論文リリース:Relative deprivation in income and mortality by leading causes among older Japanese men and women: AGES cohort study

本日、論文がリリースされました。オープンアクセスです。
J Epidemiol Community Health 2015;69:680-685 doi:10.1136/jech-2014-205103

Socioeconomic factors and health
Relative deprivation in income and mortality by leading causes among older Japanese men and women: AGES cohort study

Open Access

Naoki Kondo1, Masashige Saito2, Hiroyuki Hikichi3, Jun Aida4, Toshiyuki Ojima5, Katsunori Kondo2, 3, Ichiro Kawachi6

http://jech.bmj.com/content/69/7/680.full

書籍刊行「社会と健康: 健康格差解消に向けた統合科学的アプローチ」

書籍「社会と健康: 健康格差解消に向けた統合科学的アプローチ」を刊行しました。医学、公衆衛生学、看護学、福祉社会学、医療社会学、医療経済学など、いのちにかかわる分野の学習や研究を始める人に読んでほしい一冊です。東京大学大学院公共健康医学専攻(School of Public Health)の講義「社会と健康I」のテキストに指定されています。

http://www.amazon.co.jp/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%81%A8%E5%81%A5%E5%BA%B7-%E5%81%A5%E5%BA%B7%E6%A0%BC%E5%B7%AE%E8%A7%A3%E6%B6%88%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%9F%E7%B5%B1%E5%90%88%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%9A%84%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81-%E5%B7%9D%E4%B8%8A-%E6%86%B2%E4%BA%BA/dp/4130604112

健康格差のメカニズムを探る教科書の決定版

社会的な健康格差は、人間社会の大きな課題である。本書は、この課題に対して社会科学と健康科学の研究者が協力し、さまざまな視点からの分析を試みる。日本のデータやエビデンスを紹介し、社会政策に応用していく際のポイントにもふれる、新たな健康格差研究のテキスト。
★イチロー・カワチ氏(ハーバード大学公衆衛生大学院・教授)推薦
トップクラスの学際研究チームによる5年間のプロジェクトの到達点であり、社会階層と健康に関する最新の知見を網羅した教科書の決定版。医学や公衆衛生学の研究に携わる者だけでなく。社会科学領域の研究者および学生、行政や自治体の政策担当者、そして日本社会における健康格差に関心を持つ全ての人に読んでいただきたい。

【主要目次】
まえがき
序章 社会階層と健康への学際的アプローチ(川上憲人・橋本英樹)
第I部 階層と健康
第1章 社会階層と健康(橋本英樹・盛山和夫)
第2章 職業と健康(堤 明純・神林博史)
第3章 ワーク・ライフ・バランスと労働(大石亜希子・島津明人)
第4章 幼少期の環境と健康(藤原武男・小塩隆士)
第5章 ジェンダーと健康(本庄かおり・神林博史)
第II部 健康格差のメカニズム
第6章 貧困・社会的排除・所得格差(近藤尚己・阿部 彩)
第7章 社会的ストレスと脳神経機能(大平英樹・笠井清登・西村幸香)
第8章 生活習慣の社会格差と健康(福田吉治・宮木幸一)
第9章 都市環境と健康(井上 茂・中谷友樹)
第III部 社会連帯の形成
第10章 社会保障制度(小林廉毅)
第11章 社会関係と健康(杉澤秀博・近藤尚己)
第12章 健康の公平性と倫理(浦川邦夫・児玉 聡)
第13章 国際的な政策対応や取り組み(狩野恵美・藤野善久)

「社会階層と健康 健康格差のエビデンスによる政策提言」が公開

昨年度まで6年間実施してきた、社会階層と健康に関する研究班の「政策提言ワーキンググループ」より、
「社会階層と健康 健康格差のエビデンスによる政策提言」が公開されました。

日本の健康格差の現状に関する豊富なデータを基に、今、社会は何をすべきか、同対策すべきかについて提言したものです。

図もきれいでわかりやすいです。広くご活用いただければとおもいます。

http://mental.m.u-tokyo.ac.jp/sdh/pdf/policyrecommendation.pdf

オモシロ真面目な健康情報サイト「ヘルスナッジ」リリース

おもしろ健康情報を専門家のコメント付きで読めるキュレーションサイト「ヘルスナッジ」がリリースされました。

巷にあふれている有用な情報・怪しげな情報を、医療・医学分野のデータを「見る目」が確かな専門家がチョイスして、コメント付きで紹介します。

アドバイザーとして、コンセプト作りからスタートアップメンバー選定まで、楽しくかかわらせていただいています。

まずはちょいとのぞいていただければと思います!アプリをダウンロードすると便利です。

コメント等いただけると嬉しいです。さらなるカイゼン・パワーアップをしていきたいです。

<ウェブサイト>「HEALTH NUDGE」 http://healthnudge.jp/

<アプリのダウンロード>
App Store  https://itunes.apple.com/jp/app/health-nudge-jian-kang-ji/id965600619?l=ja

Google Play  https://play.google.com/store/apps/details?id=vn.bsv.app.android.hlc

以下、サービス提供会社からのプレスリリースをコピペします。

—–
健康・医療の最新ニュース記事を専門家が解説!
健康キュレーションアプリ「HEALTH NUDGE」5月1日リリース
~より良い健康情報の選択をそっと後押し(ナッジ)~

株式会社リンクアンドコミュニケーション(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:渡辺 敏成、以下 リンクアンドコミュニケーション)は、健康・医療の最新ニュース記事を専門家が解説する健康キュレーションアプリ「HEALTH NUDGE(ヘルスナッジ)」を本日5月12日リリースいたしました。

「HEALTH NUDGE」
http://healthnudge.jp/

<ダウンロード>
App Store
https://itunes.apple.com/jp/app/health-nudge-jian-kang-ji/id965600619?l=ja

Google Play
https://play.google.com/store/apps/details?id=vn.bsv.app.android.hlc

■「HEALTH NUDGE」の概要
「HEALTH NUDGE」は、より良い健康情報の選択に向けて、そっと後押し(ナッジ)することを目的とした健康情報のキュレーションアプリです。「HEALTH NUDGE」が目指すのは、人々が正しく健康情報を選択し、みんなが健康になる世界です。

「HEALTH NUDGE」では、話題の健康・医療分野のニュース記事を専門家がピックアップし、「どう読み解いたらいいか?」を解説・コメントしていきます。
解説する専門家は、医師、看護師・保健師、薬剤師、管理栄養士などで、その多くが医学博士や公衆衛生学修士の学位を有する健康・医療情報のエキスパートです。

「HEALTH NUDGE」を通じて、健康情報をテーマにした一般の方と専門家の新しい情報交換の場/プラットフォームを提供していきたいと考えています。

対応OS  : iOS/Androidに対応
WEBサイト: http://healthnudge.jp/

※「Nudge(ナッジ)」とは、「そっと後押しする」「ヒジで軽く突く」という意味の英語です。行動経済学の分野では「科学的分析に基づき、人間に『正しい行動』をとらせようとする戦略」として知られています。

■「HEALTH NUDGE」の特長
(1)話題の健康・医療記事をまとめて閲覧可能
既存メディアが配信する健康・医療記事から、話題の記事を以下の9つのカテゴリーに分けてピックアップします。
「病気・医療」「健康・予防」「食事」「スポーツ」「睡眠」「メンタル」「リフレッシュ」「ダイエット」「出産・育児」
(2)全ての記事を、医師や看護師・保健師、薬剤師、管理栄養士などの専門家が解説
すべての記事を健康・医療の専門家が解説しているため、健康記事を正しく読み解くことができます。
解説する専門家は、医師、看護師・保健師、薬剤師、管理栄養士で、その多くが医学博士や公衆衛生学修士の学位を有する健康・医療情報のエキスパートです。
(3)記事に対するユーザーの意見を閲覧可能
記事に対する「いいね!」」やコメントなど、ユーザーの意見を閲覧することができるため、さらに理解を深めることができます。
(4)お気に入りのカテゴリーや専門家をフォロー可能
お気に入りの専門家やカテゴリーをフォローすることができるため、自分の興味・関心に合わせて効率的に情報を収集することができます。

■「HEALTH NUDGE」開発の背景
健康・医療への関心が高まるなか、ニュースメディアからブログに至るまで健康・医療の情報源が乱立・氾濫し、自分に適した正しい情報を選択することはとても難しくなってきています。
そしてそのような環境下では、健康・医療情報に関して公平な視点から解説し、情報の意味づけをする専門家の存在が特に必要であると考えます。
しかし、一般の方々が、健康・医療の専門家と関わる機会は意外に少なく、とくに予防・健康増進段階では皆無であるのが実情です。

そこで私たちは、専門家の方々が一般の方々に対して、よりよき健康情報の選択判断を促し、そっと健康を後押しするメディア/プラットフォームが必要であると考え、「HEALTH NUDGE」を開発いたしました。

<「HEALTH NUDGE」の運営体制>
「HEALTH NUDGE」は、健康、医療、医療経済、栄養、運動、睡眠などの専門家の協力のもとに運営しています。

・プロジェクトアドバイザー 近藤 尚己
(プロフィール)
山梨医科大学医学部医学科卒業。東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻保健社会行動学分野 准教授。医師・医学博士。
山梨大学大学院医学工学総合研究部 社会医学講座、ハーバード大学 公衆衛生大学院 健康社会研究センター(Center for Society and Health)を経て現職。

・編集部
株式会社リンクアンドコミュニケーション

●株式会社リンクアンドコミュニケーション
食と健康のサポート企業として、管理栄養士の独自のネットワークをもとに、食事指導プログラムの提供、食と健康に関するインターネットメディアの開発・運営を行っています。

社名 : 株式会社リンクアンドコミュニケーション
代表者: 代表取締役社長 渡辺 敏成
所在地: 〒162-0825 東京都新宿区神楽坂3-2 神楽坂Kビル4F
URL  : http://www.linkncom.co.jp

≪本件に関するお問い合わせ先≫
株式会社リンクアンドコミュニケーション
担当  : 渡辺 知雅子
TEL   : 03-3267-1511
E-MAIL : info-health-nudge@linkncom.co.jp

「健康格差対策の7原則」リリースのお知らせ!

公益財団法人 医療科学研究所の自主研究活動の一環として、

健康の社会的決定要因に関する国内外の調査研究動向「健康格差対策の7原則 第1版(2015年)」をリリースしました。

中央政府から地方自治体まで、様々なレベルで健康格差対策を進める際の「考え方」をわかりやすく解説してあります。ご活用ください。

以下からダウンロードできます。
http://www.iken.org/project/sdh/project2014.html

「地域連携に役立つツール」のご紹介

健康な地域環境づくりには、様々な部署や組織との連携が不可欠です。

連携のための会議の際のコミュニケーションを円滑に行うための「テクニック」を集めたリーフレットを作成しました。

下記ページより無料でダウンロードできます。ぜひご活用ください。

日本老年学的評価研究ウェブサイト内: http://www.jages.net/#!about-3/c1qza

高アクセス! パートナーが禁煙すると自分もやめる?男女で違う禁煙行動の傾向

昨年12月に出版した以下の論文のアクセス数が500超と高くなっています。

東京近郊の自治体の若い夫婦へのインタビュー調査のデータをもとに、パートナーが禁煙すると、自分も禁煙するか否かを分析した結果、男性では、女性のパートナーが禁煙すると自分も禁煙する確率がぐっと高まるのですが、そのような関係は女性の場合、2人とも高学歴の場合のみ当てはまることがわかりました。

学歴は、健康リテラシー(健康に関する周囲からの情報等を的確に選び取って、解釈し、活用する力)を反映します。夫婦で禁煙を進めるような禁煙指導が、病院などではよく行われます。そういうとき、学歴などの情報も役立つかもしれません。

論文ウェブサイト:http://www.biomedcentral.com/1471-2458/14/1184

Differences in spousal influence on smoking cessation by gender and education among Japanese couples

Daisuke Takagi, Naoki Kondo, Misato Takada and Hideki Hashimoto

BMC Public Health 2014, 14:1184 doi:10.1186/1471-2458-14-1184

Abstract
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Background
Previous studies have reported that spousal non-smoking has a spillover effect on the partner’s cessation. However, discussion is lacking on the factors modifying that association. We examined whether the spillover effect of spousal non-smoking was associated with the couple’s educational attainment.

Methods
We used paired marital data from the Japanese Study on Stratification, Health, Income, and Neighborhood (J-SHINE), which targeted residents aged 25–50 years in four Japanese municipalities. We selected a spouse smoker at the time of marriage (target respondent), and set his/her smoking status change (continued or quit smoking after marriage) as an outcome, regressed on the counterpart’s smoking status (continued smoking or non-smoking) and combinations of each couple’s educational attainment as explanatory variables using log-binomial regression models (n =1001 targets; 708 men and 293 women).

Results
Regression results showed that a counterpart who previously quit smoking or was a never-smoker was associated with the target male spouse’s subsequent cessation. However, for women, the association between husband’s non-smoking and their own cessation was significant only for couples in which both spouses were highly educated.

Conclusions
Our findings suggest that a spouse’s smoking status is important for smoking cessation interventions in men. For women, however, a couple’s combined educational attainment may matter in the interventions.

陸前高田市健康生活調査のまとめをしました。

3月13日金曜日に、陸前高田市役所で開催された「第52回陸前高田市保健医療福祉未来図会議」にて、調査の実施と分析のお手伝いをしていた陸前高田市健康生活調査の分析結果を報告しました。

被災後の居住地区別に、被災前後の病気の状況の変化を観察したところ、被害が特に大きかった高田町で、心疾患、高血圧症、糖尿病、精神疾患のすべてで、被災直後に比べ、1~2年後の有病率が有意に増加していました。興味深いことに、同じ程度の被災の程度であった気仙町では、このような疾病の増加は見られませんでした。地域の結束が強く、仮設住宅にも同じ集落同士で一緒に入居したといった気仙町の特徴が、被害による健康リスクを緩和しているのかもしれない、という意見が出ました。

また、買い物環境(小売店・移動販売の立ち寄り所・買い物バスの停留所)までの道路上の距離が長いほど、高齢者では閉じこもり(ほとんど外出しない状態)が増えることがわかりました。

仮設住宅の住民に対して、農園作業を通じて住民同士のつながりを増やし、健康維持を狙いとした「はまらっせん農園」の参加者とそうでない人とを比べたところ、参加者は参加していない人に比べて半年後の骨密度が相対的に上昇していること、また、生きがい感なども上昇していることがわかりました。

調査票や調査のデザインからかかわらせていただき、昨年秋~冬に実施した第4回健康生活調査では、自身で費用を負担して自宅を再建した人々と小規模な仮設住宅に住んでいる人々に聞き取り調査をしました。集まったデータを分析したところ、自力で再建した方々は小規模な仮設住宅に住んでいる方方よりも、総じて精神的・身体的な健康状態がよいことがわかりました。一方で、自力で自宅を再建した人々のほうが平均すると近所づきあいを多くしている一方で、自宅に閉じこもっている人たちも5%程度と、小規模な仮設住宅居住者よりも多く、自力で自宅を再建した方々の場合、地域との交流状況が二極化している可能性が示されました。

このように、仮設住宅などでの避難生活が長期化している東日本大震災では、避難生活をしている人も、再建して自宅で生活している人にも、社会的な交流やそのための(交通などの)移動手段の整備が重要であることがデータ上も示されました。

発表スライドはこちらからダウンロードできます:
(未来図会議ウェブサイト)http://healthpromotion.a.la9.jp/saigai/rikuzentakata.html

所得格差は循環器疾患の死亡リスクを特に上げる可能性:論文出版

所得格差が拡大すると、自身の所得水準は変わらなくても、より高所得な人との所得の差が拡大します。それに応じて、みじめさやねたみ、あきらめといった負の感情を持つ機会も増えます。

高齢者3.3万人を長期間追跡している愛知老年学的評価研究(AGES、JAGES研究の一部)のデータを分析したところ、グループ内のうち、自分よりお金持ちの人と自分の所得との差の平均値が大きい(グループ内の相対的はく奪度)人ほど、自分の所得水準にかかわらず、その後循環器疾患(心臓病や脳卒中)で死亡するリスクが高まることがわかりました。

一方、がんや呼吸器疾患など、その他の原因による死亡とは統計的に有意な関連がみられませんでした。さらに、このような関係は男性でのみ観察されました。

以前より、所得格差が大きな社会では誰もが(富裕層ですら)不健康になる可能性が知られていますが、本研究結果は、その理由として、格差が大きな社会では周囲との生活水準の違いが強いストレスとなって、ストレスによって影響を受けやすい心臓や脳血管の病気による死亡のリスクを上げる、というメカニズムが関連している可能性を示唆するものです。

この結果は、英国の専門誌Journal of Epidemiology and Community Healthから出版されました:

Naoki Kondo, Masashige Saito, Hiroyuki Hikichi, Jun Aida, Toshiyuki Ojima, Katsunori Kondo, Ichiro Kawachi. Relative deprivation in income and mortality by leading causes AMONG older Japanese men and women: AGES cohort study. Journal of Epidemiology and Community Health. doi:10.1136/jech-2014-205103   Open Access.

論文はここから無料でダウンロードできます。
http://jech.bmj.com/content/early/2015/02/19/jech-2014-205103.full