の重症度」に差はなく「気にしている度合い」はASD合併群が他の群より有意に低かった。