アミノ酸代謝異常症
Point
- アミノ酸代謝異常症では、しばしば毒性をもつ代謝されない物質の蓄積や、産生されない物質の欠乏により、脳、肝臓、腎臓などの臓器障害が引き起こされる。出生早期に急激に発症する病型と、乳児期またはそれ以降に発症する病型とがある。
- 新生児マススクリーニングでフェニルケトン尿症・類縁疾患、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症が発見され、早期に治療が開始される。その他の疾患でも、治療可能な疾患が多いため、確実に診断し治療を開始する必要がある。
- 症状は意識障害、痙攣などの非特異的であるため、それらの症状を示す症例では、先天代謝異常症をつねに念頭におく必要がある。アミノ酸代謝異常症の診断には血液、髄液、尿中アミノ酸分析、尿中有機酸分析が有用である。確定診断には、酵素解析や遺伝子解析を行う。
- 食事療法、毒性物質の生成阻害、別代謝経路の活性化の作用を有する薬剤による治療が行われる。
治療可能な疾患
Phe水酸化酵素欠損症
C:発達遅滞、知的障害、けいれん、小頭症、特異な尿臭、色素欠乏
B:フェニルアラニン↑
S:プテリジン分析、ジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)解析、BH4・1回負荷試験、遺伝子解析
治療:フェニルアラニン制限食。BH4反応性の場合はBH4投与。
BH4欠損症
C:発達遅滞、知的障害、けいれん、小頭症、特異な尿臭、色素欠乏
B:フェニルアラニン↑
S:プテリジン分析、ジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)解析、BH4・1回負荷試験、遺伝子解析
治療:BH4, L-ドパ, 5-ヒドロキシトリプトファン
メープルシロップ尿症
C:甘い尿臭
B:代謝性アシドーシス、ロイシン↑、イソロイシン↑、バリン↑、アラニン↑
U:分枝鎖α-ケト酸↑、分枝鎖-ヒドロキシ酸↑
治療:急性期は自然蛋白質摂取中止、十分なカロリー投与、血液浄化療法。慢性期は、分岐鎖アミノ酸制限食
ホモシスチン尿症(シスタチオニンβ合成酵素欠損症)
C:発達遅滞、高身長、水晶体亜脱臼、眼科的異常
B:メチオニン↑
U:ホモシスチン↑
R:脳血栓塞栓症
治療:メチオニン制限食
非ケトーシス型高グリシン血症
C:新生児の意識障害、呼吸障害、しゃっくり
B:グリシン↑、髄液/血漿グリシン比↑
L:グリシン↑、髄液/血漿グリシン比↑
S:肝グリシン開裂酵素活性測定
治療:未確立。安息香酸ナトリウム、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物が試みられる。
高チロシン血症1型
C:肝障害、腎尿細管障害、末梢神経障害
U:4-ヒドロキシフェニルピルビン酸↑、4-ヒドロキシフェニル乳酸↑、4-ヒドロキシフェニル酢酸↑、スクシニルアセトン↑
治療:フェニルアラニン、チロシン制限食
4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシナーゼ阻害薬のニチシノン(nitisinone: NTBC)。
低リン血症クル病に対してリンやビタミンD
高チロシン血症2型
C:肝臓肥大、角膜のびらん・潰瘍
B:チロシン↑
治療:フェニルアラニン、チロシン制限食
高チロシン血症3型
C:失調、けいれん、軽度の発達遅滞
治療:フェニルアラニン、チロシン制限食
Hartnup病
C:ペラグラ様皮膚炎、眼振(小脳失調)
U:中性アミノ酸
R:頭部MRI:脳委縮、髄鞘化の遅延
治療:ニコチン酸(ニコチン酸アミド散10%)を50-300mg/day投与
脳回転状脈絡膜網膜萎縮症
治療:アルギニン制限食
ビタミンB4反応性では、ピリドキシン塩酸塩投与