家族とのコミュニケーション
子どもとのコミュニケーション
更新・確認日:2022年3月30日
がんと診断され治療がはじまると患者だけでなくその家族の生活も変化します。子育て中の人にとっては、子どもの世話をどうするか、病気のことを子どもに伝えた方が良いのか、伝えるときはどのように伝えればよいのか、大きな悩みとなります。全てを伝えなくて良いこともあるし、何をどのように伝えるかは人それぞれ異なります。
心配させたくないから子どもには知らせないという選択肢もあります。しかし、子どもはいつもと違うことが起こっていることを敏感に感じとります。知らされないことでもっと悪いことを想像してひとりで不安を募らせてしまうこともあるでしょう。子どもが安心できるようにすることが大切です。
子どもに伝えること ~3つのC~
アメリカのM.D.アンダーソンがんセンターでは、親ががんであることを子どもに隠さずに話そうというKNITプログラム(Kids Need Information Too)が進められています。このプログラムでは、がんになった親を持つ子どもへの支援において、「誰のせいでもない事(not Caused)」、「がん(Cancer)という病気であること」、「伝染しないこと(not Catchy)」の3つのCを伝えることが重要であるとしています。
子どもの年齢・発達に合わせて伝えるために
これら3つのCを、子どもの年齢に合わせてどのように伝えるか、子どもの発達をよく理解している小児科医や小児看護専門看護師、心理士(がん情報サービスへリンク)、子どもを支援する専門職(※1)などが身近にいれば一緒に考え、サポートすることが可能です。主治医や看護師、またはがん相談支援センター(がん情報サービスへリンク)に相談し、専門家を紹介してもらえるか聞いてみるとよいでしょう。また、親ががんになった子ども、患者、家族のサポートを行う団体があり、ウェブサイトやリーフレットによって様々な情報を発信しています。
(※1)子どもを支援する専門職:病院で活動する職種として、チャイルド・ライフ・スペシャリスト、ホスピタルプレイスペシャリスト、病棟保育士、子ども療養支援士があります。国内の医療施設では、まだ少ないのが現状です。
子どもが安心して過ごせるように心がけること
入院や通院、体調の変化でこれまでと同じような生活ができないこともあると思います。子どもが安心して過ごせるようにするためには、子どもが見通しを持てるように、「親がいつ家にいるか」、「いついないのか」、「いないときは誰が世話をしてくれるのか」を伝えておくと良いでしょう。
また、一緒に過ごす時間が短いことで自分に対する愛情が減ってしまったのではないかと心配になることもあるため、子どもを大切に思っていることはこれまでと変わっていないと言葉で伝えることが重要です。
子どもがつらそうな時には
子どもが寂しい思いをしてイライラしたり、落ち着かない様子が増えたり、不安定になったりすることがあるかもしれません。しかし、子どもは周囲の支えによって困難を乗り越える力も持っています。周囲の大人が協力して、支えとなれるよう、祖父母、友達、学校の教職員などの協力を得ることも重要です。
子どもを持つ人ががんと診断された時、病気のことを子どもに伝えた方がよいのか、伝えない方がよいのか、伝えたいけれどどうやって伝えればよいかなど、いろいろな気がかりが生じることでしょう。ここでは、二人の子どもを持つAさん(30代女性)が、パートナーと協力して子どもに病気のことを伝えた時のエピソードを紹介します。
Aさんは8歳の女の子、5歳の男の子、パートナーとの4人家族です。職場の検診で乳がんが見つかり、薬物療法、手術、放射線療法を行うことになりました。外来受診の時、看護師に「子どもに病気のことや入院しなければならないことをどうやって伝えればいいでしょう。上の子はショックを受けるかもしれないし、下の子はまだわからないから伝えない方がよいでしょうか」と聞きました。その看護師からは、「お母様が急に入院となったら、お子さんもびっくりされるでしょうね。どうやって伝えるとよいか一緒に考えましょう」と言われ、子どもたちへの病気の伝え方について相談しました。また、誰でも無料で利用できるがん診療連携拠点病院のがん相談支援センターにはソーシャルワーカーなどの相談員がいることや、子どもを持つがん患者の支援を行う団体があることなどの話を聞いて帰宅しました。
その日の夜、看護師と話した内容をもとにパートナーと話し合い、家族が揃う週末に子どもたちに伝えることにしました。週末の午後、パートナーから子どもたちに、「ママのお胸に悪いものができて、これから病気を治すために病院にお泊りすることになったんだよ。家にいる時も疲れやすいことがあるかもしれないから、みんなで協力して頑張ろうね。おうちのことはおばあちゃんが手伝ってくれるから大丈夫だよ」と伝えると、子どもたちは不安そうな表情を見せました。Aさんからは「ちゃんと病気を治すから、時々お手伝いしてね。ママが病気になったのはあなたたちのせいではないよ。二人ともいつも通り学校に行ったり、遊んだり、やりたいことしていいからね。心配なことや困ったことがあったらいつでも教えてね」と話しをしました。子どもたちは、「お手伝いできるから大丈夫だよ。ママ早く元気になってね」と話してくれました。
入院中、Aさんは子どもたちからの励ましの手紙や絵を飾り、「家族で何でも話せるようになりました。子どもに伝えてよかったです」と話し、治療を進めることができました。