手術紹介
くも膜下出血
くも膜下出血とは
脳の表面は外側から硬膜、くも膜、軟膜で覆われており、このくも膜と軟膜の間に出血を起こすのがくも膜下出血です。原因は脳動脈の一部がふくらんでできた動脈瘤の破裂が多く、このほかに脳動静脈奇形、腫瘍、外傷などによるものもあります。出血の原因が不明のものも1割程存在します。40歳以降で女性に多いとされており、年齢とともに増加する傾向にあります。家系内に動脈瘤やくも膜下出血の方がいるときは発生頻度が高く、高血圧、喫煙、過度の飲酒は動脈瘤破裂の危険性が高くなるという報告もあります。症状としては突発する頭痛、嘔吐、意識障害などが多く、時に物が二重に見えることで発症することもあります。発症すると死亡率が高く、救命できても後遺症を残すこともある大変危険な病気です。
診断
CT・MRIが有用です。診断に続いて出血源確認のため、脳血管撮影、3D-CTA、MRAなどが行われます。出血源が確認できれば、再出血予防のため、出血源に対する治療が行われます。治療は開頭でのクリッピング術、血管内治療などがあります。
治療
原因として一番多い動脈瘤についてですが、破裂した脳動脈瘤は再出血予防の処置をしないと再出血の危険性は非常に高いことが知られています。そのための処置が必要となりますが、強い昏睡状態や、全身状態の悪いときには残念ながら治療のできない場合もあります。処置には主に開頭クリッピング術とコイル塞栓術があります。
@ 脳動脈瘤クリッピング術
全身麻酔をかけた後、開頭を行い、顕微鏡を用いて脳の隙間を分け入り動脈瘤に到達します。続いて破裂した動脈瘤の根元にクリップをかけ、血液が入り込まないようにします。当院ではクリップの確認、周囲血管の血流確認のため、術中にICG(インドシアニングリーン)いう薬剤を使って蛍光造影も行っています。
〈術前画像〉CT |
血管撮影 |
3D血管撮影 |
〈術中所見〉
クリップ前 |
クリップ後 |
術中蛍光造影 |
A コイル塞栓術
大腿部の血管から治療用の細い管(カテーテル)利用して動脈瘤の中まで到達します。動脈瘤の内部に細く柔らかいプラチナ製のコイルを充填していき、動脈瘤を内側から詰める治療です。
術前CT |
塞栓術前CT |
塞栓術後CT |
当院での治療の特徴
当院は高度救急救命センターを有しており、24時間体制での受け入れを行っており、診断・治療ともに迅速な対応が行えます。2011年には約80名のくも膜下出血の患者様が搬送されています。出血源の治療に関しては開頭クリッピング術、バイパス術、血管内治療などがありますが、症例に応じた複合治療も行っており、当院では特定の治療のみに偏ることなく、専門医による検討を行って患者様の状況に応じた最適治療を行います。出血源の処置後は救急救命センターでの集中管理を行います。救急救命センターでは術後管理に加え、早期リハビリテーションも導入しており、医師のみならず看護師、リハビリ療法士、ケースワーカーとも協力し、多職種の連携したチーム医療を行っているため、ご安心して治療を受けていただけることと思います。