家族とのコミュニケーション
親・きょうだいとのコミュニケーション
更新・確認日:2022年3月30日
病気になる前は日常生活での出来事について、家族(親やきょうだいなど)によく話していましたか。病気になってからは、家族に、自分の気持ちや困っていることを話す機会はありましたか。もし、家族とのコミュニケーションが以前と変わってしまった、相談したいことがあるのになかなかできないと感じているのなら、勇気を出してその気持ちを伝えてみましょう。家族なので黙っていても分かり合えると思うかもしれませんが、実際は言葉にしないと伝わらないことがあります。
親とのコミュニケーション
今まで病気のことやそれ以外の様々なことで心配をかけてきたから、親に自身の気持ちや困りごとを話すと、余計にまた心配をかけてしまうと思ったり、不安な気持ちになったりするかもしれません。しかし、家族であっても伝えなければ、分かり合えないことがあります。あなたの率直な気持ちを伝えることで、親はあなたが感じていること、考えていることについて理解を深めることができます。
誰に相談するのかは、相談の内容や病気になる前の、あなたと親との関係によると思います。あなたが今まで大切なことを相談していたのは、父親、母親、あるいは両方でしょうか。話した後に気持ちが落ち着いたか、一緒に考えてくれたか、問題が解決したか、などを振り返ってみましょう。今回もきっとあなたの力になってくれるでしょう。
親があなたのことを心配するあまり、時にはあなた自身で決められることに対して、親の考えや希望を言ってくるかもしれません。それが、あなたの考えや希望と違っていることもあるでしょう。お互いに納得できるようにじっくりと話し合うことはもちろん大事ですが、自分の考えや希望を優先させることも大切なことです。
きょうだいとのコミュニケーション
あなたにきょうだいがいる場合、そのきょうだいはあなたの病気について知っていますか。もし、あなたにきょうだいがいて、まだ年齢が若ければ、病気のことを伝えたくなかったり、あまり詳しくは伝えたくないと思うかもしれません。しかし、たとえ幼くても家庭内の変化は伝わるものです。当ウェブサイトの「子どもとのコミュニケーション」 を参考にして、伝え方を考えてみるとよいでしょう。どのように伝えたいのか自分の考えを家族や医療者で共有しておきましょう。
幼いきょうだいは面会のため病棟に入れない場合もあります。あらかじめ、病棟の看護師に面会に関する決まり事を確認しておくとよいでしょう。
あなたに成人したきょうだいがいれば、あなたの日常生活のサポーターとなってくれるかもしれません。体調がよくない時、身の周りの世話(買い物や洗濯など)をしてもらえるかもしれませんし、あなたに子どもがいる場合には子どもの相手や世話をしてもらえるかもしれません。近くに住んでいない場合でも、電話やSNSで話をすることで、心強く感じることができるでしょう。
ドナーになったきょうだいの気持ち
これまで造血幹細胞移植(以下、移植)のドナーになったきょうだいの気持ちについて尋ねる機会がなかった人もいるでしょう。また、きょうだいの気持ちが気がかりだった人もいるかもしれません。
きょうだいがドナーになるまでに、どのような説明を受け、どのように意思決定をしたのかは、それぞれの状況によって異なります。あなたの病気や移植の必要性について十分に理解できていない状況でドナーになった場合があるかもしれません。そして,あなたの病状や治療が優先されざるを得ない状況であったため、ドナーであるきょうだいが十分に思いをあなたと共有できなかったり、不安な気持ちを抱えていたりしたかもしれません。ドナーになったきょうだいの気持ちもそれぞれでしょう。
また、きょうだいの気持ちは、ドナーになる前から移植後の間でも変化します。例えば、きょうだいがドナーになる前には、治療の効果への期待を抱く反面、治療の結果に対する責任感や不安など、様々な気持ちになることでしょう。ドナー適格性の検査(HLA)時には、「一致していなかったら」と不安に感じる人、ドナー候補となった時に、「自分しか助けられない」と責任を感じる人、きょうだいを助けたい気持ちがあっても造血幹細胞の採取が怖くてできれば避けたいなどと思う自分を責める人がいます。一方で、ドナーになったきょうだいの中には移植後に安堵や誇りを感じ、生きることの意味や目的意識を高める人もいます。また、家族がお互いの気持ちを確かめ合う機会になり、結びつきが強くなったと感じる人もいます。
移植を終えてから時間が経っていてもあなたがドナーになったきょうだいに対して「あの時はどうだったんだろうか」と思っていることを伝えることは、きょうだいにとって意味のある体験になるかもしれません。例えば,ドナー候補となった時はどのような気持ちであったか、これまでどのような気持ちで過ごしてきたのか、感謝の気持ちを込めて聞くこともよい手立てになるかもしれません。
ただし、きょうだい関係は様々で、無理に仲良くするものでも、好きでなければならないということでもありません。他にもきょうだいにとって大切な人や、同じドナー経験者、医療者などが力になる場合もあります。あなたのきょうだいを思うあたたかい気持ちが届いていくことを願っています。
参考文献
- 日本小児血液・がん学会(ウェブサイト), 健常小児ドナーからの造血幹細胞採取に関する倫理指針(閲覧日2021年12月8日)