日本における膵臓移植の適応基準は、移植関係学会合同委員会と膵臓移植特別委員会にて定められています。膵臓移植は膵腎同時移植、腎移植後膵臓移植、膵臓単独移植の3つに分類されます。いずれの方法もインスリン分泌がほとんどない糖尿病患者が対象となりますが、術式によって適応が少し異なります。腎不全がある方(またはすでに腎臓移植を受けている方)は、膵腎同時移植(または腎移植後膵移植)の適応となります。腎不全がない場合、膵島移植と同様に、糖尿病学会専門医等のエキスパートによる治療によっても血糖のコントロールが困難である方は、膵臓単独移植の適応となります。
膵臓移植を希望される場合は、移植希望施設を受診していただき、適応基準を満たしているか評価を受けなければいけません。以下が膵臓移植の適応基準の概要です。受診後の流れは、移植申請から登録までの流れを参照して下さい。
膵臓移植の対象は、膵腎同時移植・腎移植後膵臓移植の対象は以下の①、膵臓単独移植の対象は以下の②に該当する者であり、かつ、該当者が居住する地域の適応検討委員会において長期間にわたる臨床データおよび臨床検査をもとに、適応ありと判定されたものとする。なお、レシピエントの評価をする際には、心血管機能と腎機能、および動脈硬化性変化(特に移植部位である腸骨動脈領域)の範囲に十分配慮する必要がある。
年齢は原則として60才以下が望ましい。
脳死下、心停止下の膵臓提供者が現れた場合、日本臓器移植ネットワークに登録されている膵臓移植希望者から移植を受ける人(レシピエント)が選択されます。日本における膵臓移植の選択基準は、公衆衛生審議会成人病難病対策部と臓器移植専門委員会にて定められています。適合条件をみたす膵または膵腎同時移植希望登録者の中から、以下の優先順位に従ってレシピエントが選択されます。
より短いことが見込まれるものを優先
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HLAとは、Human Leukocyte Antigen(ヒト白血球型)の略で、白血球の表面にある自己と非自己を認識するシステムを構成する膜抗原です。Class Ⅰ(A、B、各2つ)と、Class Ⅱ(DR2つ)があります。
HLAは白血球の型で、両親から遺伝的に受け継いでいます。数多くのタイプがありますが、特に移植に関与するのはHLA-A(27種類)、HLA-B(57種類)、HLA-DR(21種類)で、一人の人がそれぞれについて2つずつ、合計6種類のタイプを持っています。
たとえば、両親がHLAのA・B・DRのひとつずつを1組として合計で2組のHLAを持っていると、その子供は父親の1組と母親の1組を受け継ぐため4通りの組み合わせができます。つまり、兄弟姉妹の場合、HLAのA、B各1つずつとDRの1つの合う確率が50%、すべて合う確率が25%、まったく合わない確率が25%あります。これが他人になると1万人に1人、日本人では50人から千人に1人しかいないといわれています