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  • 遺伝性白質疾患
  • 先天性大脳白質形成不全症

アレキサンダー病診断基準

I.疾患概念および臨床病型

A. 疾患概念

新生児から成人まで幅広い年齢にみられる進行性の中枢神経白質疾患であり、病理学的に大脳白質,上衣下および軟膜下のアストロサイトにローゼンタル線維を認めることが特徴である.大多数の症例でglial fibrillary acidic protein (GFAP)遺伝子変異を認める.

B. 臨床病型

  1. 大脳優位型(1型):神経学的所見として、けいれん、大頭症、精神運動発達遅滞を認め、頭部MRIにて前頭部優位の大脳白質病変を認めることが特徴である.主に乳幼児期発症で、機能予後不良の重症例が多い.新生児期発症例では水頭症や頭蓋内圧亢進症状をきたし、生命予後不良である.
  2. 延髄・脊髄優位型(2型):神経学的所見として、筋力低下、痙性麻痺、球/仮性球麻痺、運動失調、自律神経障害などを種々の組み合わせで認め、MRIにて延髄・上位頚髄の信号異常あるいは萎縮を認めることが特徴である.学童期から成人期以降の発症で、他の病型と比較して緩徐な経過をとることが多い.
  3. 中間型(3型):1型および2型の両者の特徴を有する.発症時期は幼児期から成人期まで幅広い.

II. 診断基準

A. 神経症状

  1. けいれん
  2. 大頭症
  3. 精神運動発達遅滞
  4. 四肢運動障害:筋力低下、痙性麻痺、小脳性運動失調、筋強剛
  5. 球麻痺あるいは仮性球麻痺:嚥下障害、構音障害、発声障害
  6. 自律神経障害:起立性低血圧、膀胱直腸障害、睡眠時無呼吸
  7. 口蓋ミオクローヌス
  8. 反復性嘔吐

B. MRI所見

  1. 前頭部優位の大脳白質信号異常
  2. 脳室周囲の縁取り;T2強調画像で低信号、T1強調画像で高信号を示す
  3. 基底核と視床の異常;T2強調画像で高信号を伴う腫脹または高・低信号を伴う萎縮
  4. 造影効果;脳室周囲、前頭葉白質、視交叉、脳弓、基底核、視床、小脳歯状核、脳幹など
  5. 脳幹の異常・萎縮
    1) 中脳の信号異常
    2) 延髄・上位頚髄の異常.
    a) 橋底部が保たれ、延髄および上位頚髄が萎縮する像
    b) T2強調画像における延髄錐体や頸髄の信号異常
    c) 萎縮を伴わない結節性腫瘤像
  6. 小脳歯状核門の信号異常あるいは萎縮

C. 遺伝子検査および病理学的検査

  1. 遺伝子検査:GFAP遺伝子変異を同定
  2. 病理学的検査:大脳白質,上衣下および軟膜下のアストロサイト細胞質内に特徴的なローゼンタル線維を認める

D. 鑑別診断

 Pelizaeus-Merzbacher病をはじめとする先天性大脳白質形成不全症,megalencephalic leukoencephalopathy with subcortical cysts, 副腎白質ジストロフィー, 異染性白質ジストロフィー, メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー, Krabbe病, Vanishing white matter disease, Canavan病, 脳腱黄色腫, 多発性硬化症, neuromyelitis optica, 急性散在性脳脊髄炎, 進行性多巣性白質脳症, 脳腫瘍, 脳血管障害, CADASIL, CARASIL, ミトコンドリア脳筋症, 遺伝性痙性対麻痺, HTLV-I関連脊髄症, ALSなど大脳白質や延髄・脊髄に病変の主座を認める疾患

III. 確定診断:

Definite: ①A.の1.~3.の1項目以上、およびB.の1.~5.のうち1.を含む1つ以上の所見を認める
  ②A.の4.~8.の1項目以上、およびB.の5.の2).に挙げる項目の1つ以上の所見を認める

上記の①あるいは②を満たし、C.の1.あるいは2.を認めた場合

Probable: ①A.の1.~3.の1項目以上、およびB.の1.~5.のうち4つ以上の所見を認める
  ②A.の4.~8.の1項目以上、およびB.の5.の2).に挙げる項目の1つ以上および6.の所見を認める

上記の①あるいは②を満たし、D.の鑑別診断を除外できた場合

参考:画像所見

遺伝子検査について

GFAP遺伝子検査は以下の施設で承っております。

 (京都府立医科大学神経内科 吉田誠克)